医院開業コラム
今回から2回に分けて「求人とブランディング」をお伝えしていきます。
皆様、これからブランディングを取り入れていきたいとき、どこから始めればよいのか迷うかもしれません。医療機関の中で早急に解決したい課題が明確に決まっている場合は、その課題に対してブランディングを活用するのが定石ですが、課題が複数ある場合には、まずは採用を目標にブランディングを始めることをおすすめしています。
なぜ採用から始めると良いのでしょうか?
理由の1つ目ですが、現在の採用にかかっているコストをブランディングに充てられるためです。ブランディングすることで今まで無駄にかかっていたコストが削減できたのか、効率よく採用ができるようになったのか結果が見えやすいため、経営陣にも理解を得られやすいからです。求人で結果が出れば、更にそこにコストを掛けられ、好循環が生まれる可能性が高いと言えます。
2つ目に、Webサイト制作会社等、採用に関わる会社がその医療機関の全体像をつかみやすいからです。採用のブランディングを行うには、取材をするのが最も良いと考えておりますが、様々な人に取材することで、今まで見えてこなかった医療機関の像が浮かび上がってきます。多様な立場の人からヒアリングをして情報を収集することで、ブランディングは多層化して深みを増します。例えば医師の採用を行う場合、弊社では入職1年目などの新人医師、入職後数年の中堅医師、部長などの管理職と院長や教授というさまざまな立場の方にお話をお聞きするようにしています。こうしてさまざまな立場の人から話を聞くことで、求人のブランディングにだけでなく、その先のブランディングに重要な他の病院との違いを浮き彫りにしやすくなるからです。
また、採用の場合は決裁が看護師長や医事課長、人事課長などになることが一般的です。多くの決裁を必要としないためスピードが速く、また意思決定者が少なくて済むため、ブランディングの作業を進めやすく、最初のアプローチとしては最も効率的であるというのが3つ目の理由です。
さらにお伝えすると、看護師の求人サイトからスタートすると最も効率良く進められます。理由は、看護師にヒアリングすると、病院全体のことを知っているため、表に出ていないことで、ブランディングに重要な部分が浮き彫りになる可能性が高いからです。
さて、ここで、採用コストの話題に移りたいと思います。医師や看護師を採用するときにかかるコストはどのようなものがあるでしょうか。
採用の広告費、人材紹介会社の手数料、就職セミナーの出展料など様々な採用コストがかかります。このようなコストをかけたとしても狙った人材が来なくては、費用の無駄になります。また、すぐに辞められたとしたら、毎年採用コストをかけなくてはなりません。例えば、人材紹介会社を利用して採用を進めた場合は、紹介料として25%~35%の紹介手数料がかかるといわれています。年収1500万円の医者の採用であれば、30%の手数料で約450万円の費用がかかってきます。
さらに新人を採用した場合、教育費も考えておかなければなりません。
ある医療機関の人事担当者とお話した時に、看護師の教育費として、プリセプターの先輩看護師の指導時間を計算すると、1人あたり80万円前後はかかる可能性があるとお聞きしました。教育費も馬鹿にはなりませんね。
これだけのコストをかけたとしても、仮に1年で辞められてしまったとしたらまた新たに採用しなければなりません。紹介業者を通じて採用すればまた年収の25%~35%の紹介料を取られることになってしまいます。さらに教育にかかるコストも再度計上しなければなりません。そのため、できるだけ同じ人に長く勤めてもらった方がコスト削減につながります。
看護学校や医学部に対して就職説明会を行うときにも同じことが言えます。
説明会の会場費や資料作成にかかるコスト、説明会当日のスタッフの人件費などを考えれば、ある程度まとまった費用がかかります。 これらのコストは、求人が必要な間はずっとかかり続けることになります。
しかし、ブランディングでマッチング率が高まれば、紹介料も説明会も減らすことができ、採用コストを削減することができるのです。
そこでブランディングを取り入れることで、採用する側とされる側のマッチング率を高めることができる仕組みを次回で解説しましょう。
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