医院開業コラム
前回は、ブランディグを利用した具体的な手法や、コスト削減の理由などをお伝えしてきました。今回は、マッチング率の向上とコスト削減について、考えてみましょう。採用の際に、医療機関のブランディングを取り入れることで、採用する側とされる側のマッチング率を高めることができる仕組みを解説しましょう。
一般的な求人の場合、募集から採用までのルートはこのようになります。
・条件を提示して応募を開始
・条件を見た求職者から応募がある
・選考、面接時に諸条件について確認
・応募者はここで院内の雰囲気などを実際に知る
・医療機関、応募者ともに選考に入る
条件を見て応募している段階では、求職者は医療機関の情報をほとんど手に入れていません。そのため、面接に来て実際に話をしたときに「何か違う」と違和感を抱くことは普通にあります。
面接時は問題なかったとしても、働き出した後で「働きづらい」と退職してしまうこともあります。
一方、ブランディングができている場合はこのルートをたどりません。ブランディングされている医療機関では、医療機関の強みや求める求人像が明確になります。条件面ではなく、理念や方向性、雰囲気や具体的な勤務内容にいたるまで、ブランディングによって発信する情報が多ければ多いほど応募者はそれを事前に把握することができます。
その上で応募してくることになるのです。
そのため、単に「この地域でこれくらいの年収が得られて、自分の専門分野であること」という条件ではなく、発信されている情報に共感して「この病院で働きたい」という積極的な動機を抱いている可能性が高くなるのです。
医療機関側が応募者についてあまり知らないという点では、従来の採用とは変わりません。しかし、ブランディングができているために「この病院にあった人材から応募が来ている」ということはわかります。
そのため、面接で条件のすりあわせや医療機関について知ってもらう必要がありません。医療機関の理念や方向性などを踏まえた上で、採用された後は何がしたいのか、どのようにキャリアを積みたいのかなどを確認するという、より生産性の高い機会にすることができるようになります。
今までの経験上、私のクライアントでは、給与の条件を変えずに、ブランディングを利用して人材を集めており、経験が積み重なると、それを自分達のモノにして次へと進んでいきます。
求人におけるブランディングで重要なことは、医療機関の強みを提示して「なぜこの医療機関が選ばれるのか」を明らかにすることです。「給与が高いからその医療機関は選ばれる」だと、さらに給与が高い先が出てきたらどうなるか、一目瞭然です。
更に、現在の求人情報は、条件検索によって成り立っています。それは、大手の紹介業者や求人紹介業者にとって、都合がよく、情報の取り扱いが楽で、会社の売上が見込まれやすいからです。
しかも、WEBで管理するにも、条件検索は非常に相性が良いため、ほとんどの紹介業者や求人会社は条件で対応されているかと思います。(ちなみに、DEPOCは、これと真逆の方向へ進んでおり、どうしたら医療機関に定着するかを日々考えて活動しています。)
さて、医療機関の強みをどの様に出すかについて、考えてみましょう。貴院の特徴はどんなところがありますか?
強みを打ち出しましょうと提案をすると、「うちは特徴がない病院だから」という反応が返ってきますが、そんなことはありません。当たり前になってしまって気がつかないだけなのです。
事例を挙げてみましょう。
ある医療機関では「定時で仕事が終われる」ことが強みでした。しかし医療機関側はこれを強みだとは認識していませんでした。医療機関側は「患者が少ない」とネガティブに捉えていたのです。そのため、定時に帰ることができ、ママさんにも働きやすいというブランディング戦略を立てさせて頂きました。
他にも、例えば看護部の特徴であれば、
・新人看護師を孤立させない
・定時で帰れるしくみ
・ナースコールが鳴らない看護
・職員寮完備
・ライフワークバランス
・子育て支援
・海が近い
など、、、
様々な情報がありますが、これらを同列に並べるのではなく、体系立てて見せていきます。病院によって、弱みと思っている部分は逆に強みになることは多々あります。特定の症例が多ければ、その症例を研究したい、その分野で成長したいと考えている人には強みに映ります。導入している医療機器が強みになることもあります。「海が近い」「都内に出やすい」「交通の便がよい」といった環境的な要因も強みとして考えられることもあります。こうした強みを洗い出し、それをコンテンツに落とし込んで必要な人に届け、それが事実とイコールであれば、その噂が業界で広がり、その病院でのブランディングの
成功に繋がるという流れになります。
医師の求人でも、薬剤師の求人でも、OT、PT、STの求人、その他、様々な職種でも同様で、求職者の立場に立って、体系立てて特徴を伝え、求職者自身がこの医療機関で働いたら、どういう働き方になるのか、どういった同僚と仕事をするのかをイメージさせることが、とても重要となります。
皆様の病院でも、角度を変えて病院を見直すことが出来れば、現在弱みと思っている部分が逆に強みとなる可能性もありますので、色々な角度から是非とも見直してみてください。
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