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開業医の節税のポイントとおすすめの対策

成功する医院開業への道

開業医の節税のポイントとおすすめの対策

クリニックを経営していると、さまざまな税金を納める必要があります。開業医として成功するためには、税金の負担を抑える「節税」に取り組むことが大切です。

しかし、節税対策を講じるに当たって「税金の仕組みがあまり分かっていない」「おすすめの方法が知りたい」という先生も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、開業医と税金の関連性を踏まえつつ、開業医向けの節税対策や経費に計上できる費用、節税対策の注意点について解説します。

目次

 

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1.開業医は個人事業主として確定申告が必要

電卓をたたく医師

開業医は勤務医や会社員のような給与所得者ではなく、自営業者やフリーランスと同じ「個人事業主」なので、毎年確定申告が必要です。

そこで、確定申告に関わる税金や事業収入の種類をまとめました。

1-1 開業医に課される税金の種類

開業医として働く場合、以下のような税金が課されます。

  • 所得税
  • 住民税
  • 個人事業税
  • 消費税
  • 固定資産税
  • 償却資産税

開業医の税金において、特に大きなウェイトを占めるのが「所得税」です。これは1年間に事業で得た所得に課される税金で、所得に比例して税率が高くなる「累進課税制度」を採用しています。

つまり、クリニックの稼ぎが増えるほど所得税額もアップするということです。税金の負担を抑えるためには、節税対策が欠かせません。

1-2 開業医の税金の計算方法

先述の通り、開業医が納める税金は所得税によって大きく変動します。実際の所得税額は「課税所得」に基づいて決まるため、その計算方法を知っておくことも大切です。

課税所得・所得税額に関しては、以下のような計算式で算出します。

  • 課税所得=事業収入-必要経費-所得控除
  • 所得税額=課税所得×所得税率-税額控除

所得税額(納付税額)を減らすためには、経費や控除の金額をきちんと算出し、できるだけ課税所得を抑える必要があります。

1-3 クリニックの事業収入の種類

課税所得に関わるクリニックの事業収入は大きく分けると、以下の3種類があります。

  • 保険診療収入
  • 自由診療収入
  • 雑収入

保険診療収入とは、文字通り国民健康保険や社会保険を通じて得られる収入です。

自由診療収入は保険が適用されない診療の他、予防接種や健康診断の際に得られる収入も該当します。また、患者さまが保険証を持参せずに受診した場合、支払われた費用は自由診療収入です。

雑収入とは、受付で販売している健康食品の収入、院内に設置した自動販売機の収入などを指します。

2.開業医が活用したい節税対策

節税 イメージ

開業医におすすめの節税対策は、以下の通りです。

  • 正確な経費計上
  • 節税につながる公的制度
  • 適切な所得分散
  • 減価償却費の計上
  • 不要な償却資産の廃棄
  • 租税特別措置法の特例
  • 特定支出控除
  • 医療法人化

それぞれ概要をまとめました。

2-1 正確な経費計上

節税対策に取り組むなら、クリニック経営にかかる経費を細大漏らさず正確に計上することが何より重要です。

税金の大半を占める所得税の税率は、所得(収入)そのものが減らない限り下がりません。しかし、事業収入から差し引ける経費を増やせば、その分だけ課税所得を減らせるので、所得を下げることなく節税できるようになります。

詳細は後述しますが、どの費用がどのような条件下で経費になるのか把握しておくことも大切です。

2-2 節税につながる公的制度

公的な共済制度や年金制度などに加入すれば、掛金を経費として計上できるので、結果的に節税へとつながります。老後の生活や万が一の事態に対する備えとしても役立つため、経営に支障が出ない程度に活用したいところです。

開業医向けの公的制度は、以下のようなものがあります。

  • 小規模企業共済
  • 経営セーフティ共済(倒産防止共済)
  • 生命保険
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)
  • ふるさと納税

各制度の特徴や強みも解説するので、ぜひご確認下さい。

2-2-1  小規模企業共済

小規模企業共済とは、個人事業主や小さい企業の経営者などが廃業・退職に備えて、生活費や事業再建のための資金を事前に積み立てる制度です。経営者向けの退職金制度と呼べるもので、共済金は一括もしくは分割で受け取ることができます。

掛金は全額所得控除になる他、共済金は一括なら退職所得、分割なら公的年金等の雑所得という扱いになるので有用です。

2-2-2  経営セーフティ共済(倒産防止共済)

経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは、取引先が倒産してしまった場合、連鎖倒産を防ぐために資金の借り入れができる制度です。担保・保証人不要なので比較的加入しやすい上、掛金を800万円まで積み立てられるので、大きな節税効果が期待できます。

なお、掛金の100%を返還してもらうためには、40ヶ月以上の加入期間が必要です。

2-2-3  生命保険

看護師や受付などスタッフを対象とする生命保険に加入すれば、保険料の半分を経費計上できます。節税につながることはもちろん、スタッフが重い病気にかかったり、仕事のトラブルでけがを負ったりした際の備えになることもメリットです。

なお、保険料を経費にしたいなら、保険金の受取人はスタッフの家族に設定する必要があります。

2-2-4  iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、老後のために自分で掛金を拠出し、自分で選んだ金融商品(定期預金・投資信託など)を運用しながら資産を形成する制度です。60歳以降になると、掛金および金融商品の運用益を受け取ることができます。

個人事業主の開業医なら毎月68,000円まで拠出できますが、この掛金は全額所得控除の対象なので、節税対策としても活用可能です。

2-2-5  ふるさと納税

ふるさと納税とは、自分の生まれ故郷やお気に入りの自治体に寄付という形で納税する制度です。寄付金で2,000円を超える部分は、翌年の所得税・住民税から減額されるようになります。

厳密にいうとふるさと納税は節税対策ではないものの、寄付金の30%以内に相当する返礼品(名産品・家電製品など)がもらえるため、使いようによってはお得です。

2-3    適切な所得分散

開業医向けの節税対策としては、家族間で所得を複数に分ける「所得分散」も有用です。例えば、2,000万円の所得を院長一人で全額得るケースと、院長と配偶者で1,000万円ずつ分けて得るケースを比較すると、後者の方が所得税額は安くなります。

ただし、家族へ給与を支払う際は事前に「青色事業専従者給与の届出」を行う必要があります。また、クリニックが社会保険適用事業者に該当する場合、社会保険料も支払わなければならないため注意しましょう。

2-4    減価償却費の計上

減価償却は「時間経過によって資産の価値は下がる」という前提のもと、その資産の耐用年数に応じて取得費用を分割し、少しずつ経費にすることです。例えば、事業用に耐用年数10年の自動車を300万円で購入した場合、10年間にわたって30万円ずつ減価償却費を経費として計上できるので、その分を課税所得から差し引けるようになります。

ただし、減価償却の仕組みや計算方法はやや複雑なので、できれば税理士などの専門家に相談しましょう。

2-5    不要な償却資産の廃棄

償却資産とは、事業の用に供することができる土地・家屋以外の固定資産で、なおかつ減価償却の対象に含まれる資産のことです。クリニックの場合、医療機器・空調設備・パソコン・待合室用のソファなどが該当します。

このような償却資産は所有しているだけで「償却資産税」が課されてしまうため、節税のために思い切って廃棄するのも一案です。書面や写真で廃棄したことを証明すれば、除却損もしくは売却損として経費計上できるようになります。

2-6    租税特別措置法の特例

医業・歯科医業に携わるクリニックで、なおかつ以下の収入要件を満たしている場合、租税特別措置法に基づく「概算経費の特例」の対象となります。

  • 保険診療収入が5,000万円以下
  • 総収入が7,000万円以下

この特例を活用すれば、実際にかかった経費と概算で算出した経費のうち、金額が大きい方を経費として計上できるため、結果的に課税所得を減らすことが可能です。

概算経費の仕組みは、以下の通りです。

保険診療収入 概算経費率
2,500万円以下 72%
2,500万円超~3,000万円以下 70%+50万円
3,000万円超~4,000万円以下 62%+290万円
4,000万円超~5,000万円以下 57%+490万円

2-7    特定支出控除

特定支出控除とは、以下のような「特定支出」の合計額が給与所得控除額の1/2を超えた場合、その超過分の金額を所得から控除する制度です。

 

  • 通勤費
  • 転居費(転任に伴う転居)
  • 研修費
  • 資格取得費(試験や審査による合否は問わない)
  • 帰宅旅費(単身赴任などで家族と別居している場合)
  • 勤務必要経費(衣服費・図書費・交際費など)

 

「給与所得控除額の1/2」という基準に関しては、最高125万円と規定されています。つまり、125万円を超える部分が控除対象です。

2-8    医療法人化

クリニックを医療法人化すれば、法人税の対象となります。個人事業主の所得税率は最大55%まで上昇しますが、法人税率は17.59~27.21%の範囲内で収まるため、クリニックの経営状況によっては大幅に節税することも可能です。

また、院長の収入に対して給与所得控除が適用される、給与所得者と同じく退職金がもらえるといったメリットも見逃せません。

一方、経営セーフティ共済に加入できない、会計や事務の手間が増えるなど、医療法人化にはデメリットもあります。

3.開業医が経費に計上できる費用の例

電卓を持つ医師

経費計上は節税対策における基本なので、どのような費用が経費に含まれるのか把握しておく必要があります。

開業医の場合、以下のような費用が経費計上の対象です。

  • 人件費
  • 福利厚生費
  • 設備費
  • 会議費
  • 交際費
  • 出張費

費用の概要や具体例についても解説します。

3-1    人件費

人件費はクリニックの経費で最も割合が高くなりやすい費用であり、売り上げの3割前後を占めるケースが一般的です。クリニックで一緒に働くスタッフに支払う給与や賞与、社会保険料などが該当します。

3-2    福利厚生費

福利厚生費とは、文字通りスタッフの福利厚生に関する費用です。健康診断の減免額や社員旅行の旅費、歓送迎会の会費などが該当します。スタッフの健康状態やモチベーションに影響するため、節税以外でも重要なポイントです。

3-3    設備費

設備費も人件費と同様、クリニックの経費において大きな比重を占める費用です。業務で用いる医療機器の購入費やリース料はもちろん、開業物件の取得費や水道光熱費、パソコンの購入費、固定資産の減価償却費なども該当します。

3-4    会議費

会議費とは、ミーティング開催にかかる費用です。貸し会議室のレンタル料はもちろん、カフェや喫茶店でミーティングを実施した際の飲食費なども該当します。

ただし、アルコールを提供するバーやレストランでの飲食費は認められません。

3-5    交際費

交際費とは、クリニック経営と関連する接待や交流にかかる費用です。他のクリニックや病院の院長との飲食代、取引先関係者に贈るお歳暮やお中元の代金などが該当します。

税務調査で重点的にチェックされるため、領収書に相手の情報をしっかり残しておくことが大切です。

3-6    出張費

出張費とは、学会やセミナーへ参加するための出張に伴う費用です。会場までの交通費(電車賃・飛行機代など)はもちろん、ホテルや旅館に泊まる際の宿泊費も該当します。

3-6    出張費

家族同伴で出張する場合、家族の分は経費になりません。

3-7    開業までにかかった費用も経費になる

クリニックはさまざまな準備を経て開業しますが、その準備にかかった費用(開業費)も開業後に経費として計上できます。具体例をまとめたので、こちらも併せてご確認下さい。

  • 関係者との打ち合わせに伴う飲食費
  • クリニック見学やセミナー参加に伴う交通費
  • 開業準備で用いる備品の購入費
  • 集患対策やスタッフ募集に伴う広告宣伝費
  • 各所への根回しに伴う贈答品費
  • 内覧会で渡す配布物の制作費

経営安定化のためにも、できるだけ経費で落としましょう。

4.医師の節税対策の注意点

〇と×を持つ医師

クリニックの開業成功には、ここまで紹介してきた節税対策が必要不可欠です。しかし、節税対策の実践に当たって、以下のような注意点もあります。

  • 無駄に経費を使わない
  • 法律に沿った節税を行う

これらの注意点も詳しく解説します。

4-1    無駄に経費を使わない

経費計上できるからといって必要性が薄い設備投資を行ったり、福利厚生費や交際費を安易に増やしたりするようでは本末転倒です。余計な支出を繰り返すと、当然ながら資金繰りが悪化しやすくなるので、節税どころかクリニックの経営が傾きかねません。

経費を増やすことだけが開業医の節税対策ではないため、現状の売り上げや今後のビジョンを踏まえつつ、他の方法を検討することも大切です。スタッフや税理士と相談しつつ、リスクが低い方法を選択しましょう。

4-2    法律に沿った節税を行う

節税はあくまで合法の範囲内において税金を減らすことであり、その範囲を超えると「脱税」になります。脱税行為が発覚した場合、意図的かどうかを問わず追徴課税や刑事罰といったペナルティが課されるので要注意です。

例えば、プライベートの支出は当然ながら経費にならないため、事業と関係がない娯楽品の購入費や家族旅行の旅費などは計上できません。備品と娯楽品をまとめて買ったり、出張ついでに観光したりする際は、経費をプライベートの支出をきちんと分けましょう。

5.日本調剤の開業サポートにご相談下さい

開業医は診療に従事する医師であると共に、クリニックの経営者です。勤務医時代と比べて立場や業務内容だけではなく、納めるべき税金も大きく変わってきます。

経営を安定させるためには、節税対策を講じて資金繰りに余裕を持たせることが大切です。しかし、適切な節税対策にはメディカル以外の知識が求められるケースも多いので、開業前の段階から専門家に相談することを推奨します。

日本調剤では、開業前後に関する多様なサポートを無料で提供しています。クリニック開業支援に精通した経験豊富な税理士も紹介しているので、ぜひ一度お問い合わせ下さい。

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