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皮膚科医の年収アップの手引
医院開業コラム
クリニックにまつわるお金の話
2025.12.10 2025.12.10
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メディカルセンター.JP
皮膚科の勤務医の平均年収がおよそ1,078万円であるのに対し、開業した場合は年収が大幅に増えるケースは珍しくありません。しかし「初期投資はいくら必要か」「保険診療だけで本当に黒字を維持できるのか」といった経営上の実態を把握している勤務医は少ないのが現状ではないでしょうか。
本記事では、皮膚科開業時の初期費用の内訳、月次損益モデル、投資回収シミュレーションをまとめ、保険診療のみで営業利益率25~30%を実現する方法から、設備投資を抑えつつ利益を出しやすくなるポイントまで解説します。
勤務医と開業医では収入の構造が大きく異なり、勤務形態や診療スタイル次第で年収は数百万円単位で開きます。
本章では、公的統計をもとに「勤務医の年収」と「開業医の損益差額」を比較し、皮膚科医がどの領域で収益を伸ばしやすいかを整理します。まずは勤務医の平均年収から確認しましょう。
2011年に実施された、JILPT「勤務医の就労実態と意識に関する調査」 によれば、眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科をまとめたグループの平均年収は1,078万円でした。これは外科の1,374万円より約300万円、内科の1,247万円より約200万円低い水準です。
皮膚科は夜間手術や高度急性期処置が少ないため出来高加算を伸ばしづらく、診療報酬点数に直結する高難度処置の比率も限定的です。
その結果、同じ勤務時間帯でも外科や救急科ほど収入が積み上がりにくい構造となっています。ただし宿直やオンコールが少ない分、時間外労働の負担は軽いというメリットがあり、ワークライフバランスを優先する勤務医には根強い人気があります。
厚生労働省「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」 の一般診療所 主たる診療科別損益状況によると、皮膚科の一般診療所の年間損益差額は平均2,421万円と報告されています。
損益差額が高い背景には次の要因が挙げられます。
1.美容皮膚科領域の自由診療 レーザー照射やピーリングなどの自費治療は1回あたり数万円の単価でも原価負担が小さいため、粗利率が跳ね上がります。自由診療比率が30%を超えると年間売上1億円規模に伸長した事例も報告されています。
2.高い患者回転率 湿疹や尋常性ざ瘡(ニキビ)など軽症外来が中心で、診察1件に要する時間は短い傾向があります。午前外来だけで数多くの患者を診るクリニックも珍しくありません。
3.リピートを見込める慢性疾患 アトピー性皮膚炎やニキビ治療は定期通院が前提のため、来院頻度が安定します。さらに自費の美容施術へ移行する患者も多く、LTV(顧客生涯価値)が高まりやすい点も特徴です。
設備投資を抑えつつ患者回転とリピートを確保すると、勤務医時代よりも年収の大幅アップを実現する開業医も珍しくありません。
皮膚科クリニックの売上は、大きく保険診療と自由診療の2本柱で構成されます。保険診療は回転率とリピート来院がポイントとなり、自由診療は高い単価と粗利率が特徴です。そのため、経営戦略も分けて考える必要があります。
以下では、両モデルの特徴と収益に与える影響を具体的な数字で比較します。
一般皮膚科では湿疹・ニキビ・水虫などの軽症外来が中心で、1回あたりの診療単価はおおむね3,500~4,000円です。大阪府医師協同組合の記事では「保険診療が主体なら1日60名の診察が目標」と例示されています。
皮膚科の設備は顕微鏡程度で済み、高価なディスポ資材も使いません。一般的に、変動費は売上の1%程度にとどまり、粗利率は99%前後といわれています。ただし単価が低いため、一定以上の回転率を維持しないと売上が伸びにくいのが実情です。
仮に「平日5日×1日60名×平均3,800円」で試算すると、月商は約456万円になります。人件費や家賃を差し引いた後の利益は20~25%前後に落ち着くケースが多く、保険診療で収益を増やしていくには回転率の向上が重要なポイントになります。
シミ取りレーザー、HIFU、ケミカルピーリングといった美容系メニューは、1回3万~5万円超が相場です。自由診療は価格を自由に設定できる上、薬剤コストが小さく、主な支出は機器の減価償却とスタッフの人件費に限られます。そのため粗利率は70~80%程度まで高まりやすいという特徴があります。
経営指標としては
とされ、自費比率が30%を超える頃から利益が大きく伸び始めるのが一般的です。
ただし、自費メニューの導入には高額機器への投資・広告規制・患者トラブルといったリスクがつきまといます。地域ニーズやクリニック理念を踏まえつつ、段階的に比率を調整していく慎重な姿勢が欠かせません。
皮膚科が「ワークライフバランスを取りやすい診療科」といわれる根拠は、収入構造だけでなく勤務時間の短さや宿直負担の軽さにもあります。
ここでは公的統計を用い、外科・内科と比較しながら皮膚科勤務医の実際の労働時間と宿直回数を確認します。
JILPT「勤務医の就労実態と意識に関する調査」によると、眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科をまとめたグループの週あたり総労働時間は平均44.3時間でした。
60時間を超えて働く医師は20.5%にとどまり、外科(平均52.5時間・60時間超が43.1%)より負担が軽い結果となっています。内科の平均43.4時間と近い水準ですが、外科系ほど長時間労働に偏らない点が際立っています。
勤務時間が短い理由は、夜間手術や急性期処置が少ない診療特性によるところが大きく、定時後に突発的な処置が入りにくいぶん予定が立てやすくなります。プライベートの時間を確保しやすい勤務形態を求める医師にとって、皮膚科は魅力的な選択肢といえます。
JILPT「勤務医の就労実態と意識に関する調査」にて、宿直が「ない」と回答した割合は皮膚科を含むグループで41.2%でした。宿直が月1~2回と回答した医師は42.5%で、合わせると8割以上が「宿直ゼロ~月2回」に収まります。対照的に外科は宿直なし26.3%、月1~2回39.5%と夜間対応が避けにくく、皮膚科との差が明確です。
さらに、2024年4月施行の「医師の働き方改革」で宿日直の基準が厳格化され、連続勤務時間や休息時間の確保がこれまで以上に求められるようになりました。この改正により、夜間対応が少ない診療科ほど業務負荷が抑えられやすい傾向が一段と鮮明になっています。皮膚科はその代表例で、夜間勤務の負担が相対的に軽いという魅力が改革後にいっそう際立ちました。
宿直負担が少ないことは、睡眠不足や慢性的な疲労を避けられるだけでなく、家族との時間や自己研鑽へ振り分けられる余裕を生みます。ワークライフバランスに優れており、長期的なキャリア形成がしやすくなる点が、皮膚科勤務医の大きなメリットです。
勤務医と比べて開業医の年収が大幅に増える原因として、①変動費が小さい、②高回転・リピートが見込める保険診療、③利益率の高い自由診療の3点が挙げられます。
以下では、それぞれの要素がどのように利益を押し上げるかを順番に解説します。
皮膚科では、診察で高価なディスポ資材をほとんど使用せず、処置に必要な薬剤も廉価な軟膏や外用薬が中心です。開業時の事業計画では、薬品材料費比率が保険収入対比でわずか1%、外注検査費比率も同じく1%で試算されることが多いです。
材料費・医薬品費が低水準に抑えられるため、売上が増えても変動費はほとんど増えず、限界利益率は90%台後半まで高まります。患者数が多い都市部のクリニックでは「1日100人診察×平均単価3,800円」のように患者数を確保するだけで、材料費は月商の数十万円前後に収まり、粗利がほぼそのまま人件費と固定費に充当されます。
結果として、同規模売上の内科・外科より利益率が高い経営モデルを実現しやすい点が、皮膚科開業医の年収を押し上げる大きな要因です。
湿疹・ニキビ・アトピー性皮膚炎など慢性疾患が中心で、月1回の定期受診を続ける患者が多い点が皮膚科の強みです。経営を軌道に乗せるには1日60名が目安となりますが、平均80名/日、月商約500~600万円にまで達するケースが多いのが実態です。
診察1件は短時間で終わるため、受付2名+看護師1名でもオペレーションが回り、固定費を抑えたまま患者数を積み上げられます。再診率の高さは季節変動を平準化し、キャッシュフロー予測を立てやすくする副次効果も生みます。
レーザー照射や光治療は1ショット2~3万円でも、追加コストは機器償却費と看護師の介助人件費程度です。自費比率が30%を超えると粗利率が一気に上昇し、同じ患者数でも利益が倍増するケースが珍しくありません。
ただし美容領域を拡大する際は、①高額機器投資の回収シミュレーション、②医療広告ガイドライン遵守、③術後トラブル対応体制を事前に整え、保険診療で築いた患者基盤を損なわない範囲で段階的に比率を調整することが重要です。
皮膚科クリニックの収益性は、主に次の三要素から成り立ちます。自由診療をむやみに拡大せずとも、保険診療の回転率向上と変動費の低さだけで十分な利益体質を構築できます。経営計画を立てる際の目安としてご活用ください。
・外用薬の在庫回転管理
・再診枠を固めて月1来院を定着
・ROIを明確にした上で機器投資
②医療広告ガイドライン遵守
③術後フォロー体制の整備
材料費を抑えるには、在庫日数の短縮と発注ロットの最適化が欠かせません。毎月の診療実績を踏まえて発注サイクルを見直し、「発注リードタイム×安全在庫+翌月予想消費量」の簡易式で算定すると過不足を防ぎやすくなります。
1日60名診察で月商450万円前後を確保した上で、OJTのマニュアル化・スタッフ教育を進めると、人件費率を20%台前半に抑えやすくなります。再診枠は曜日を固定し、季節変動に強い来院サイクルを維持しましょう。
高単価メニューは利益押上げ要因になりますが、初期投資とリスクをカバーできる範囲かどうかを必ず検証すべきです。①高額機器の投資回収シミュレーション、②医療広告ガイドライン遵守、③術後フォロー体制の整備を行った上で導入する必要があります。
最後にまとめとして、経営バランスを保つためのポイントを、以下に示します。
このバランスを守ることで、営業利益率20~30%超の経営モデルが実現しやすくなります。自由診療の拡大はあくまでも「加点方式」と位置づけ、保険診療で培った患者基盤の信頼を損なわない範囲で慎重に進めることが、中長期的に安定した高収益を維持するポイントとなるでしょう。
ここでは「初期投資はいくら必要か」「開業後に毎月どれだけ残るのか」を具体的にイメージしていただくために、モデルケースを使って数字を整理します。
テナント開業に必要な資金を細かく分解した上で、保険診療のみで運営した場合の月次損益をシミュレーションし、投資回収までの道筋を可視化しました。ご自身の事業計画に当てはめながら、資金繰りやキャッシュフローの検証に役立ててください。
皮膚科クリニックをテナントで開業する場合の初期費用の目安は、6,000~8,000万円です。初期費用の内訳は以下の表にまとめています。
将来の処置室増設を見据え、給排気・配管に余裕を持たせて設計。
導入前に月間症例数予測を算定し、ROI 3年以内を基準に導入を判断。
予約システムと連動した問診アプリで受付時間を短縮し、1日の診察数の上限を引き上げる。
家賃比率は想定月商の15%以内に抑える。
運転資金を厚めに確保し、広告費を切り詰めてスタッフ給与が遅延しない体制を整える。
資金計画で押さえておきたい以下の3つのポイントに注意して、開業計画を検討することをおすすめします。
1.家賃比率は15%以内 立地がよくても家賃が高すぎるとキャッシュフローが圧迫される。
2.機器投資はROI 3年以内 施術単価と症例数を試算し、数字が合わなければ見送りも。
3.クラウドシステムで固定費を平準化 高額サーバーを買わずに月額課金へ振り替えると、初期投資を抑えつつ最新機能を使える。
開業資金は、かければよいのではなく、将来の回収計画までセットで考えることが重要です。開業初期費用の内訳と資金計画の3つのポイントを参考に、無理のない計画を練り上げてください。
皮膚科クリニックを開業する際、「毎月どれだけ利益が残るのか」を具体的な数字でつかむことは資金計画の重要なポイントです。
ここでは自由診療を一切導入せず、保険診療だけで運営した場合のシミュレーションを示します。まずは堅実な医院経営につながる「保険診療中心のクリニック」を目指しましょう。
黒字を維持するポイントは、以下の3点です。
1.回転率の向上 Web予約と問診アプリを連携し、受付~診察までの待機時間を短縮。診察室2室をフル回転させ、1コマあたりの診療を効率化する。
2.再診率の向上 月1回の再診をメールやLINEで促し、来院サイクルを固定。スキンケア指導や生活習慣アドバイスを丁寧に行い、患者満足度を高める。
3.低コスト体質の維持 在庫は月次でチェックし、使用期限切れを防止。軟膏などの薬剤は発注ロットを小分けにしてキャッシュアウトを抑える。
月次営業利益 270 万円は年間 3,240 万円(月 270 万円)になります。ここから院長報酬を年間 1,800万円(月 150 万円)確保すると、借入返済へ回せるキャッシュは年間 1,440 万円です。
初期投資 7,000 万円をこのキャッシュで返済すると元本の回収期間は約 4.9 年ですが、利息(年 1.5 %想定)・設備更新費・突発的支出を考慮すると、実質的な回収期間は 6〜7 年程度が妥当といえます。
自費診療を導入しなくても堅実に黒字を維持しやすい点は、皮膚科クリニックならではの強みです。
本記事では、低変動費体質・高回転の保険診療を軸にした収益モデルと、初期投資6,000~8,000万円を6~7年で回収する目安を整理しました。保険診療主体であっても、1日80名程度の患者を安定的に診れば営業利益率25~30%を確保でき、堅実な黒字経営が期待できます。
ただし実際の数字は、テナント賃料や診療圏の人口動向、金融機関の融資条件で大きく変動します。物件選定・資金調達・診療圏調査・スタッフ採用といった工程は、専門家と二人三脚で進めることでリスクを最小限に抑えられます。
日本調剤では、物件紹介から融資交渉、診療圏分析、開業後の運営サポートまでワンストップで支援しています。数字に基づいた詳細なプランをご希望の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
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