医院開業コラム
クリニックを開院してから数年経つと、「過去にマニュアルを作ったものの、そのうち誰も目を遠さなくなってしまった。」あるいは、「マニュアルがあるなんて知らなかったというスタッフがいる。」ということが起こりがちです。これではせっかく作ったマニュアルが台無しですね。将来このようなことにならないように、活用されるマニュアルの作り方と、浸透させる工夫をしっかり意識しましょう。
まずはマニュアルを作る意義を確認します。スタッフ全員が共通の認識をもつため、というのが大きな意義ですが、もう一段階掘り下げると、誰が実施しても同じように業務を行えるよう業務品質を標準化するため、作業工数を削減しての業務を効率化するため、また、基準を明確化し各スタッフの達成度を確認するため、といった意味もあります。
実際のマニュアル作りの手順は大まかに、「業務の棚卸し」→「各業務における作業を書き出す」→「チェックリストを作成する」といった流れになります。それぞれ工夫するポイントは、下記のようなものが挙げられます。
業務の棚卸
・ルーティーン業務(開院準備〜診療終了後まで)とそれ以外(予防接種やクレーム対応、紹介対応など)に分ける
・患者さんの属性(初診/再診、急患、小児など)に分ける
作業の書き出し
・作業単位を時系列で区切る
・曖昧さを回避して具体的に表記する(補充する→予備を含めて3個補充する 等)
・勤務医、看護師、受付など、担当ごとに色分けをする
・なくせる作業がないか、順番を入れ替えられないかなど、効率化を考える
チェックリストの作成
・ミスが起きそうな事項を重点的に書き出す
・決して漏れてはいけない項目を列挙する
また、新人指導用には動画マニュアルも有効です。見る方も、百聞は一見に如かずですし、指導する方も、普段の作業を撮影しておくだけで繰返しの説明を省略することができます。また、「いつもと違うことが起きたらこれを見れば良い」というイレギュラー対応用のマニュアルというものを別途用意しておくこともおすすめです。イレギュラー時こそ冷静に対応したいものです。
そして、マニュアルを浸透させるためには、実際に業務を行う場所に掲示したり、チェックリストはスタッフ全員に見える箇所に掲示したりなどの工夫が効果的です。また、最低でも1年に1回、クレームが発生した際には都度見直しをするようにしましょう。見直しによってマニュアルの価値が上がっていきますし、スタッフが各自の仕事ぶりや価値観を共有する良い機会にもなります。
最後に、マニュアルにはぜひ院長先生の理念を随所に盛り込むようにしていただきたいと思います。当院はどのような想いで運営しているのか、どのような姿勢で患者さまに接するのか、ひとつひとつの業務に魂を吹き込むようなイメージで、マニュアルに書き出すよう意識をしてみてください。一人では難しい場合は、信頼できる幹部スタッフと一緒に作り上げられるとよいですね。
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