医院開業コラム
医師の開業ステップと成功のためのポイント医師にとって開業することは、理想の医療や収入アップを実現させる方法の一つです。しかし、開業までにやるべきことは多岐にわたるうえ、相応の手間がかかります。
開業を成功させるためには、あらかじめ綿密な計画を立てること、ポイントを押さえてきちんと準備することが大切です。そのため、まずは開業の流れやノウハウを知りたいという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、医師の開業事情を踏まえつつ、医院開業の手順を紹介します。
1.医師の開業の年齢・タイミングは?
少し古いデータになりますが、2009年に日本医師会が実施したアンケート調査によると、医師が新規開業したときの平均年齢は41.3歳です。
開業後年数別の比較では、5年以内は44.9歳、10~20年は41.7歳、30年超は37.5歳となっています。近年は勤務医として十分に経験を積み重ねてから開業する傾向がより強まっていると推察できるでしょう。
また、開業動機で最も多いのは「理想の医療の追求(42.4%)」であり、その次が「将来に限界を感じた(35.1%)」です。開業医は勤務医と比べると、働き方や診療スタイルの自由度が高く、平均年収も2~3倍にアップするので、その違いから開業に至っていると考えられます。
出典:日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」
2.医院開業の手順
医院開業の手順をまとめたので、参考にしてみてください。
2-1 医院のコンセプト・診療方針の決定
医師が開業する場合、最初にやるべきことは「医院のコンセプト・診療方針の決定」です。どのような医療を提供したいのか、どういった患者層を相手にするのかなど明確にしておけば、開業準備がスムーズに進むだけではなく、経営の安定化にもつながります。
医院のコンセプト・診療方針を考えるときは、自分の開業動機をしっかり掘り下げましょう。開業に至った理由やきっかけ、今後の目標などをメモ帳などに書き出せば、自分が進むべき道も見えてきます。
2-2 開業する地域・物件の選定
医院のコンセプト・診療方針が決まったら、次は開業する地域・物件を選定します。集患に直結する重要ステップであり、やり直しも非常に困難なので、しっかりポイントを押さえて取り組まなければなりません。
地域を決めるときは、「診療圏分析」を行う必要があります。これは開設した医院でどれだけの来院数が見込めるかを調べて、立地条件の良し悪しを判断するためのものです。診療圏の大きさは診療科目や地域事情によって変わるので詳細に分析しましょう。開業したい地域で診療コンセプトに即した集患ができるか、周辺に競合医院が存在しないかなども重要なポイントです。
なお、診療圏内に競合医院があったとしても、自院のほうが良い立地であれば、集患に成功する可能性はあります。また、競合医院の院長が高齢かつ後継者不在というケースもあるため、一概に競合がいるからその地域・物件を避けるべきというわけではありません。診療圏分析だけではなく、現地調査などもきちんと実施しましょう。
開業場所の選定と併せて開業形態も決める必要があります。戸建て(新築・居抜き)、ビルのテナントに入る、医療モール(メディカルモール)に入居するなど、開業形態の違いは集患にも影響するため、慎重に検討したいところです。
2-2-1 物件探しは信頼できる専門家に依頼する
物件を探す場合、不動産会社や開業コンサルタントに相談するのが一般的ですが、医院開業および経営に明るい実績豊富な専門家を選ぶのが成功の秘訣です。紹介された物件が人気エリアにあっても、ターゲットとなる患者層が少なく集患力に乏しい、実はクリニック入居不可のテナントだったなど、思うような結果が得られないケースがあるからです。
その点、40年以上の実績を持つ日本調剤では、開業やその後の経営サポートと併せて、各人の要望に合わせた優良物件を紹介しています。立地条件が良く、集患に有利な医療モールのご提案も行っていますので、どうぞ気軽にご相談ください。
2-3 事業計画の策定・資金調達
開業する地域・物件が決まったら、次は事業計画を策定します。これは医院のコンセプト・診療方針を実現させるための具体的なプランであり、なおかつ開業に欠かせない資金調達にも関わってくるため、とても重要です。
事業計画を策定する場合、開業後の収支および開業時の資金繰りも組み込んで考えなければなりません。
開業後の収支は、医業収入(1日の来院数×1日あたりの診療報酬×診療日数)と、支出(医薬品費・材料費・人件費・自分の生活費など)から算出します。収支の目安として、厚生労働省の医療経済実態調査をもとに、個人診療所の平均損益の内訳を表形式でまとめたので、こちらもご確認ください。
金額(千円) | 構成比率(%) | |||
2019年 | 2020年 | 2019 | 2020 | |
医業収益 | 85,941 | 80,136 | 99.6 | 100.4 |
入院診療収益 | 3,584 | 3,448 | 4.2 | 4.3 |
外来診療収益 | 80,373 | 74,284 | 93.2 | 93.1 |
医業費用 | 58,822 | 57,483 | 68.2 | 72 |
給与費 | 22,611 | 22,596 | 26.2 | 28.3 |
医薬品費 | 12,969 | 12,141 | 15 | 15.2 |
材料費 | 2,338 | 2,285 | 2.7 | 2.9 |
給食用材料費 | 138 | 145 | 0.2 | 0.2 |
委託費 | 3,253 | 3,236 | 3.8 | 4.1 |
減価償却費 | 3,845 | 3,764 | 4.5 | 4.7 |
その他の医業費用 | 13,668 | 13,318 | 15.8 | 16.7 |
うち設備機器賃借料 | 1,098 | 1,139 | 1.3 | 1.4 |
うち医療機器賃借料 | 731 | 787 | 0.8 | 1 |
損益差額(医療収益ー医業費用) | 27,445 | 22,982 |
開業にあたっては、物件取得費・内装工事費・医療機器の費用・オープン時の広告宣伝費などを計算したうえで、その資金をどのように調達するか検討します。自己資金や借入、リースが主な調達手段です。
これらの計画は健全な医院経営を続けるためだけではなく、金融機関から融資を受けるときにも重要となります。
2-4 内装工事・医療機器の準備
事業計画を立てて資金も工面できたら、次は医院の内装工事・医療機器の準備に移ります。
内装はターゲットとして想定する患者層に合わせてデザイン、および設備を整えることが大切です。例えば、産婦人科ならパウダールームを設置したり、プライバシーに配慮してエリアを分けたりすると、患者さまからの評価も高まります。
ただし、医療法・建築基準法・消防法といった各種法令に準拠することが前提ですので、工事開始前に必ず確認してください。また、内装デザインや設備配置については、患者さまやスタッフの導線も踏まえて検討しましょう。
一方、医療機器は事業計画をもとに、長期的な費用対効果を考えて厳選する必要があります。必要な機器を選定するとともに、価格や耐用年数もチェックして、新品か中古か、購入かリースかといった導入方法を選択しましょう。
2-5 集患のための広告宣伝
開業後すぐ患者さまに来院してもらうためには、開業1~3ヶ月前から広告宣伝に取り組まなければなりません。
近隣の患者さまにアプローチする場合、駅看板やチラシなど従来型の広告も一定の効果が見込めますが、最近はインターネットでの集患の重要性が増しています。ターゲットとなる患者層にリーチできるようなホームページの作成、リスティング広告をはじめとするWeb広告の出稿、SNSによる情報発信などを検討する必要があります。
2-6 スタッフ採用・研修
医院を開業する場合、診療に加えて経営に関する業務も院長が担います。院長一人ですべての仕事をこなすことは難しいので、診療をサポートする看護師のほか、受付・会計・レセプト作成などの業務を担う事務スタッフの存在も欠かせません。
スタッフの質は診療の質や患者さまの満足度を左右するため、採用活動は慎重に行うことが大切です。優秀な人材を確保したいなら、診療方針や経営理念を明確にした上で、できるだけ魅力的な労働条件を提示しましょう。院長の考えに賛同してくれるスタッフを集めることが、開業後のスムーズな医院運営や後々のトラブルを防ぐことにもつながります。
また、採用後のトラブルを避けるため、雇用条件を明確にしたうえで合意を得ることや、適切な労務管理も重要となります。
2-7 各種行政手続き
新しく医院を開業するためには、各種行政手続きも済ませなければなりません。主に必要となるのは「診療所開設届(保健所)」と「保険医療機関指定申請書(厚生局)」の提出です。
診療所開設届については書類提出だけで完了せず、担当者が現地に来て要件を満たしているか審査します。この審査でNGが出た場合、問題のある箇所を改善したうえで、後日の再審査でOKが出るまでは診療を開始できません。保健所や担当者ごとに判断が異なるケースもあるので、スケジュールに余裕を持っておくことが大切です。
まずは開業支援コンサルタントに相談を
「自分が理想とする医療を実現したい」「収入をもっと上げたい」という医師にとって、開業は検討する価値が高い選択肢です。しかし、ここまで説明してきた通り、開業までのプロセスは多岐にわたるうえ、一般的な医師が経験したことがないような手続きも多いので、簡単ではありません。
開業を成功させるためには、経験豊富な専門家に相談するのが一番です。日本調剤では、立地的に集患や他科との連携がしやすい、調剤薬局が敷地内にあるといった、メリットが多い医療モールを中心に開業医向けの物件を紹介しています。
また、開業や経営に関するサポートも行っているため、まずは一度気軽にご相談ください
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