クリニック開業時の労務管理のポイントシリーズの第11回目は、『起きやすい労務トラブルの事例と対応策』について確認していきます。

クリニックの経営において、良く起こる労務トラブルについて、事前に確認しておくことで、先生にも開業時から労務トラブルが起こることの予備知識と対応策について知っておいて頂ければと考えております。

医療機関で良く起こるトラブルは、代表的なもので下記のようなものがあります。
(1)診療が長引いて患者がいるのに、残業を拒否して勝手に帰った。
(2)院長の指示を聞かず、自分のやりたいように仕事をし始める。
3)職員(パート含む)から有給休暇の請求がきて、クリニックの運営に支障が出た。
(4)他の職員をいじめて、退職に追い込むようなパワハラが続いた。
(5)注意、指導したら、次の日から、「うつ病」と診断されたと言って欠勤を始めた。
(6)急に退職届を出してきて、即日来なくなった。
(7)試用期間中にスキルが低かったり、協調性が無かったりで本採用拒否しようとしたら不当解雇で訴えられた。
(8)注意、指導をしたら、「そんなルールは聞いていない。どこに書いてあるのか?」と言われて、注意、指導に応じなかった。

上記の中でも、(1)・(2)のような業務指示に従わないケースについての対応策は以下のようになります。

医療機関の義務として、応召義務があり、患者を無下に断れないことからも、就業規則への残業ルール記載と、職員にそういった職場の特殊性を理解してもらうことが必要になります。就業規則への記載としては、以下の規定になります。
『第〇条(所定外労働及び休日出勤) 当院は、業務の都合により所定外労働又は休日出勤を命ずることができる。
2 所定外労働及び休日出勤は、業務命令として、職員は、正当な理由なくこれを拒否することはできない。』

また、職員が院長の業務指示を聞かないなどの行為があった場合は、就業規則の『服務規律』や入職時取付書類の『誓約書』をもとに、注意指導が出来る状態を整えておくことが重要になります。『服務規律』には、以下のような文言により、職員としての遵守事項について記載しておくことが重要となります。
「職員は、当院の規則、規程、掲示事項、通達等及び指示に従い誠実にその職務に従事し、かつ専念しなければなりません。また、職員は、院長の指示に従い、誠実かつ勤勉に職務に服し、職場の秩序を保持しなければなりません。」
この基本的なルールが守れない職員には、厳しい注意指導および懲戒処分等により、仕事に対する姿勢を改めてもらうことになります。

上記のように、職員の問題が起こった時に、就業規則や職場のルール等により対応していくことで、問題が小さな段階から対処していくことが出来ます。職員の権利主張がますます増えてくる中で、クリニックを守れる就業規則や雇用契約書といった労務管理体制の準備を、開業準備段階から進めて頂きたいと考えております。