医院の開業については開院時期は重要な要因です。初夏の開業であれば、内科や小児科など寒い時期をメインとする診療科にとってはスロースタートとなることが多いです。

そういう時期にも関わらず、初日から爆発的な来院患者さまをお迎えした耳鼻科の開業支援を経験しました。近隣病院で外来勤務をしているときに、今回の開業地のエリアから患者さまが多く来院されており、診療圏に耳鼻科が駅から離れて一軒しかないのも調べたうえで、駅前の新築物件での開業を決意されました。

開業前の内覧会のときにも「できるのを今か今かと待っていました!」という声を多く聞きました。ドクターの魅力というのも当然あるのですが、やはり「場所・物件」の選定は大事だなあと改めて感心しました。

今回は、そういった「開業場所」「開業物件」についてのお話です。

一般に、次のような場所が開業場所として適地と言われます。

(1)人口が多い場所
単に人口だけでなく年齢分布も調べます。内科・整形外科であれば高齢者人口。小児科・耳鼻科であれば小児から14歳までの人口など。

(2)開発計画があるなど、将来性のある地域・人口増の見込める地域
開発計画がターゲットとしている年齢層にも着目したいです。
分譲マンションや建売住宅の価格帯や規模で狙っている所得層をある程度つかむこともできます。

(3)現在の勤務先の近く
先ほどの例のように、現在診察している患者さんが多い地域は有利です。ただし、病院志向の住民が多いエリアでの失敗例もあるので注意です。

(4)競合医療機関が少ない地域
競争相手となる医院は、最近は必ずしも同じ標榜科目に限られません。小児科と耳鼻科は競合してしまう場合があります。その一方で耳鼻科の領域は専門のドクターに任せたいため、近隣の耳鼻科との連携を希望される小児科のドクターもいらっしゃいます。外科系の競合医院についてはドクターの専門領域についても注意する必要があります。

(5)地縁のある地域
以前に親や親せきが長く診療所をしていたなど、患者さまにとって素性のわかる存在であることが一種のブランドや信用のような形で有利に働くことがあります。

(6)ターミナル駅の駅前
往々にして競合医療機関が多くなるのですが、ご自分の診療科や専門領域を活かせる場合や、精神科など近隣の知り合いに見られたくないケースでは有利となります。また、診療圏を広くとれるので将来性があるとも言えます。

開業物件については、一般的には次のような種類があります。

(1)戸建て
自分で建てる場合と、地主さんに建てていただいて賃貸借する場合があります。郊外であれば土地建物とも所有というケースが多いですが、都心ですと初期コストが高すぎて難しいとも言えます。賃貸タイプでは、クリニックが同じ土地に何棟か建っているメディカルビレッジというタイプもあります。

メリットは地域の患者さんの認知が比較的早いことや、建築時の面積やレイアウトの自由さがあげられます。
デメリットは先ほども申し上げましたが、初期コストが高くなることです。

(2)ビルテナント(いわゆるビル診)
クリニック以外のテナントも入っている雑居ビル型や、メディカルモールといった多科目のクリニックで専有するタイプもあります。

メリットは(1)に比べての初期コストの低さ。それゆえ投資回収も比較的早いと言えます。
デメリットは面積やレイアウトの制約。複数のテナントで分け合うため、駐車場の確保が難しい場合もあります。

また、スーパーや大型ドラッグストアなど人の集まりやすい商業施設と併設されているクリニックも有利です。
「〇〇スーパーの隣」など口コミで伝えてわかりやすいためと考えられます。

メディカルモールは、クリニックとしての認知度の有利性は高いと言えます。また、心療内科・精神科などは雑居ビルの高層階だと目立ちませんが、メディカルモールの高層階だとビル自体の認知度があるため集患に有利になります。

ドクターの皆様が、ご自分に合った、できるだけ有利な地域を選んでいただき、ご自分の診療スタイルに合った物件を比較検討し、巡り合えることを祈っております。色々見た結果、目移りして迷ったときには、専門家の意見を聞いてみるのも参考になると思います。