パート、アルバイト、正社員にかかわらず、スタッフを雇い入れる時は、書面において労働条件を明示することになっています。
スタッフを採用する時に「労働条件通知書」を交付するAクリニックと、「雇用契約書」を交付するBクリニック。後にトラブルに発展する可能性があるのはどちらのクリニックだと思いますか?

「労働条件通知書」とは、使用者側から一方的に労働条件を通知することであり、後にスタッフが「そんなものはもらっていない」、「一方的に言われただけで同意はしていない」などトラブルになる可能性を否定できません。対して「雇用契約書」は、労働条件の内容をお互いに確認し、承諾したものとして、それぞれ署名押印の上、1部ずつ保管しておきます。

ある事業所にて、スキルや資格が必要な職種の正社員を募集したところ、スキルも資格も要件を満たしていない人が応募してきました。本人の熱意と要望により別の職種である事務職として期間雇用のパートで採用しました。その旨、労働条件通知書を手渡していましたが、本人は「募集は正社員だったので、私も期間満了後に正社員に転換してもらえるはずだ。期間満了で雇用終了とは納得できない。話が違う。」として争いを起こしたというケースもありました。この場合も、採用時に雇用契約書で雇用条件などをお互いに確認し、署名押印の手続きをしておけば、「採用時、お互いに確認の上、承諾しましたよね。」ということで無用なトラブルを避けることも可能だったでしょう。

ということで、答えはAクリニックです。

書面内容は同じようであっても、取扱いを変えることでトラブルを回避することができます。後にトラブルを引き起こさないために、また、信頼関係を初期段階より構築するためも実務上、労働条件を網羅した「雇用契約書」を取り交わすことをお薦めします。
信頼関係が構築できていない採用時にこそ、時間をかけ、丁寧な対応や教育をすることが大切です。開業準備の段階で、スタッフ雇用に関する書面などの準備もしておくことをおすすめします。