医院開業コラム
前回のコラムは、理想的な組織が出来上がるまでのステップがテーマでした。
スタッフの皆さんはとても真面目ですので、自分の役目や仕事のやり方、ルールを示すことで、それに従って動いてくれるようになること、何か問題が生じても新しくルールを決めれば良い、という解決に動いてくれるようになることをお伝えました。それでは、スタッフに示すべき役目やルールといったものは具体的にどのようなものを指すのでしょうか。
院長がスタッフに提示するべき定義として、8つの項目があります。まずは今回、そのうちの3つについてお示ししたいと思います。
1つ目は『目的』です。
このクリニックは何のために存在するのか、何を目指しているのか、必ずスタッフへ示しましょう。
開業にあたって先生方は色々なことに思いを巡らせ、考えを尽くし、事業計画等を策定されると思います。その想いをぜひスタッフの皆さんにお伝えしてください。
クリニックの使命と、ビジョン(=目指す姿)をスタッフ全員と共有することはとても大切なことです。
例えば、採用の時点で個別によくお話をしていただくことで、そもそも方向性に合致しない方は仲間に入らないということも考えられます。開業に向けて早く人材を確保したい時に、先方からお断りされてしまうというのはなかなか厳しいことではありますが、長い目で考えると必要なことです。そもそもの方向性が合わないメンバーが入ってしまうと、その方本人も、周囲の人々も皆が不幸になるような事態を招きかねません。
そして2つ目は『目標』です。
目標には、組織としての目標と、役割における目標の2種類があります。1つ目の『目的』で示した、ビジョン(=目指す姿)を具現化するために、組織としてあるいはそれぞれの役割として何を行うべきかを定めることになります。
また、目標には短期的、中期的といった時間軸と、定量的、定性的といった性質面での軸が存在します。こうした切り口で考えると、院長先生ご自身にとっても整理しやすく、提示されるスタッフにとっても納得性のある目標を設定することができます。何か議論になった時にお互いに全く違う軸の話をしていた、といったトラブルを避けるためにも、こうした整理はおすすめです。
そして3つ目は『戦略・戦術』です。
上で設定した『目標』をどのようにすれば達成できるのか、その戦略や戦術については院長先生から示す必要があります。「目標についてはお互いに合意したね、それではやってね。」では、スタッフそれぞれが思い思いに動いてしまう危険性がありますし、そもそもどう動いて良いかわからなかったけれど、それを言えないまま過ごしてしまっていた…。という事態も招きかねません。具体的な行動内容はスタッフそれぞれが考えるのですが、院長先生には目標を達成するための筋道や、理屈を、ぜひスタッフの皆さんにお示ししていただくようお願いしたいです。
また、クリニックの運営が進んでいくと、様々な課題が出てきます。その時にも、現状の課題の整理や解決に向けた筋道の提示、また優先順位の提示といったこともぜひ行ってください。戦術さえ定まれば、優秀なスタッフのみなさんがそれぞれそれ必要な行動を起こしてくれるようになります。
目標の提示や戦略・戦術の提示と、最初は特に丁寧な対応が求められますが、その後にスタッフに自律的に行動してもらうために、ぜひこうしたことも考えに入れていただいて組織づくりに取り組んでいただければと思います。
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