整形外科という科目は、高齢者が患者数の6割から8割を占める診療科目です。また、提供する主な治療が来院頻度の高い「リハビリテーション」
という特性から、患者様一人当たりの来院頻度が、月2.5~4回と非常に高いのが特徴です。そのため、他科目に比べて診療報酬が大きくなる傾向にあります。
一方、患者数・診療報酬が大きい分、医院運営に必要なスタッフ数も多くなり、医師1名の診療所でも、従業員が20名を超えることも多いのがもう一つの特徴として挙げられます。
また、充実したリハビリテーションを提供するためには、医院の敷地面積が最低でも70坪は欲しいということもあり、収入は他科目に比べて大きいが、その分、人件費・家賃などの固定費が大きくなります。
その結果として、最終的に残る利益額は、他の科目に比べても同じくらい、あるいは低くなることが多いのが実情です。
経営的目線を一番求められる科目であること
従業員数が多くなる、ということは必然的に、スタッフマネジメントにも注力せざるを得ません。5名などの少人数の組織であれば、常日頃、診療中に直接院長とスタッフが顔を合わせる機会も多く、マネジメントに苦労しません。
しかし、整形外科はリハビリテーションという別部門にも人を抱えることになるため、「同じ医院に勤めているけど、他の部署の人と、気づいたら一言も会話していない」という状況がまま起きています。
そういった状況を避けるために、主任会議や全体会議など、経営者側が意識的に、院長とスタッフ・スタッフ同士が顔を合わせて、会話をするような機会を作っていくことが求められます。
院長にとっては、診療だけに集中するだけでなく、組織運営という経営的目線が非常に求められる科目です。
求められる時流にあったクリニックの成長
医療費の増大が大きなテーマとして叫ばれる中、国の方向性として2018年の報酬改定で、医療・介護体制の大きな変革が行われる、と予想されています。
これまでもそうでしたが、診療報酬改定で一番影響を受けるのは「病院」です。在宅復帰と入院日数削減がメインテーマになるのでしょうが、これは見方を変えると「高齢者医療の再構築」と言うことができます。
このコラムの冒頭で「整形外科という科目は、高齢者が患者数の6割から8割を占める診療科目」とお伝えしましたが、実は、この医療・介護の変革の影響を、様々ある診療科目の中で最も受けるのが「整形外科」であることに間違いありません。
特に、「高齢者の維持期リハビリテーション」については、国の方針として「医療から介護へ」ということが明確に指針として打ち出されており、
ここへの対応は整形外科にとって避けて通れない経営課題です。
医療と介護両方をやる時代が来る
これから整形外科を診療科目として開業される先生は、開業時から「介護事業」を見据えた上で事業計画を作る必要があります。
整形外科は、医療保険だけでは生き残っていけない運命にある、と言えます。従来の開業スタイルである、機械による物理療法中心のリハビリテーションスタイル、で開業すると、失敗するとまでは言いませんが、発展性のない形での開業になると予想されます。
また、50坪程度のテナントで開業されるのも、その後の事業展開を考えると、開業後2、3年後に大きな足かせになる可能性があります。
船井総合研究所として今、整形外科診療所にご提案している形は、
①理学療法士・作業療法士による「運動器リハビリテーション」の充実
②理学療法士・作業療法士が5名以上居る場合の「通所リハビリテーションの開始」
の2点です。
この2つのポイントを抑えることが、患者さまから支持され、収益を上げ、利益を残せる医院経営を実現することに繋がると自信を持ってお伝えできます。
お手伝いをしているある先生がこのように仰っていました。
「開業医である私達は、この地域の患者様から逃げられない。それだけの責任がある。」
医師としての覚悟をひしひしと感じる、印象的な言葉だな、と心に残っている言葉です。
整形外科は、地域の高齢者の方の集う場所、拠り所としての役割が非常に強い科目です。
「先生やスタッフさんに親切にしてもらって、元気が出た。」
このような患者様アンケートを、お付き合いする医院でよく拝見します。
通常の診療に加えてや、スタッフマネジメント、はたまた介護保険まで。
他の科目に比べて、整形外科の経営者が頭を巡らせる要素は多いかもしれません。
ですが、患者様の生活に最も密着した存在として、地域医療を支える中心として、非常にやりがいのある科目なのではないか。そういう風に、コンサルタントとして、医院経営のお手伝いをしていて感じます。
整形外科の経営は簡単ではありません。ですが、上手に経営する道は間違いなくあります。
ぜひ、整形外科で開業を検討されている先生は、自信を持ってご開業していただきたいと願っています。