医院開業コラム
クリニックを経営する場合、看護師や医療事務といったスタッフの存在が欠かせません。そのため、開業に際してスタッフ面接を検討されている先生も多いのではないでしょうか。
必要な人材を確保するためには、スタッフ面接で応募者の情報をキャッチしつつ、採用基準に達しているかどうか見極めることが大切です。
今回の記事では、クリニックにおけるスタッフ面接の重要性を踏まえつつ、意識すべきポイントや聞くべき質問、面接での注意点について解説します。
- 1.クリニックにおけるスタッフ面接の重要性
- 2.クリニックのスタッフ面接のポイント
- 3.看護師や医療事務・受付の採用面接で聞くべき質問
- 4.面接における注意点・やってはいけないこと
- 5.日本調剤の開業サポート
1.クリニックにおけるスタッフ面接の重要性
診療方針や診療科を問わず、クリニック経営においてスタッフの質は重要です。雇っているスタッフの質が低い場合、医療ミスが原因で取り返しのつかない事態に陥ったり、患者さまの信頼を損なったりする可能性も高まります。
適切な採用を実現するためには、採用前のスタッフ面接を通して応募者の実像にしっかり迫ることも重要です。スキルやキャリアはもちろん、書類だけでは分からない人間性の部分も見極める必要があります。
クリニック側も応募者側も「採用のミスマッチは避けたい」と当然考えるので、スタッフ面接は万全の準備をして臨みましょう。
2.クリニックのスタッフ面接のポイント
スタッフ面接では、以下のようなポイントを意識する必要があります。
- 求める人物像を具体的にイメージしておく
- まずは履歴書をよく確認する
- 質問する内容を事前に用意しておく
- 服装など面接の内容以外も重要なチェックポイント
- 職歴は深掘りして質問する
- スタッフや第三者にも同席してもらう
- 応募者側も院長やクリニックを見極めていることを意識する
それぞれ詳細をまとめました。
2-1 求める人物像を具体的にイメージしておく
スタッフ面接を行う場合、自院の特徴や患者層に応じて、あらかじめ最適だと考えられる人物像をイメージしておくことが大切です。経験・スキル・人柄・勤務可能日時などを踏まえつつ、自院が求める人物像を明確化すれば、採用基準も定まります。
逆に人物像の具体的なイメージがないままスタッフ面接に臨むと、どのような人材を受け入れるべきか判断しにくくなるので、採用のミスマッチが起こる可能性も高まってしまいます。
スタッフ面接も含め採用活動には時間と費用がかかるため、貴重なリソースを浪費しないためにも人物像は固めておきましょう。
2-2 まずは履歴書をよく確認する
スタッフ面接を滞りなく進めたいなら、履歴書は面接前に送付してもらいましょう。面接当日に持参してもらう場合、履歴書の確認時間を思うように確保できず、細かい部分で見落としが発生しやすくなります。
前もって履歴書を入手したら、住所(自宅からクリニックまでのアクセス)や経歴、現職の有無といった基本的な情報をよく確認しておきましょう。特に経歴の空白期間はしっかり掘り下げるべきポイントなので、入念にチェックしたいところです。
また、誤字脱字の有無や証明写真のクオリティも見て、履歴書が適切に作成されているかどうか確認しましょう。
2-3 質問する内容を事前に用意しておく
履歴書の確認と併せて、質問する内容も事前に用意しておきましょう。面接しながら質問を考えると、採用可否に関わる重要事項を聞き忘れたり、面接自体がスムーズに進まなかったりする可能性も高まるためです。
また、質問する内容を共通化しておくことも大切です。志望動機・前職の退職理由・業務経験・働き方など、全員に確認すべき内容をあらかじめ考えておけば、他の応募者の回答と比較できるようになります。
さらに、各応募者の履歴書を確認した上で、それぞれ気になるポイントをピックアップし、面接で聞けるようにしておくことも大切です。
2-4 服装など面接の内容以外も重要なチェックポイント
応募者の多くは「面接官に良い印象を与えたい」「高評価を獲得したい」といった考えから、面接時に普段と異なる自分を装う傾向があります。そのため、質の高い人材を採用したいなら面接の内容以外にも意識を向けましょう。
例えば、身だしなみ・表情・言葉遣いなどは仕事に対する姿勢や患者さまの応対品質を推し量る判断材料になります。また、面接前後の電話やメールなど、直接顔を合わせない環境でのやり取りも要チェックです。
このようなポイントで違和感を覚えた場合、経歴やスキルの面で良いと感じても採用可否は慎重に検討する必要があります。
2-5 職歴は深掘りして質問する
クリニックが面接に向けて準備を進めるように、応募者もあらかじめ面接対策をしてくるので、一般的な内容の一問一答形式だと応募者の本質がなかなか見えてこないかもしれません。そのため、質問に対する回答で気になる点があれば、さらに質問を重ねてみましょう。
特に職歴にまつわる内容を深掘りすれば、応募者は想定外の質問も含め臨機応変に回答する必要があるため、より具体的な情報や本音を引き出すことが可能です。職場内のトラブルが原因で退職したケースもありますので、より正確な情報を入手できるよう意識しましょう。
2-6 スタッフや第三者にも同席してもらう
クリニックによっては院長自身がスタッフ面接に慣れておらず、1人だと採用可否の判断が難しいケースもあります。その際は業務内容を熟知した既存スタッフや家族、あるいはコンサルタントのような第三者に同席してもらうのもおすすめです。
例えば、男性医師が院長を務めている場合、奥さまや女性スタッフに同席してもらえば、面接において女性の目線も取り入れることができます。異性だと気付きにくい強みや問題でも、同性なら見抜ける可能性があるので、より的確に判断できるでしょう。
開業や経営に詳しいコンサルタントに相談すれば、面接についてのアドバイスを得られるのはもちろん、採用活動全般についてのサポートを受けられます。
2-7 応募者側も院長やクリニックを見極めていることを意識する
近年、医療業界は慢性的な人手不足が続いています。特に看護師の人手不足はかなり深刻で、ここ数年は求職者数より求人数が多い売り手市場となっており、優秀な人材ほど幅広い勤務先を選べるという状況です。
スタッフ面接では、応募者側も院長やクリニックの実態を見極めようとしているので、対等な立場で接する必要があります。横柄な態度をとって悪い印象を持たれると、せっかく内定を出しても辞退されてしまう恐れもあります。
また、採用のミスマッチを防ぐ意味でも、自院の経営理念・診療方針・強み・待遇などはきちんと伝え、フィットするかどうか見極めることを心がけましょう。
3.看護師や医療事務・受付の採用面接で聞くべき質問
スタッフ面接で聞くべき質問は、以下の通りです。
- 志望動機
- 前職の退職理由
- 経験のある業務や持っているスキル
- 仕事に対する姿勢や価値観
- 働き方(残業やパートの勤務日数など)
- 給与や待遇についての要望
- 応募者の人柄を推し量る質問
- 逆質問
ぜひ参考にしてみて下さい。
3-1 志望動機
志望動機は採用面接における定番の質問であり、クリニックも例外ではないので、応募者が既に回答を用意している可能性は高いといえます。もちろん、あらかじめ明確な回答を用意してハキハキと答えていれば、それはそれで評価できるポイントです。
しかし、自院に対する本気度を推し量るためには、以下のような質問を重ねて深掘りする必要があります。
- 他院ではなく自院を選んだ理由は何ですか?
- 自院のどのような部分に惹かれましたか?
- 経営理念や経営方針に共感できましたか?
実際には「家が近いから」「給与が高いから」といった点を応募者が重視するのを前提とした上で、上記のような質問にきちんと回答できるなら、本気度が高いと判断できるでしょう。
3-2 前職の退職理由
自院が求める人物像と異なる人材を採用してしまう事態を避けるためには、前職の退職理由も必ず聞いておきましょう。こちらも採用面接における定番の質問なので、事前に答えを用意していると考えられますが、表面的なことだけ聞いても意味がないため、きちんと深掘りしたいところです。
例えば、退職理由が「体力的に厳しかった」「人間関係に問題があった」という場合、同じ理由で辞めてしまう可能性もあるので詳しい事情を聞き出す必要があります。
また、短期間のうち転職を繰り返している応募者も要注意ですので、転職回数が多い理由を掘り下げて詳しく確認しましょう。
3-3 経験のある業務や持っているスキル
クリニックは少人数で運営するケースが多いので、できるだけスタッフの質を高める必要があります。そのため、経験やスキルもしっかり確認すべきですが、回答内容がただ単に「やったことがある」「対応できる」だけだと、どの業務をどこまで遂行できるのか分かりません。
経験やスキルの実態を確かめる場合、以下のような質問を重ねて掘り下げましょう。
- 前職でどのような業務を担当していましたか?
- 自院でどのようなスキルを活用できそうですか?
- パソコンはどの程度使えますか?
また、時間に余裕があれば面接と併せて担当業務の実技テストを実施するのも一案です。
3-4 仕事に対する姿勢や価値観
スタッフに長く働いてもらうためには、クリニックの経営理念や診療方針とマッチした人材を採用することも重要です。仕事に対する姿勢や価値観が合わない場合、人間関係でトラブルが生じたり、仕事のモチベーション低下につながったりする可能性もあります。
応募者の姿勢や価値観を確かめる際は、以下のような質問がおすすめです。
- 医療職を目指した理由は何ですか?
- 仕事で大切にしていることは何ですか?
- 患者さまからクレームがあった際、どう対応しますか?
また、前職での印象的なエピソードについて質問すれば、応募者の考え方を理解しやすくなります。
3-5 働き方(残業やパートの勤務日数など)
応募者によって希望する働き方は異なるため、採用前の段階ですり合わせることも大切です。実際、就業条件をきちんと把握できていない応募者はいるので、事前に認識のズレをなくさないと、トラブルを招いてしまう可能性もあります。
応募者から聞きづらい内容もあるため、面接官から以下のような質問を投げかけて確認しましょう。
- 月〇時間程度の残業はできますか?
- 土日診療の際にも出勤できますか?
- 毎月どれくらい勤務できますか?(パートの場合)
- 扶養の範囲内で働きたいですか?(パートの場合)
また、現職がある応募者に対しては「いつから働けますか?」という質問も必須です。
3-6 給与や待遇についての要望
給与や待遇は応募者にとって気になるポイントですが、一般的に悪い印象を与えるイメージが強いからか、面接でも遠慮して詳しく聞いてこない傾向があります。しかし、採用のミスマッチを防ぐためには、この辺りの条件もすり合わせが必要不可欠です。
面接官から以下のような質問をすることで、応募者も自分の要望を伝えやすくなります。
- 求人に掲載されている給与体系で問題ありませんか?
- 希望年収はどれくらいですか?
- 福利厚生の内容は問題ありませんか?
給与や待遇に関する認識を合わせておけば、早期離職を防止できる可能性も高まります。
3-7 応募者の人柄を推し量る質問
採用可否を判断するためには、応募者の人柄について理解することも大切です。優れた経験やスキルを持っていても性格に問題があると、他のスタッフや患者さまとの間でトラブルが起こりかねません。
応募者に自己紹介をお願いした上で、以下のような質問も投げかければ、人柄を推し量ることができます。
- 長所と短所は何ですか?
- 長所を仕事でどのように活かせますか?
- 短所をどのようにカバーしていますか?
また、面接冒頭でアイスブレイクの質問(趣味・休日の過ごし方など)も実施したいところです。話しやすい雰囲気を用意すると、応募者の人柄も伝わりやすくなります。
3-8 逆質問
面接官からの質問が一通り終わったら、最後に「何か質問はありますか?」と応募者へ問いかけましょう。逆質問の時間を設けると、応募者が働く上で大切にしていることやクリニックに対する疑問を把握できるようになります。
代表的な逆質問としては、以下のような内容があります。
- 入職までに勉強すべきことはありますか?
- どのようなスタッフが活躍していますか?
- 教育・研修はどのように進みますか?
一方、逆質問が何もない場合、その応募者は本気度が低い可能性もあります。また、給与や待遇に関する質問だけだったり、同じ内容を繰り返し聞いたりする応募者にも注意しましょう。
4.面接における注意点・やってはいけないこと
適切な採用にはスタッフ面接が欠かせませんが、応募者自身について質問する際は、ハラスメントや差別に注意しなければなりません。
厚生労働省では「採用選考時に配慮すべき事項」として、以下の14事項を例示しています。
- 本籍・出生地
- 住宅状況
- 家族
- 生活環境・家庭環境
- 宗教
- 人生観・生活信条
- 思想
- 購読新聞・雑誌・愛読書など
- 支持政党
- 尊敬する人物
- 労働組合・学生運動といった社会運動
- 身元調査
- 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断
- 本人の適性・能力に関係がない事項の把握(質問・応募書類)
また、上記事項に当てはまらなくても、応募者が回答しづらそうな内容をしつこく聞き出すことはNGです。トラブルに発展した場合、クリニックの評判が落ちてしまう可能性もあります。
5.日本調剤の開業サポート
クリニックの開業・経営を成功させるためには、看護師や医療事務など各スタッフの力を借りる必要があります。優秀な人材を雇いたいなら、クリニックが求める人物像をイメージしつつ、スタッフ面接で応募者のスキルや人間性を見極めることが大切です。
スタッフ面接を行う際は、あらかじめ聞くべき質問を用意した上で、応募者の言動や立ち振る舞いにも気を配りましょう。また、注意点やNG質問もきちんと把握しておきたいところです。
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