医院開業コラム
クリニック経営では、看護師や受付事務などのスタッフが欠かせません。開業時点から一緒に働いてくれる「オープニングスタッフ」は、院長にとって心強い味方です。開業に当たって、オープニングスタッフを採用する際のポイントが知りたい先生も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、採用活動で意識すべきことを踏まえつつ、クリニックのオープニングスタッフが辞める原因や採用の流れ、主な求人方法について解説します。
- クリニックのオープニングスタッフ採用で意識すべきこと
- クリニックのオープニングスタッフが辞める原因
- クリニックのオープニングスタッフ採用の流れとポイント
- オープニングスタッフの求人方法
- 開業サポートは日本調剤にお任せ
クリニックのオープニングスタッフ採用で意識すべきこと
クリニックのオープニングスタッフを採用する場合、以下のような点を意識しましょう。
- 看護師や受付・医療事務は人手不足で売り手市場
- メリットの多いオープニングスタッフは人気が高い
- オープニングスタッフが早期離職すると大変
それぞれ詳しく解説するので、参考にして下さい。
1-1 看護師や受付・医療事務は人手不足で売り手市場
近年、医療業界の就職・転職市場では、求人数が求職者数を上回る「売り手市場」が続いているので、慢性的な人手不足に陥っています。高齢化の進行や新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、医療自体のニーズが高まっているにもかかわらず、看護師や受付・医療事務といったスタッフが足りない状況です。
人手不足が続いていることにより、スタッフ一人ひとりの業務量や労働時間も増加傾向にあるので、激務による負担やストレスで辞めてしまうスタッフも見受けられます。そのため、医療業界全体で離職率が高まっていることも大きな問題です。
1-2 メリットの多いオープニングスタッフは人気が高い
深刻な人手不足でクリニックのスタッフ採用は難しい状況が続いている一方、オープニングスタッフの求人は人気を集めています。人気が高い理由は、働く上でメリットが多いためです。
オープニングスタッフはこれから開業するクリニックで勤務するので、新しくきれいな職場で働くことができます。また、スタッフ全員が同じタイミングで働き始めるため、他のスタッフと仲良くなりやすいのもメリットです。
さらに、一からクリニックをつくり上げるという仕事のやりがいもあります。開業を成功させた時の達成感は、オープニングスタッフならではのメリットです。
1-3 オープニングスタッフが早期離職すると大変
クリニックを運営するに当たり、各業務を担当してくれる看護師や受付・医療事務の存在は必要不可欠です。特に開業直後でバタバタしている時期にスタッフが辞めてしまうと、事業自体が成り立たないほど大きなダメージを受けてしまう可能性もあるので、適切な採用活動およびスタッフマネジメントが求められます。
実際、オープニングスタッフが一斉に早期離職してしまったというケースもあるようです。院長だけで全ての業務を担うことは実質不可能なので、このような事態に陥ったら一時休業せざるを得ない恐れもあります。
クリニックを休業すると売り上げも減るため、廃業につながるリスクも生じます。
クリニックのオープニングスタッフが辞める原因
オープニングスタッフが辞める場合、以下のような原因が考えられます。
- 院長の経営・マネジメント経験の少なさ
- クリニックの目標や理念が共有されていない
- 職場の人間関係
- 給与や勤務時間、休日などに関する不満
- 研修・教育体制が整備されていない
- 採用のミスマッチ
2-1 院長の経営・マネジメント経験の少なさ
開業医のほとんどは、どこかの病院やクリニックで勤務医として働いてから独立します。診療経験や臨床経験が豊富でも、経営・マネジメント経験を有する医師は少ないため、開業直後は思うように運営できず、スタッフが不満を抱えてしまうかもしれません。
院長は患者さまの診療に加えて、経理・労務管理・採用活動・集患対策といった幅広い業務に携わる経営者でもあります。そのため、勤務医の頃には習得できなかったスキルが求められるシーンも多いのです。
開業前から経営・マネジメント経験を得ることは難しいものの、それに関連するスキルは学んでおきましょう。
2-2 クリニックの目標や理念が共有されていない
開業直後はクリニックの経営目標や診療方針が固まっていないケースも多いので、院長とスタッフの間に温度差が生まれやすい傾向にあります。ライフスタイルや仕事との向き合い方が人それぞれ異なる以上、多かれ少なかれ温度差は発生するものですが、それが原因で意見が対立してしまうと、スタッフの離職につながりかねません。
対立の深刻化を防ぐためには、クリニックの目標や理念をスタッフにきちんと共有することが大切です。定期的にミーティングや面談を実施したり、意見交換の場を設けたりするなど、コミュニケーションの活性化を図りましょう。
2-3 職場の人間関係
クリニックを開業する場合、基本的に院長もオープニングスタッフも全員一緒のタイミングで働き始めるので、仲良くなるまでは人間関係の問題が生じやすいかもしれません。特に先述した温度差が広がると、院長や他のスタッフに対する不満が溜まりやすくなるため、辞める原因になりやすいでしょう。
職場の人間関係を改善するためには、日頃からコミュニケーションをとることはもちろん、マネジメントの推進や目標・理念の共有なども大切です。
2-4 給与や勤務時間、休日などに関する不満
「給与が仕事内容・業務量に見合っていない」「忙し過ぎて思うように休暇が取れない」など、労働条件に関する不満も離職率を高める原因です。特に開業直後は就業規則が固まっておらず、院長の裁量に基づいて労働条件を決めるケースも見受けられますが、労働関連の法律はきちんと遵守する必要があります。
採用時に伝えた労働条件と食い違いがある場合、スタッフは院長に対して不信感を抱くようになるため、書面などで明確化したいところです。
労働条件や就業規則の設定が難しい場合、コンサルタントや社会保険労務士などに相談することを推奨します。
2-5 研修・教育体制が整備されていない
スタッフのスキルレベルはもちろん、成長に対する意識や学びへの欲求にも個人差があります。研修・教育を一様に行うと各スタッフのニーズを満たせない可能性が高く、不満の原因になりがちです。
個々人に合った研修・教育体制を整えるためには、スタッフ一人ひとりと面談を実施した上で、それぞれに必要なサポートを提供する必要があります。例えば、資格取得を目指しているスタッフがいる場合、書籍購入費用やスクール参加費用を補助すると、モチベーション向上につながるため、離職も防止できるでしょう。
また、外部研修や院内での勉強会を行うのも一案です。
2-6 採用のミスマッチ
クリニックは開業前でもやるべきことが多いため、ギリギリのスケジュールで進めるケースも見受けられます。「とにかく開業に間に合わせたい」と急ぐあまり、適切な採用プロセスを踏まなかった場合、採用のミスマッチが発生しやすいので要注意です。
例えば、業務に必要なスキルレベルに達していない人材、診療方針や理念にそぐわない人材などをスタッフとして採用すると、早期離職の可能性が高いだけではなく、業務にも悪影響が生じかねません。
自院に合ったスタッフを採用するためには、書類選考や面接での見極めが重要となります。
クリニックのオープニングスタッフ採用の流れとポイント
オープニングスタッフを採用する際は、以下のようなポイントを押さえることが大切です。
- 採用活動は早めに進める
- 書類選考は慎重に
- 面接で応募者の適性をきちんと見極める
各ポイントの概要も詳しく解説します。
3-1 採用活動は早めに進める
先述の通り、医療業界は売り手市場が続いているため、クリニック同士で貴重な求職者を取り合う状況です。な人材を確保したいなら、採用活動も早めに進める必要があります。
採用活動で最初にやるべきことは、採用スケジュールの作成です。クリニックの開業日から逆算しつつ、求人募集~書類選考~面接~内定~研修までにかかる期間を考慮し、早い段階で具体的なスケジュールを立てましょう。
また、求人応募から始まる各プロセスもなるべくスピーディーに進めて、スケジュールに余裕を持たせることが大切です。
3-2 書類選考は慎重に
採用スケジュールを作成したら、求人を出して応募を待ちます。求職者から応募が来た場合、まずは書類選考でふるいにかけましょう。
書類選考では、履歴書や職務経歴書を通して経歴・転職回数・資格・志望動機などをチェックします。これらの情報は面接での重要な情報源にもなるため、細かい部分まで目を通したいところです。
また、誤字脱字や文章の読みやすさなど、応募書類の書き方もチェックする必要があります。
3-3 面接で応募者の適正をきちんと見極める
書類選考で気になる応募者をピックアップしたら、いよいよ面接に臨みます。
面接の主な目的は、応募者の適性を見極めることです。対面で直接話すことにより、人柄・言葉遣い・挙動・雰囲気など、書面では伝わらない特徴や性質もチェックできます。
また、応募書類の内容で気になるポイントがあれば、面接で掘り下げましょう。その結果、納得のいく回答が返ってくるかどうかが、採用価値を測るバロメーターになるからです。
例えば、短いスパンで何度も転職している場合、せっかく採用しても早期に辞めてしまう可能性があるので、転職の理由や経緯を聞き出す必要があります。
オープニングスタッフの求人方法
オープニングスタッフの求人方法としては、以下のようなものがあります。
- ハローワーク
- 求人サイト
- 人材紹介会社
- ホームページ・SNS
- 紙の広告媒体
- 知人や前の職場からのスカウト
それぞれのメリットや注意点についてまとめました。
4-1 ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)は、行政機関の一つです。全国各地に事業拠点が設置されている上、無料で求人募集ができるので、とりあえず登録しておくことをおすすめします。
また、ハローワークは国(厚生労働省)が運営していることもポイントです。労働関連の法律に違反している求人は取り扱っていないので、求職者にとっても安心感があります。
一方、ハローワークの利用者は減少傾向にあり、特に若年層の利用が少ないといわれています。幅広い人材を採用するためには、他の求人方法も併用すべきです。
4-2 求人サイト
パソコンやスマートフォンが普及していることもあり、最近はインターネット経由で求人を探している求職者が多いので、求人サイトも多数登場しています。もちろん、医療従事者向けの求人サイトもあるため、多くの人にアプローチしたいなら非常に有用です。
ただし、求人サイトによっては初期費用や掲載費用といった費用がかかる上、料金体系もそれぞれ異なります。サイトによってユーザー数やサービス内容にも差異があるので、費用対効果を踏まえて検討しましょう。
4-3 人材紹介会社
人材紹介会社のメリットは、クリニックの要望に合わせて人材を紹介してくれる点です。経歴・スキル・資格・雇用形態といった条件をもとに、人材紹介会社側で人材のマッチングを行うため、クリニック側は採用活動の手間をある程度省けるようになります。
ただし、紹介手数料がかかり、他の求人方法よりコストの負担が大きくなる可能性があります。会社によって変動しますが、採用する人材の年収の2~3割程度が相場です。
4-4 ホームページ・SNS
インターネットを使う求職者が多い現状、他の求人媒体から自院のホームページやSNSに流入してくる可能性は高いといえます。特にホームページは自院に関する情報を自由に掲載できる上、開業後の集患においても重要性が高いため、早めに構築しておきたいところです。
また、SNSは若い世代のユーザーが多く、情報の拡散力にも優れています。他の求人媒体より気軽にコミュニケーションがとれるため、求職者との距離を縮めるツールとしても有用です。
4-5 紙の広告媒体
今はインターネットでの求職活動が主流ですが、紙の広告媒体も使い方によっては求人に役立ちます。特に求人誌やフリーペーパーは掲載件数こそ多くないものの、近隣に住む求職者にアプローチしやすいので、一定の効果が見込めるでしょう。
紙面にホームページやSNSアカウントのQRコードを載せておけば、インターネット上の求人媒体との相乗効果も期待できます。
また、紙の広告媒体はクリニック開業の宣伝にもなるため、その目的を踏まえても検討の価値ありです。
4-6 知人や前の職場からのスカウト
知人や前に働いていた職場のスタッフに優秀な人材がいる場合、直接スカウトするのも一案です。人柄やスキルについてある程度知っている分、マッチングの信頼性が高くなります。
ただし、知人の勤務先や前の職場との間でトラブルが発生する可能性もあるため、スカウトのタイミングや労働条件には配慮することが大切です。また、スカウト後は上司としてその人に指示を出さなければならないため、今までと関係性が変わるかもしれません。
開業サポートは日本調剤にお任せ
クリニックを開業するに当たり、当初から一緒に働いてくれるオープニングスタッフは欠かせない存在です。きれいな職場で働ける、他のスタッフと仲良くなりやすいといったメリットから、比較的人気もあります。
一方、院長の経験不足やクリニック内の人間関係、労働条件に関する不満などを理由に、早々に辞めてしまうオープニングスタッフも存在します。貴重な人材を失わないためにも、離職の原因を踏まえた対策を講じたいところです。
日本調剤では、クリニック開業に関する幅広いサポートを無料で提供しています。求人広告・面接・採用についてのアドバイスはもちろん、就業規則作成のための社会保険労務士の紹介も可能なので、ぜひ一度ご相談下さい。
医院開業コラム一覧
経営コンサルタントや税理士、社会保険労務士、薬剤師など、各業界の専門家による医院開業に役立つコラムをお届けします。
PAGE TOP