クリニックの労務トラブルは退職時に表面化することが多く、退職の手順や、休職満了時の退職の定めについて、就業規則上にしっかりと規定しておくことで、リスク回避によりクリニックを守ることができます。

退職手続については、雇用契約書にも記載することになりますが、自己都合退職の場合、『1ヶ月から2ヶ月前までに退職の申し出』をしてもらうという規定を入れます。ただし、民法の2週間前申し入れというのを職員が主張する場合もありますが、新たな職員の採用・引継ぎ等、できるだけスムーズな退職手続を双方で行えるようにして頂きたいと思います。

退職手続の規定例
第〇条(退職の事前届出)
職員が退職しようとするときは、原則として退職希望日の2ヶ月以上前に退職願を提出しなければならない。

第〇条(退職)
職員が次の各号の一に該当するときは退職とする。
(1) 退職を願い出て受理されたとき、または退職願の提出後2か月を経過したとき
(2) 雇用期間が満了したとき
(3) 休職期間が満了したとき
(4) 定年に達したとき
(5) 死亡したとき

※上記の『(3) 休職期間が満了したとき』は、就業規則の休職規定に記載する、『休職期間が満了しても復職できないときは、原則として、休職期間満了の日をもって退職とする。』と関連した項目となり、昨今増えているメンタル不調による休職の対応を整備しておくことになります。

また、解雇というのは、労務管理上行わなくてもいい状態にあるというのがよいのですが、職員の問題などで、解雇を切り出さざるを得ない場合もあろうかと思います。そういった際にも、『就業規則の解雇規定に基づいて話をする』、というスタンスをとりながらも、一方的な解雇ではなく、合意退職(退職合意書取り交わし)につなげておくことが、解雇に伴うトラブル回避にもつながります。

職員との話しあう基準という意味でも、解雇規定の内容を精査しておく必要があります。

解雇規定に付け加えたい規定例
・勤務成績または業務能率が著しく不良で、勤務に適さないと認められるとき
・協調性がなく、他の職員と業務上の連携が適切に取ることができないと認められたとき
・素行不良で院内の風紀を乱し、そのため他の職員に悪影響を及ぼすなど、それが当院の発展を妨げると院長が判断したとき
・当院の秘密もしくは患者様のプライバシーを第三者に漏洩し、または漏洩しようとしたとき
・出勤を怠り、職責を果たさないとき
・試用期間中に職員として不適格と認められたとき
・規則に定める重大な懲戒解雇事由に該当するとき

第5回から8回まで、クリニックの労務管理における就業規則について説明をさせて頂きました。就業規則は院長のクリニック経営のお守りという意味でも、できるだけ開業準備段階から作成を頂き、職員との信頼関係の構築につなげ、円滑な労務管理に役立てて頂ければと考えております。