
クリニック開業の基礎知識
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医院開業コラム
耳鼻咽喉科は患者さまの年齢層が幅広い反面、集患のターゲティングや院内の環境づくりで迷いが生じやすいといえます。また、診療単価が低い傾向にあるため、診療の効率化や差別化を図ってカバーすることも大切です。
今回の記事では、耳鼻咽喉科の開業資金・平均年収・収支の内訳などを踏まえつつ、経営を成功させるためのポイントについて解説します。さらに、日本調剤での開業事例も紹介するので、ぜひご一読下さい。
開業を成功させるためには、立地条件が良く、クリニックに適した物件を選定することが最も重要です。日本調剤では、厳選された優良物件のご紹介や充実の開業サポートを無料で行っています。無料の会員登録で、ご希望条件に沿った新着物件をメールでおしらせいたします。
耳鼻咽喉科クリニックを新規開業する際に必要な開業資金は、おおよそ5,000万円以上となります。なお、この金額は比較的低予算で開業できるテナント開業を想定したものです。
拠点となる土地・建物を取得する場合、敷金・礼金・仲介手数料・設計費・施工費など全て合わせて3,000万円程度はかかってきます。好立地の物件を選んだり、外装・内装にこだわったりすると、さらに費用がかさむでしょう。
また、CT・聴力測定器・ネプライザー・炭酸ガスレーザーなど、耳鼻咽喉科の診療に用いる専用の医療機器は総じて高額であり、なおかつメンテナンス代も必要です。設備費だけで2,000万円程度はかかるため、経営規模や診療内容によっては予算を高めに見積もっておく必要があるでしょう。
厚生労働省の「第24回医療経済実態調査」によれば、個人医院の耳鼻咽喉科(全体)の損益差額は2022年時点で2,626万2,000円です。同年における診療科別の平均年収をランキング形式でまとめたので、以下も併せてご確認下さい。
一般病院で働く勤務医の平均年収が約1,461万円なので、開業によって大幅な年収アップが見込めるでしょう。
出典:厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」
厚生労働省の「第24回医療経済実態調査」をもとに、耳鼻咽喉科クリニックの収支を表形式でまとめたので、内訳をご確認下さい。
耳鼻咽喉科 | ||||||
金 額 | 構成比率 | 金額の 伸び率 |
||||
2021年(度) | 2022年(度) | 2021年(度) | 2022年(度) | |||
千円 | 千円 | % | % | % | ||
Ⅰ 医業収益 | 68,261 | 70,911 | 103.9 | 101.8 | 3.9 | |
Ⅰ’ (参考)「新型コロナウイルス感染症関連の補助金 (従業員向け慰労金を除く)」を除いた 医業収益(Ⅰ-3’) |
65,715 | 69,674 | 100 | 100 | 6 | |
1.入院診療収益 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | |
保険診療収益 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | |
2.外来診療収益 | 66,016 | 69,595 | 100.5 | 99.9 | 5.4 | |
保険診療収益 | 65,052 | 68,399 | 99 | 98.2 | 5.1 | |
3’.(再掲)新型コロナウイルス感染症関連の補助金 (従業員向け慰労金を除く) |
2,546 | 1,237 | 3.9 | 1.8 | -51.4 | |
Ⅱ 介護収益 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | |
Ⅲ 医業・介護費用 | 44,259 | 44,650 | 67.4 | 64.1 | 0.9 | |
1.給与費 | 19,573 | 19,934 | 29.8 | 28.6 | 1.8 | |
2.医薬品費 | 3,963 | 3,491 | 6 | 5 | -11.9 | |
3.材料費 | 1,154 | 1,528 | 1.8 | 2.2 | 32.4 | |
4.給食用材料費 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | |
5.委託費 | 3,056 | 2,795 | 4.7 | 4 | -8.5 | |
(再掲)給食委託費 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | |
(再掲)人材委託費 | 1,089 | 558 | 1.7 | 0.8 | -48.8 | |
(再掲)紹介手数料 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | |
6.減価償却費 | 3,765 | 3,309 | 5.7 | 4.7 | -12.1 | |
7.その他の医業・介護費用 | 12,749 | 13,592 | 19.4 | 19.5 | 6.6 | |
(再掲)設備機器賃借料 | 1,071 | 1,145 | 1.6 | 1.6 | 6.9 | |
(再掲)医療機器賃借料 | 459 | 483 | 0.7 | 0.7 | 5.2 | |
(再掲)水道光熱費 | 685 | 787 | 1 | 1.1 | 14.9 | |
Ⅳ 損益差額(Ⅰ+Ⅱ-Ⅲ) | 24,002 | 26,262 | 36.5 | 37.7 | - | |
(参考)「新型コロナウイルス感染症関連の補助金 (従業員向け慰労金を除く)」を除いた 損益差額(Ⅳ-3’) |
21,456 | 25,025 | 32.7 | 35.9 | - | |
Ⅴ 税金 | - | - | - | - | - | |
Ⅵ 税引後の総損益差額(Ⅳ-Ⅴ) | - | - | - | - | - | |
施設数 | 46 | - | - | - |
出典:厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」を基に作成
厚生労働省の「医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」によれば、耳鼻咽喉科を標榜するクリニックは2020年時点で5,783施設、施設の総数に対する割合は5.6%となっています。
そして、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、耳鼻咽喉科の医師数は2022年時点で9,381人です。構成割合は男性が2.9%、女性が2.8%であり、他科より男女差が小さくなっています。
また、患者さまの年齢層が幅広いことも耳鼻咽喉科の特徴です。親子連れからお年寄りまで、日々さまざまな患者さまが受診しています。
ただし、近年は人口減少や少子高齢化が進んでいる状況です。各地域の患者層にも影響すると考えられるので、今後は「誰にどのような診療を提供するか」という戦略設計がますます重要となるでしょう。
出典:
厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」
厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
耳鼻咽喉科クリニックの経営を成功させるためには、開業準備も含めて以下のポイントを実践する必要があります。
それぞれ詳細をまとめました。
クリニックの経営が成功するかどうかは、立地条件で決まるといっても過言ではありません。立地条件の良い物件を選べば、その分だけ集患しやすくなります。
先述の通り、耳鼻咽喉科は特に幅広い年齢層がターゲットとなるため、来院患者数の確保が重要です。駅から近い場所や市街地の中心部など、多くの人が集まりやすい立地が主な候補に入るでしょう。
幹線道路沿いの視認性の高い立地の物件や、多くのクリニックが集まる医療モールや医療ビルなどが有力な候補となります。
耳鼻咽喉科クリニックに必要な坪数は、おおよそ35坪程度です。経営規模や診療内容によっても変動するため、あくまで目安として押さえておきましょう。
内装に関しては、多くの患者さまの来院が想定されるため、待合室のスペースは広めに確保したいところです。患者さまの年齢層も幅広いので、必要に応じてキッズスペースを設けたり、バリアフリー設計を取り入れたりすることも検討しましょう。
また、ネプライザーコーナー・検査用防音室・処置室・CT検査室など、耳鼻咽喉科の診療に関連する部屋や設備も欠かせません。医療機器の設置スペースやスタッフの動線も考慮しつつ、適切な内装設計プランを策定しましょう。
耳鼻咽喉科は他科と比べると、診療単価が低い傾向にあります。安定した収益を得るためには、多くの患者さまを効率的に診療する工夫が必要不可欠です。
例えば、順番待ちシステムや診療予約システムを導入すれば、一人当たりの診療時間をきちんと確保しつつ、患者さまの待ち時間を短縮できるようになるため、混雑の解消や患者満足度の向上にもつながります。
また、スムーズに診療を進めるためには、院内の動線や業務の作業フローも見直すことも大切です。スタッフの動きを阻害する要素があると、業務効率が悪くなるだけではなく、モチベーションの低下にもつながりかねません。
耳鼻咽喉科クリニックの経営安定化を図るためには、できるだけ多くの来院患者数を確保する必要があります。インターネットやスマートフォンが広く普及している現在では、医療業界もWebマーケティングが主流になってきています。特にホームページの有無はクリニックの信頼性にも影響するので、必ず作成しておきましょう。
一方、耳鼻咽喉科では幅広い年齢層の患者さまがターゲットとなるため、オフライン広告も活用したいところです。
例えば、高齢者人口の多い地域で開業する場合、日常的にインターネットを利用していない患者さまも多いと想定されるので、ポスティング・新聞広告・折込チラシ・看板広告などが効果を発揮します。
競合医院が多い地域では、患者さまに自院を選んでもらうために特色のある診療を提供することも大切です。
例えば、以下のような専門性の高い治療は一定のニーズが見込めるので、導入を検討する価値が高いといえます。
耳鼻咽喉科の場合、特に鼻づまり・花粉症・中耳炎などを抱える患者さまが多いので、これらを短期間で治療できる日帰り手術は注目されています。
自院ならではの診療を提供すれば、他院との差別化を実現できるので、診療単価アップにもつながるでしょう。
患者さまが抱える疾患によっては、内科・呼吸器内科・小児科といった他科との連携が必要になるケースもあります。開業前に近隣のクリニックと緊密な関係を構築しておけば、自院から患者さまを紹介できるだけではなく、逆に紹介を受けることも見込めるでしょう。
また、自院の診療コンセプトや医師の専門性によっては、耳鼻咽喉科と併せて内科や小児科を標榜するのも一案です。診療科が増えた分だけ管理や環境づくりは大変になりますが、より多くの患者さまに対応できるので、収益や地域貢献においてメリットがあります。
耳鼻咽喉科は気道(鼻・のど)の疾患や問題を取り扱う性質上、他科より院内感染対策の重要性が高いといえます。院内感染を防ぐためには、患者さまの医院滞在時間や他者との接触機会を減らすことが大切です。
例えば、Web問診システムや自動精算機を導入すれば、スタッフと接触せず問診や会計を行うことができます。感染防止用の隔離スペースを設けたり、空気清浄機を設置したりするのも効果的です。
小竹向原耳鼻咽喉科クリニックは、2017年12月に小竹向原メディカルセンターで開業されたクリニックです。
院長の岸田 覚先生は、患者さまと一対一で向き合って診察できるよう、開業医の道に進まれました。「開業する街に愛着が沸くか」という点を重視しつつ、患者さまの利便性も考えた結果、駅近で他院と連携しやすい医療モール物件を選ばれたとのことです。
実際に物件が決まるまで、先輩が開業した耳鼻咽喉科クリニックに勤務されていましたが、そこで積み重ねた経験が一番の準備になったそうです。
小竹向原耳鼻咽喉科クリニック 岸田 覚先生|メディカルセンター.JP
耳鼻咽喉科クリニックを開業する場合、診療単価の低さがどうしてもネックとなります。
診療の効率化を図ったり、多様な集患方法で幅広い年齢層にアプローチしたりするなど、来院患者数を増やすための対策に注力したいところです。
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