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医院開業コラム
脳神経外科(脳外科)は高額な医療機器を用いることもあり、開業にあたって設備投資がかさみがちです。初期費用が増大すればするほど、開業後の利益が圧迫されてしまうため、事前にきちんと計画を立てる必要があります。脳神経外科の特性や強みを活かして事業戦略を検討しましょう。
この記事では、脳神経外科クリニックの開業資金や平均年収などを踏まえつつ、経営を成功させるためのポイントについて解説します。
脳神経外科クリニックを新規開業するためには、おおよそ6,000万円以上の開業資金が必要です。CTやMRIといった高額な医療機器を最初から導入する場合、1億円を超えるケースも珍しくありません。
土地・建物の取得費は地域によって変動しますが、敷金・礼金・仲介手数料・内装工事費など全て合わせると、トータルで3,000万円以上かかる可能性があります。設備費も導入する医療機器によって差がありますが、脳神経外科なら7,000万~8,000万円は見ておく必要があるでしょう。
さらに、開業時の設備投資がかさんだ場合、損益分岐点を超える(黒字になる)まで時間を要するため、相応の運転資金も用意しなければなりません。少なくとも6ヶ月から1年分の運転資金として、3,000万円以上を確保しておくと望ましいでしょう。
脳神経外科の平均年収に関する公的な統計データは存在しませんが、参考情報として厚生労働省の「第24回医療経済実態調査」のデータを紹介すると、個人医院全体の損益差額は2022年時点で2,900万1,000円となっています(個人医院の損益差額は、開設者の報酬だけでなく、建物や設備の改善のための内部資金にも充てられます)。
このことから、クリニック経営が安定すれば、3,000万円以上の年収が見込める可能性があります。
一方、病院勤務医の平均年収は約1,400万~1,500万円です。個人医院全体の損益差額と1,500万円程度の差があるので、開業医として成功すれば、勤務医時代から大幅な年収アップが見込めるでしょう。
出典:厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」
脳神経外科の収支に関する公的なデータもありませんが、参考情報として個人医院全体の収支の内訳を紹介するので、ぜひご確認下さい。
全 体 | ||||||
金 額 | 構成比率 | 金額の 伸び率 |
||||
2021年(度) | 2022年(度) | 2021年(度) | 2022年(度) | |||
千円 | 千円 | % | % | % | ||
Ⅰ 医業収益 | 88,898 | 92,913 | 102.1 | 101.1 | 4.5 | |
Ⅰ’ (参考)「新型コロナウイルス感染症関連の補助金 (従業員向け慰労金を除く)」を除いた 医業収益(Ⅰ-3’) |
86,761 | 91,679 | 99.7 | 99.7 | 5.7 | |
1.入院診療収益 | 1,537 | 1,526 | 1.8 | 1.7 | -0.7 | |
保険診療収益 | 1,332 | 1,408 | 1.5 | 1.5 | 5.7 | |
2.外来診療収益 | 82,613 | 87,581 | 94.9 | 95.3 | 6 | |
保険診療収益 | 73,973 | 79,001 | 85 | 85.9 | 6.8 | |
3’.(再掲)新型コロナウイルス感染症関連の補助金 (従業員向け慰労金を除く) |
2,137 | 1,233 | 2.5 | 1.3 | -42.3 | |
Ⅱ 介護収益 | 271 | 266 | 0.3 | 0.3 | -1.8 | |
Ⅲ 医業・介護費用 | 62,756 | 64,178 | 72.1 | 69.8 | 2.3 | |
1.給与費 | 22,898 | 23,486 | 26.3 | 25.5 | 2.6 | |
2.医薬品費 | 14,278 | 14,267 | 16.4 | 15.5 | -0.1 | |
3.材料費 | 2,471 | 2,619 | 2.8 | 2.8 | 6 | |
4.給食用材料費 | 51 | 44 | 0.1 | 0 | -13.7 | |
5.委託費 | 3,367 | 3,680 | 3.9 | 4 | 9.3 | |
(再掲)給食委託費 | 23 | 24 | 0 | 0 | 4.3 | |
(再掲)人材委託費 | 694 | 701 | 0.8 | 0.8 | 1 | |
(再掲)紹介手数料 | 20 | 22 | 0 | 0 | 10 | |
6.減価償却費 | 4,205 | 3,998 | 4.8 | 4.3 | -4.9 | |
7.その他の医業・介護費用 | 15,486 | 16,084 | 17.8 | 17.5 | 3.9 | |
(再掲)設備機器賃借料 | 1,134 | 1,155 | 1.3 | 1.3 | 1.9 | |
(再掲)医療機器賃借料 | 757 | 755 | 0.9 | 0.8 | -0.3 | |
(再掲)水道光熱費 | 861 | 1,025 | 1 | 1.1 | 19 | |
Ⅳ 損益差額(Ⅰ+Ⅱ-Ⅲ) | 26,412 | 29,001 | 30.3 | 31.5 | - | |
(参考)「新型コロナウイルス感染症関連の補助金 (従業員向け慰労金を除く)」を除いた 損益差額(Ⅳ-3’) |
24,276 | 27,768 | 27.9 | 30.2 | - | |
Ⅴ 税金 | - | - | - | - | - | |
Ⅵ 税引後の総損益差額(Ⅳ-Ⅴ) | - | - | - | - | - | |
施設数 | 881 | - | - | - |
出典:厚生労働省「第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」を基に作成
厚生労働省が公表している「医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によると、脳神経外科を標榜するクリニックは2023年時点で1,881施設、施設の総数に対する割合は1.8%です。
また、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によれば、脳神経外科の医師数は2022年時点で7,516人、うち診療所に従事する医師は1,168人となっています。
これらのデータを踏まえると、脳神経外科は他科より競合クリニックが少ない診療科といえます。しかし、実際の診療内容に関しては、神経内科や整形外科と競合する要素もあるため、自院ならではの強みをアピールして差別化を図ることが大切です。
出典:厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」
厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
脳神経外科クリニックの経営を成功させるためには、以下のポイントを実践する必要があります。
それぞれ詳細もまとめました。
脳神経外科の診療では、CTやMRIを用いた画像診断が欠かせません。しかし、これらの医療機器は非常に高額であり、なおかつ設置する際は敷地面積の広い物件を確保しなければならないので、どうしても設備投資がかさんでしまいます。CTやMRIを導入する場合、価格交渉を重ね、綿密な資金計画に基づいて購入を検討することが重要です。
また、都市部では画像診断センターが多く存在するため、近隣にある場合は連携を検討すると良いでしょう。患者さまに画像診断センターで検査を受けてもらうことで、自院での高額な機器導入を避け、設備投資を大幅に削減できます。
開業地の周辺環境や資金状況を踏まえ、機器導入と外部施設との連携のどちらが適切かを検討することが、クリニック経営の安定につながります。
頭痛を引き起こす原因となる「生活習慣の乱れ」「ストレス」「姿勢の悪化」は、どれも現代人に当てはまりがちな問題です。特に最近はスマートフォンやパソコンの使用率が高まっていることもあり、日頃から頭痛に悩んでいる人が増えている可能性があります。
脳神経外科クリニックの経営を安定させたい場合、現代人にニーズの高い片頭痛・群発頭痛・緊張性頭痛などの診療に対応するのも一案です。さまざまな頭痛に対して適切な診断処方・服薬指導を行いつつ、頭痛外来の魅力をアピールするようなマーケティングを行えば、より多くの集患が見込めるようになります。
頭痛外来の設置によって収益アップできれば、クリニック経営の安定につながります。
脳神経外科クリニックを開業する場合、通常の診療に加えて運動器リハビリテーションや通所リハビリテーションを実施すれば、収益アップを実現できる可能性が高まります。
リハビリに対応するためには、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士といったリハビリ専門スタッフが必要ですが、スタッフが増えると当然ながら人件費も上がってしまいます。また、リハビリ用のスペースや設備も欠かせないため、さらなる設備投資が必要です。
しかし、リハビリは継続的に来院が見込めるため、再来患者数や患者満足度が向上すれば、やがて収益がコスト増加分を超えるケースも期待できるでしょう。あらかじめ収支の予測や目標収益を確認した上で、リハビリへの対応を検討したいところです。
安定したクリニック経営を実現したいなら、開業地域にある他の医療機関との連携を強化することも大切です。
例えば、自院の診療機能を活かし、他科と患者さまを紹介し合うことができれば、お互いに収益アップへとつながります。病診連携・診診連携はマーケティング費をかけない集患対策といえるのです。
また、地域の基幹病院の手術室とスタッフを借りた上で、自院の患者さまの手術を実施できる体制を構築すれば、患者数の確保につながります。基幹病院側はプラスアルファで収益を得られ、患者さまは設備の整った環境で手術に臨めるというメリットがあるため、まさに一石三鳥といえるでしょう。
脳神経外科クリニックでCTやMRIを導入する場合、1億円以上の開業資金がかかる可能性もあります。一方、MRIやCTのような機器については、その重量による床の補強や磁場環境への配慮、防護工事の範囲設定など多岐にわたる調整が求められます。さらに搬入経路の確保や空調・電気容量の検証も欠かせません。
日本調剤では、このような課題を踏まえた物件情報をご提供するとともに、資金計画・設備計画の提案、診療圏調査、スタッフ採用など開業を成功させるための一貫したサポートを行っております。脳神経外科クリニックの開業をご検討でしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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