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医院開業コラム

【応招義務】(第1回:正当事由)

行政書士法人横浜医療法務事務所の岸部宏一と申します。
本稿では、クリニックでの日々のお仕事が法律上はどのような位置づけにあり、先生ご自身にどのような権利と義務を伴うものであるかについて事例に即して解説してまいります。
日々、「目の前の患者さんと向き合うことで手一杯」とおっしゃるのもよくわかりますが、(ちなみに筆者は元MRです)経営者である以上は個々の行為にどのようなリスクが内在しているかを大まかに把握しておき、その上での経営判断をお願いしたくペンを執った次第です。

【応招義務】(第1回:正当事由)

「(医師法)第十九条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」

上記条文により医師に課された義務(通称:応招義務)自体は医学部時代からよくご存じのことと思いますが、この連載をお読みいただいている先生ご自身に、今この瞬間に課せられている「義務」の正体を正確にご存じでしょうか?
例えば今、先生がご自身のクリニックのお昼休みで、午後の診療開始20分前であるか、それとも一日の診療が終了して少し離れたご自宅に戻られ、2本目のビールを飲みながらこの連載を眺めて居られるか、また急に来院した患者さんではあるが、それが先生の専門領域の疾患で通院中の患者さんであるか、逆に全く見ず知らずの外国人が道端で倒れているのを発見したか、といった個々の状況によってその義務の範囲が違ってくるであろうことは、概ねご想像の通りです。

ではどのような場合であれば「正当な事由」として診療を断ることが許されるのか?また断ったことによるペナルティは?等につき具体的に考えてまいりましょう。
医師法に限らず、国会で制定された「法律」は極めて大雑把な表現しかしておらず、個別の解釈については内閣が定めた政令、その法律を所管する省庁が定めた省令、所管する省庁の中の所管する部局長等が発する解釈通知や事務連絡等、または裁判になった場合の判例等によるのが我が国の法体系と
なっており、「応招義務」の範囲ひとつをとってみてもこれらを総合的にみて判断する他はありません。ひとつの決まった答えがどこかに書いてあり、それだけを見ればすべてが解決するわけではない、というのは様々なエビデンスある情報の中から個々の患者さんごとに最適な結論を探す、という先生のお仕事と似ているかもしれませんね。

またこの問題については、昭和22年の現医師法施行以降に何度となく問題になり、また近年では「医師の働き方改革」等によっても解釈が微修正されています。
直近では「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応の在り方等について(医政発1225第4号/令和元年12月25日 各都道府県知事宛 厚生
労働省医政局長/以下本稿では「通達」という)により整理されていますので、お時間があるときにご一読されることをお勧めします。

https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000581246.pdf

1.診療の求めを拒否できる「正当事由」

通達では、「最も重要な構成要素は、患者について緊急対応が必要であるか否か(病状の深刻度)」であるとし、診療を拒否することの正当事由として概ね以下のように整理しています。

(1)緊急対応の必要性による整理

①緊急対応が必要な場合(病状の深刻な救急患者等)
・診療を求められたのが診療時間内・勤務時間内である場合
医療機関や医師の専門性、設備等の問題、他の医療機関での医療提供の可能性等を総合的に勘案し、事実上診療が不可能もしくは他院での診療の方が患者の
利益になると判断される場合。(ただし、その判断は「医師」が直接判断することが求められる)
・診療を求められたのが診療時間外・勤務時間外である場合
応急的な処置をとることが望ましいが、求められる対応の程度は低く、また拒否したとしても直接の法律上の責任を問われることはない。

②緊急対応が不要な場合(病状の安定している患者等)
・診療を求められたのが診療時間内・勤務時間内である場合
原則として、患者の求めに応じて必要な医療を提供する必要がある。ただし、緊急対応の必要がある場合に比べて、医療機関・医師の専門性や設備状況等、
他の医療機関等による医療提供の可能性のほか、患者と医療機関・医師の信頼関係等も考慮して緩やかに解釈される。
イ 診療を求められたのが診療時間外・勤務時間外である場合
即座に対応する必要はなく、診療しないことは正当化される。ただし、時間内の受診依頼、他の診察可能な医療機関の紹介等の対応をとることが望ましい。
緊急性がない場合は診療を断っても良いが、緊急を要する場合は時間外であってもできる限りの対応をすることが望ましい、という極めて常識的な結論に
帰結することになりますが、その緊急性の判断については「医師」にしか許されないところにはご留意をお願いしたいところです。

(2)個別の事情による整理

①患者の迷惑行為
それまでの診療の間での患者による迷惑行為(悪質なクレームを続ける等)により信頼関係が破綻している場合、新たな診療を行わないことは正当化される。
②医療費の不払い
以前の診療で支払い能力があるにもかかわらずあえて支払っていない場合にその後の診療を拒否する等の対応は正当化されるが、単に「支払っていない」のみでは正当化されない。また、医学的治療を目的としない自由診療については、支払い能力を有しない患者を診療しないことは正当化される。
③他の医療機関の紹介等
医療機関の機能から他の医療機関を受診する方が適切と判断する場合は、紹介等も原則として正当化される。
④外国人等への差別的取り扱い
患者の年齢、性別、国籍、宗教等を理由に診療をしないことは正当化されないが、言語が通じない、宗教上の理由で診療行為が著しく困難である等の場合には正当化される。また特定の感染症(または疑い)のみを理由に診療しないことは正当化されないが、感染症法上で1類又は2類の場合は例外となる。

これらについても前述の「緊急性」と併せて解釈することになりますが、医師の総合的な判断により診療を断る場合は、受診歴のある患者であればカルテのどこかに(最近の電子カルテには「メモ」等の機能が充実しているようです)、また受診歴のない患者であっても何らかの記録を残し、万一、後日に責任を問われることがあっても正当事由があったことを説明できるよう、客観的記録を時系列で残しておいて頂くことをおすすめします。

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