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院内処方は違法? 医師法22条・薬剤師法19条における注意点
医院開業コラム
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2025.10.09 2025.10.09
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メディカルセンター.JP
診察室で薬を受け取れる「院内処方」は便利ですが、合法に実施するには医師の自家調剤の例外を除き、以下の3条件があります。
この基準は、電子処方箋の院内処方情報登録のプレ運用開始後も変更されていません。電子処方箋導入後であっても上記の3条件を満たさない場合は違法です。
例えば、薬剤師不在の院内調剤は従来どおり「無資格調剤」であり、保険医療機関の指定取り消しや刑事処分に発展するリスクは変わりません。
本記事では、院内処方を巡る法的根拠、例外規定の範囲、違反事例、そして電子処方箋開始後の院内処方に関して解説します。
院内処方は、医師の診察後に処方箋が発行され、その処方箋を同一医療機関の薬剤師が調剤し、患者へ直接交付する一連の流れを指します。
診察・処方・調剤・交付が同じ建物の中で完結するため、患者は薬局へ移動せずに済み、急性疾患や小児のケースでは大きなメリットとなります。一方で、医療機関側には厳格な法的3要件が課されています。
医師が薬を投与すると判断した瞬間、処方箋交付義務が発生します。例外は「患者が明確に不要と申し出た場合」「応急手当」など限られた場合のみであり、口頭指示や電子カルテの印刷物で代替する行為は違法と判断される可能性が高いです。
薬剤師以外の者による調剤は原則禁止であり、違反すると無資格調剤となり薬機法84条の刑事罰(3年以下の懲役・300万円以下の罰金)まで想定されます。事務員が軟膏混合の一部工程を補助しただけでも調剤行為の疑いと報道された事例があるため、現場では業務範囲を明確に線引きする必要があります。
病院、または常勤医3名以上の診療所は専属薬剤師を置かなければなりません。外来の場合でも「取扱処方箋の数75につき、薬剤師1人」が標準となっており、基準未満の場合は都道府県知事が是正命令を出します。これを無視したまま保険請求を続けると、保険医療機関指定の取り消しや新規指定の制限を受ける可能性が高いため注意が必要です。
上記の内容に関して詳しく知りたい方は、以下の参考資料をご参照ください。すべて厚生労働省の資料です。
処方箋の交付等に関連する法令の規定
調剤業務のあり方について
医療法に基づく人員配置標準について
「令和5(2023)年社会医療診療行為別統計の概況」によると、2022年度の院外処方率は80.2%に達し、院内処方は20%程度と報告されています。残る院内処方の多くは、以下の理由により継続されていると考えられます。
院内処方を維持するには、①薬剤師人件費、②調剤室の設備・在庫保管スペース、③監査体制の構築が不可欠であり、外来ボリュームが少ない診療所では収支が赤字になりやすい点は否めません。
さらに電子処方箋のプレ運用が開始された現在でも薬剤師配置義務は据え置かれているため、人的コストに加えてDX投資まで必要になります。こうした背景から、基本的には院外処方が行われ、院内処方は地理的・時間的制約を補完する手段へと位置づけが変化しているといえるでしょう。
院内処方のメリット、デメリットに関して詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
院内処方のメリット・デメリットと院外処方との比較
院内処方は患者の利便性と医療的な安全性を両立させることも可能ですが、以下の3要件を満たさなければ重い罰則が課されます。
自院の外来規模、薬剤師確保の見通し、地域薬局との連携状況を精査した上で、「原則は院外、必要最小限で院内」という運用ポリシーを策定する姿勢が求められるのではないでしょうか。
医師法22条は「医師は、診察の結果、投薬・注射などが必要と判断したときは、患者または看護者の求めに応じて処方箋を交付しなければならない」と定めています。
この規定は院外処方を前提としたものではなく、院内処方であっても同様に適用される点が重要です。処方箋は薬剤師が行う調剤の唯一の法的根拠となるため、カルテのコピーや口頭指示は処方箋の代替にならず無効と見なされます。
ただし、患者が処方箋不要を明言した場合は、処方箋の交付義務が免除されます。そのほかの理由に関しては、医師法22条に以下のとおり示されています。
第二十二条 医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当たつている者に対して処方箋を交付しなければならない。ただし、患者又は現にその看護に当たつている者が処方箋の交付を必要としない旨を申し出た場合及び次の各号のいずれかに該当する場合においては、この限りでない。
一 暗示的効果を期待する場合において、処方箋を交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合 二 処方箋を交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合 三 病状の短時間ごとの変化に即応して薬剤を投与する場合 四 診断又は治療方法の決定していない場合 五 治療上必要な応急の措置として薬剤を投与する場合 六 安静を要する患者以外に薬剤の交付を受けることができる者がいない場合 七 覚醒剤を投与する場合 八 薬剤師が乗り組んでいない船舶内において薬剤を投与する場合
処方箋を交付せず調剤した場合、医師・薬剤師ともに「無処方箋調剤」で法令違反が適用されるほか、保険請求分が返還命令の対象になることもあります。とりわけ院内処方では一連の流れが院内で完結するため、監査の目が届きづらく、適切な手順から逸脱しやすい点に注意が必要です。
つまり医師法22条は、院外・院内を問わず患者の安全と調剤の透明性を担保することが目的としていることが分かります。院内処方を継続する医療機関は、処方箋発行手順の形骸化が起きていないか定期的に点検し、法令違反にならないよう十分に注意する必要があります。
薬剤師法19条は「薬剤師でない者は、調剤してはならない」と規定し、調剤行為を薬剤師の独占業務として位置付けています。
ここでいう「調剤」とは、①処方箋の内容を確認し(疑義照会を含む)、②医薬品を取りそろえ、③必要に応じて粉砕・一包化・無菌調製などの調整を行い、④患者に適した容器・用法で交付し、⑤薬歴を記録するまでの一連のプロセスを指します。
薬剤のピッキングや分包といった部分的な作業であっても、医師や薬剤師が最終監査をしないまま実施すれば調剤行為と見なされる点に注意が必要です。
調剤は薬剤師の独占業務として定められていますが、医師や歯科医師が自己の処方箋により自ら調剤することは認められていることが、薬剤師法第19条に記載されています。
自家調剤は「診察→処方箋発行→調剤→交付」までを医師自身が連続して完結する場合にのみ容認されるもので、受付職員や看護師に作業を委ねることはできません。さらに、医師が調剤した薬剤であっても名称・用量・使用期限・注意事項などの表示義務は薬剤師と同等に課されます。
医師の自家調剤を行っている場合は、専属薬剤師を雇用するか、院外処方に切り替えるほうが法的リスクを大幅に抑えられます。ただし、専属薬剤師を配置する場合は、人件費をはじめとしたさまざまなコストがかかる点には注意が必要です。そのため、実務上は院外処方に切り替えるほうが現実的な選択肢となるでしょう。
無資格調剤は「薬剤師が一瞬でも不在の時間帯に、非薬剤師が調剤工程の一部を担う」だけで薬剤師法19条違反として摘発されます。以下の3事例はいずれも患者被害は報告されていないものの、新聞報道・行政処分・指定取り消し・逮捕にまで発展しました。
(15年4月発覚)
参考 くすぶり続ける「無資格調剤」問題 厚労省通知はなぜ出された?
これらの事例が示すとおり、無資格調剤は件数が少なくても重大な法令違反と認定され、保険指定の取り消しや刑事罰により、経営基盤を揺るがすほどの影響があります。院内処方を継続する医療機関は、薬剤師法19条の趣旨を再確認し、調剤工程の分担と監査体制を徹底することが不可欠です。
院内処方を合法に維持するには、医療法施行規則で定められた「薬剤師配置標準」を常時クリアし、都道府県への配置・変更届を適切に行わなければなりません。
昭和23年から約50年間、病院薬剤師は「調剤数80ごとに1人」という極めて単純な基準で運用されてきました。しかし、平成10年の医療法施行規則改正で下記の新基準に改定されました。なお、改正当初に行われていた経過措置はすでに廃止されています。
※取扱処方箋とは、院内で調剤する外来処方のみを指し、院外処方箋はカウントしません。
薬剤師の配置基準が改正された理由は、調剤技術の自動化で単純作業が減少した一方、服薬指導・薬歴管理・チーム医療で病棟業務が急増したため「患者・処方ベースが実態に合う」ためでした。
薬剤師を所定数確保しているだけでは不十分です。適切な薬剤師数が確保できている状態を「届け出て、維持」して初めて適法となります。配置基準を満たした後に医療機関が届出を行い、届け出た内容をチェックするために保健所・都道府県による監督が行われます。
新規開設や薬剤師の増減があれば10日以内に保健所へ届出を行う。処方枚数の根拠資料を保存することが求められます。
標欠があった場合は、所轄保健所は立入時に改善を指導。欠員が続き標準の1/2未満が2年以上続くと増員命令→業務停止命令が可能です。
適正に薬剤師数を確保し、届け出を行うためには、以下のチェック項目を実施できる体制を院内で構築する必要があります。
薬剤師配置基準は「患者の安全と医療品質を担保する最低ライン」だといえます。院内処方を継続する医療機関は、70人・75枚ルールを軸に常勤+非常勤体制と電子証跡で「欠員ゼロ」を常時達成する必要があります。
基準を満たせない場合は、院外処方への移行や調剤委託を含む抜本的な体制見直しが避けられないでしょう。
参考
医療法施行規則の一部を改正する省令等の施行等について(薬剤師の人員配置基準の見直し)
病院における薬剤師の配置基準について
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2023年に稼働した電子処方箋管理サービスは、全国の医療機関・薬局がオンラインで処方・調剤・服薬情報を共有する「医療DXの基幹インフラ」と位置づけられています。
2025年1月(令和7年1月)からは院内処方情報を電子処方箋管理サービスへ登録できるプレ運用が始まりましたが、厚生労働省の関係通知には薬剤師配置義務を緩和する条文は一切ありません。したがって、医療法施行規則第6条の6で示されている「病院または常勤医3名以上の診療所は専属薬剤師を置かなければならない」という規定は、電子処方箋下でもそのまま適用されます。
電子処方箋が導入されると、処方・調剤・服薬管理の情報がクラウド上の「電子処方箋管理サービス」にて連携されます。医師・患者・薬局にてデータが送受信され、診療に活用する流れは、以下のとおりです。
1.医療機関 → 電子処方箋管理サービス 患者が電子処方箋の利用に同意した上で、医師が処方を確定すると、電子署名付きデータがインターネット経由で電子処方箋管理サービスに送られます。
2.患者 → 薬局を選択 患者は「マイナ保険証」または「健康保険証と6桁の引換番号」を薬局で提示します。
3.薬局 → 調剤結果を登録 薬局はオンラインで処方内容を取り込み、薬を準備します。調剤結果と服薬情報を電子処方箋管理サービスに記録します。
4.医師 → 次の診察で確認 次回来院時、医師は電子処方箋管理サービスから患者の服薬状況や残っている薬の量をすぐに確認でき、より的確な処方が可能になります。
なお、院内処方を続けるためには、以下の環境を整備する必要があります。
これらに加えて、バーコード在庫管理や分包機の自動連携も整備しておかなければ、データ整合性を担保できず監査リスクが高まります。
また、電子処方箋は紙を電子化しただけであり、調剤そのものを自動化する仕組みではありません。薬剤師法19条・医療法施行規則の規定が変更されていない以上、薬剤師不在の院内処方は無資格調剤として処分対象になります。
電子処方箋を導入するには、電子署名対応レセコン/電子カルテ、オンライン資格確認端末、電子処方箋管理サービスと連携する電子薬歴システムなどの導入費用が必要です。さらに、常勤薬剤師の人件費も加算されれば、費用はさらに増大します。
院内処方を行ってきた医療機関が、外来処方箋を院外に回すだけで、以下のメリットがあります。
このように、費用対効果は院外処方に圧倒的なメリットがあります。特に外来処方枚数が日平均40を下回る小規模診療所では、投資費用の回収が非常に困難であると容易に想像できます。
そのため、電子処方箋を導入し院内処方を残す医療機関は、以下の限定的な場合に限られるのではないでしょうか。
必要な医薬品の即時交付が必要
患者が院外で調剤を受けられない
無菌調製・レジメン管理を院内完結する必要がある
上記のケースを除く一般外来主体の診療所の場合は、電子処方箋を導入した上で院内調剤を残すことは、費用対効果の面から現実的ではないと考えられます。
院内処方を合法に行うには、医師の自家調剤の例外を除き、以下の3要件を満たす必要があります。
電子処方箋が導入されても法的枠組みは維持され、例外規定の拡大予定も示されていません。医療DXにより業務効率化が進む今こそ、原則は院外処方とし、院内処方は薬剤師確保と法令遵守を徹底できないなら継続しない方向性が賢明だと考えられます。
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