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医療法人は売却できる?承継・M&Aの仕組みと出口戦略の考え方
医院開業コラム
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2026.05.25 2026.05.25
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医療法人化を検討する先生の中には、「将来、医療法人は売却できるのか」「法人化すると出口がなくなるのではないか」と不安を感じる方がいるかもしれません。
株式会社のように株式を売却して経営権を移すことはできませんが、医療法人には、出資持分譲渡や事業譲渡、合併など、承継・M&Aに近い形で事業を引き継ぐ選択肢があります。
重要なのは、制度の前提を正しく理解した上で、開業や法人化の段階から「将来どのように引き継ぐ可能性があるのか」を視野に入れて設計しておくことです。
本記事では、医療法人の売却・承継の基本的な仕組みから、主なスキーム、注意点、そして将来の売却を見据えた出口戦略の考え方までを解説します。
医療法人について調べると、「医療法人は売却できない」「法人化すると出口がない」といった情報を目にすることがあります。結論からいえば、医療法人は株式会社のような形では売却できませんが、承継・M&Aに近い形で事業を引き継ぐことは可能です。
この違いを正しく理解するためには、まず医療法人の制度上の前提を押さえる必要があります。
医療法人は、株式会社とは根本的に性質が異なります。最大の違いは、営利を目的としない非営利法人であることです。
株式会社は、株式を発行し、その株式を売買することで、経営権や資本を第三者に移転できます。一方、医療法人には株式という概念が存在せず、利益配当を目的とした運営も認められていません。
そのため「株式を第三者に売却して経営権を移す」「株価を基準に企業価値を評価する」といった、一般企業のM&Aで用いられる考え方は、医療法人にはそのまま当てはまりません。
「医療法人は売却できない」といわれる背景には、株式売却という分かりやすい手段が使えないという制度上の制約があります。
医療法人の中には、「出資持分あり医療法人」と呼ばれる形態があります。この出資持分は、株式に近いものと誤解されがちですが、法的な性質は株式とは異なります。
出資持分は、あくまで法人解散時の残余財産の分配権や、一定の議決権といった権利を持つものであり、法人そのものを自由に売買できるものではありません。
そのため、出資持分を第三者に譲渡する場合でも、一般企業の株式譲渡のように単純に話が進むわけではなく、社員構成や定款、行政手続きなどを踏まえた慎重な対応が求められます。
なお、出資持分あり医療法人は2007年4月の医療法改正以降、新規設立できません。
こうした制度の違いから、「医療法人には出口がない」「法人化すると身動きが取れなくなる」という印象を持たれるかもしれません。
特に、開業や法人化を検討している段階では、「株式会社のように売れない」「非営利だから価値が評価されない」「後継者がいなければ終わり」といったイメージが先行しがちです。
しかし実務上は、医療法人にも複数の出口が存在します。株式売却という形ではないものの、出資持分譲渡、事業譲渡(診療所・病院の譲渡)、医療法人同士の合併、解散・清算といったスキームを通じて、承継やM&Aに近い形で事業を引き継ぐことは可能です。
医療法人をめぐる議論で混乱が生じやすいのは、「売却=株式売却」という前提で考えてしまうことにあります。
確かに、医療法人は株式を売ることはできません。しかし、実務の世界では「事業を誰かに引き継ぐ」「経営権を移す」という目的を達成するために、制度に合った手法が用いられています。
そのための重要なポイントは、下記のとおりです。
医療法人は、営利法人ではないからこそ制限もありますが、その一方で、設計次第では将来の承継やM&Aという選択肢を残すことも可能です。
「売却できるか、できないか」という二元論ではなく、どのような形で引き継ぐことが現実的なのかという視点で整理することが、医療法人の出口を考える第一歩といえるでしょう。
医療法人は株式会社のように株式を売却することはできませんが、実務上は、いくつかのスキームを組み合わせることで承継・売却に近い形を実現しています。
ここでは、医療法人の売却・承継で代表的に用いられる主な方法を整理します。
出資持分譲渡は、持分あり医療法人において代表的な承継・売却スキームです。医療法人の出資者が保有する出資持分を、第三者に譲渡することで、実質的に経営権を移転します。
出資持分譲渡は、一般企業における株式譲渡に近い役割を果たしますが、両者は同一ではありません。
出資持分は株式とは法的性質が異なり、自由な売買が前提となっているわけではないため、
といった点を踏まえた対応が必要になります。
それでも、法人そのものを引き継ぐ形を取りやすいという点から、条件が整っている場合には、比較的スムーズな承継が可能な方法といえます。
事業譲渡は、医療法人が保有する診療所や病院などの事業を、個別に譲渡する方法です。法人格自体は残したまま、診療所や病院単位で事業を引き継ぐことができます。
このスキームの特徴は、出資持分の有無に関わらず利用できる柔軟性にあります。持分なし医療法人であっても、事業譲渡を用いることで、第三者への承継が可能です。
一方で、事業譲渡では、
といった対応が必要となるケースが多く、実務負担が大きくなりやすい点には注意が必要です。柔軟性が高い反面、事前準備と調整が重要なスキームといえます。
医療法人同士の合併や分割は、法人を統合・再編することで事業を引き継ぐ方法です。
合併では、権利義務を包括的に承継できるため、診療体制や事業を一体的に引き継ぎたい場合に用いられます。一方、分割は、医療法人が複数の事業を持っている場合に、特定の事業だけを切り出して承継する際に活用されます。
これらのスキームは、
といった特徴があり、時間と労力を要しやすい方法です。そのため、規模拡大や法人再編を目的とするケースで選択されることが多くなります。
解散・清算は、医療法人を終了させ、資産や負債を整理する方法です。第三者への承継ではなく、事業終了を前提とした出口といえます。
清算では、
などについて、医療法人特有のルールが適用されます。そのため、単純に「閉じれば終わり」というものではなく、専門的な対応が求められます。
解散・清算は、ほかの承継スキームと比較検討した上で、やむを得ない場合や承継先が見つからない場合に選ばれることが多い方法です。
医療法人の売却・承継には複数のスキームがありますが、どの方法が適しているかは法人の状況や目的によって異なります。
ここでは、代表的なスキームごとに、向いているケースと注意点を整理します。
出資持分譲渡は、出資持分あり医療法人において使われる、株式譲渡に近い承継手法です。法人そのものを引き継ぐ形となるため、診療体制を大きく変えずに承継したい場合に選ばれやすい方法です。
出資持分譲渡のメリット・デメリット
内容
・事業継続性が高く、患者さま・スタッフへの影響を抑えやすい
・事業譲渡に比べると手続きが比較的シンプル
・出資持分の評価が難しく、調整に時間を要することがある
・持分あり医療法人に限定される
向いているのは、「法人をそのまま引き継ぎたい」「診療体制を極力変えたくない」ケースです。一方で、リスクの洗い出しや事前調査(デューデリジェンス)が重要になります。
事業譲渡は、診療所や病院などの事業単位で切り出して承継できる方法です。法人格は残したまま、中身の事業だけを譲渡するため、持分の有無に左右されず柔軟に使える点が特徴です。
事業譲渡のメリット・デメリット
・引き継ぐ事業範囲を限定でき、リスクを切り分けやすい
・不要な資産や負債を承継せずに済む
・契約や雇用関係を個別に引き直す必要がある
・実務負担が大きく、準備期間が長くなりやすい
向いているのは、「特定の診療所だけを引き継ぎたい」「法人全体を譲るのは難しい」ケースです。柔軟性が高い反面、実務面の負担は大きくなります。
合併や分割は、医療法人同士で事業を統合・再編する際に用いられるスキームです。
規模拡大や法人再編を目的とする場合に選択されることが多くなります。
合併・分割のメリット・デメリット
・診療体制や事業を一体的に引き継げる
・再編や規模拡大に適している
・関係者(役員・スタッフ)の調整が複雑
・小規模な承継には向かない
向いているのは、「医療法人同士で統合したい」「事業再編を前提に成長を目指す」ケースです。個人開業医の引退目的だけでは選ばれにくい傾向があります。
清算は、売却や承継ではなく、法人を終了させる方法です。第三者に事業を引き継ぐ前提ではないため、位置づけはほかのスキームと異なります。
清算のメリット・デメリット
・法人関係を整理し、完全に終了できる
・残余財産の扱いや税務整理が必要
・患者さま、スタッフの継続性は確保できない
清算は最終手段であり、「事業を引き継ぎたい」「診療を継続したい」場合の第一選択にはなりにくい点を理解しておく必要があります。
医療法人の売却・承継は、スキームの選択によって必要となる行政手続きや実務負担が大きく異なります。重要なのは、「売却できるかどうか」だけで判断するのではなく、許認可・税務・人の引き継ぎまで含めて、全体像を設計することです。
ここでは、医療法人の売却・承継を検討する際に、特に注意しておきたいポイントを整理します。
医療法人の承継でもっとも注意が必要なのが、許認可や保険医療制度との関係です。
特に事業譲渡の場合、医療機関指定や開設手続きは原則として引き継がれません。新たに開設者としての手続きが必要となり、スケジュールや診療継続に影響が出る可能性があります。
一方、合併や法人承継の場合でも、都道府県など行政の認可が前提となるため、認可申請のタイミング、審査期間、追加資料の提出などが、全体スケジュールを左右します。
また、診療報酬の取り扱いもスキームによって異なります。承継の方法によっては、請求主体や算定の継続性に影響が出る場合もあるため、事前に整理しておくことが不可欠です。
医療法人の売却・承継では、税務面の影響がケースごとに大きく異なります。
特に出資持分譲渡の場合、出資持分の譲渡によって譲渡益課税が発生する可能性があります。「課税されるのが法人なのか個人なのか」「どのタイミングで、どの税目がかかるのか」は、スキームの構造や契約内容によって変わります。
医療法人の税務は、一般企業のM&Aと比べても個別性が非常に高い分野です。誤った前提で進めると、想定外の税負担が生じることもあるため、早い段階から税理士を交えた検討が前提となります。
医療法人の承継は、書類や契約だけで完結するものではありません。スタッフや患者さま、診療圏といった「人と地域」の引き継ぎが、実務上の成否を左右します。
特に事業譲渡では、雇用契約や患者さまとの関係が自動的に引き継がれるわけではありません。スタッフが継続して勤務できるかどうかは、診療の継続性や患者さまの離脱に直結します。
承継方法によっては、スタッフへの説明や同意の取り方、引き継ぎ期間の設け方、診療体制の移行方法を慎重に設計しないと、現場に混乱が生じるリスクがあります。医療は人に依存する事業である以上、「人の承継」を軽視することはできません。
医療法人の売却・承継を検討する際に注意したいのが、一般企業M&Aの常識をそのまま当てはめないことです。
医療法人は非営利法人であり、株式売却のような自由な取引は制度上認められていません。また、「行政の関与が強い」「許認可が事業継続の前提になる」「出資持分の有無が選択肢を大きく左右する」といった点で、一般企業とは前提条件が大きく異なります。
「会社ならこうできる」という発想で進めてしまうと、制度上の壁に直面する可能性があります。医療法人特有のルールを前提に、現実的な手法を検討することが重要です。
医療法人の売却や承継は、思い立ってすぐに実行できるものではありません。許認可や税務、関係者との調整が必要となるため、実際には数年単位での準備が前提となるケースがほとんどです。 そのため、売却や承継を「引退が見えてから考えるもの」と捉えてしまうと、選択肢が大きく制限されてしまう可能性があります。将来の自由度を確保するためには、開業や法人化の段階から出口を意識しておくことが重要です。
結論からいえば、売却・承継の検討は「早すぎる」くらいでちょうどよいといえます。
医療法人の承継には、
といったプロセスが伴い、短期間で完結するものではありません。
特に、開業直後や法人化を検討している段階では、日々の運営や立ち上げに意識が向きがちです。「将来どう終えるか」をあらかじめ想定しておくことで、選べる選択肢は大きく変わります。
今すぐ売却する予定がなくても、
といった方向性だけでも整理しておくことが、後々の判断を楽にします。
医療法人を売却・承継しやすくするためには、事業としての評価がどこで決まるのかを理解しておく必要があります。
まず重視されるのが、収益の安定性です。一時的な高収益よりも、黒字が継続しており、収益構造が分かりやすい法人のほうが評価されやすくなります。
また、診療圏の安定性、患者基盤の継続性といった要素も、買い手や承継先の判断に大きく影響します。特定の個人の知名度や属人的な要素に依存しすぎている場合、引き継ぎ後の不安要素と見なされることもあります。
さらに重要なのが、人材体制です。医師やスタッフが引き継ぎ後も継続して勤務できる体制が整っているかどうかは、承継の可否を左右する大きなポイントになります。
医療法人を「売却しやすい状態」にできるかどうかは、開業時や法人化時の設計に大きく左右されます。
例えば、
といった点は、将来選べる出口戦略を制限する要因になり得ます。
また、
といった点も、承継のしやすさに直結します。
開業時の設計があいまいなままだと、後から整理する際に大きな負担が生じることも少なくありません。言い換えれば、開業時の判断次第で「売れる法人」になるかどうかが決まるともいえます。
売却を目的にする必要はありませんが、将来の選択肢を狭めない設計を意識しておくことが、結果的に経営の安心感につながります。
医療法人は営利法人ではないため、株式会社のように株式を売却することはできません。
しかし、それは「承継や売却という出口が存在しない」という意味ではありません。実務上は、出資持分譲渡や事業譲渡、合併などを通じて、事業を引き継ぐ選択肢を確保することが可能です。
それでもなお、「医療法人には出口がない」と感じられやすいのは、設立時に承継を想定していないケースが多いためです。開業や法人化の段階では、どうしても立ち上げや日々の運営に意識が向き、将来の引き継ぎまで具体的に考えられていないことが少なくありません。
将来の承継・売却の可否は、医療法人をどのように設計しているかに大きく左右されます。
特に重要となるのが、以下のような要素です。
これらは、将来選べる出口戦略を制限する要因になり得ます。
また、財務や契約、人材が特定の個人に強く依存している場合、承継は一気に難しくなります。経営や診療が属人化している法人は、引き継ぎ後の安定性が見えにくく、第三者から敬遠されることもあります。
このように考えると、承継できるかどうかは、法人の将来価値そのものと捉えることができます。承継可能性の高い法人は、それだけ将来の選択肢が多く、経営の自由度も高いといえるでしょう。
後継者不在や医師の高齢化は、医療業界全体が抱える構造的な課題です。こうした背景を踏まえると、承継や売却は一部の医療法人だけの問題ではなく、多くの開業医がいずれ向き合うテーマといえます。
開業段階から承継を意識して設計しておくことで、
といった選択肢を、将来にわたって残しやすくなります。
また、収益構造が分かりやすく安定していることや、診療圏・患者基盤が確立されていること、引き継ぎ可能な人材体制が整っていることは、事業価値の向上にも直結します。結果として、経営の安心感が増し、日々の判断にも余裕が生まれます。
医療法人の承継・売却は、法務・税務・許認可が複雑に絡み合う分野です。制度の理解不足や自己判断によって進めてしまうと、後から修正が難しい問題を抱えるリスクがあります。
そのため、開業時や法人化を検討する段階から、専門家の知見を取り入れることが重要です。
早めに相談しておくことで、
といったメリットがあります。
特に、「今すぐ売却する予定はない」という方ほど、早期の情報収集が重要です。将来の承継・売却を「その時になって考えるもの」ではなく、長期的な経営設計の一部として捉えることが、医療法人を安定して運営していくための重要な視点といえるでしょう。
医療法人は営利法人ではないため、株式会社のように株式を売却することはできません。しかし実務上は、出資持分譲渡、事業譲渡、合併などのスキームを通じて、承継・売却に近い形で事業を引き継ぐことは可能です。
それにもかかわらず「医療法人には出口がない」と誤解されやすいのは、制度の前提やスキームの違いが十分に整理されないまま、株式売却の発想で捉えられてしまうためです。
重要なのは「売却できるか・できないか」ではなく、将来の承継・売却を見据えた設計ができているかという視点です。収益構造の安定性、診療圏・患者基盤、人材体制、契約や財務の整理状況は、承継のしやすさと事業価値を大きく左右します。
また、医療法人の承継は許認可や税務、関係者調整を伴うため、思い立ってすぐに実行できるものではありません。だからこそ、開業・法人化の段階から「将来どう引き継ぐか」を意識し、早めに情報収集と準備を進めることが、選択肢を狭めない最善策になります。
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