医院開業への道

小児科を開業するためのポイント|開業資金や収入アップのコツも解説

提供日本調剤株式会社 コラム提供者のアイコン

コラムのサムネイル

小児科開業を成功させるには、小児科独特の要件を満たすクリニック作りが重要です。ターゲットがファミリー層であること、患者が子どもであること、患者自身ではなく親御さんに決定権があることなど、他の診療科目にはあまりない特性を考慮する必要があります。

また、新型コロナウイルスの感染拡大により高まるリスクに、院内環境やマニュアルを合わせることも必要でしょう。
この記事では、小児科開業を検討する医師のため、開業を成功させるための立地や院内環境作りのポイント等についてお話しいたします。

小児科の年収|開業医と勤務医の差は?

まず、クリニックレベルでの小児科平均収入について、令和元年に実施された「第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」をもとに解説します。小児科一般診療所(個人)の平成30年度の平均年収は約3,068万円です。これは、外来診療収益やその他の医業収益から、給与や医薬品費、設備賃借料などの経費を引いた損益差額となります。[注1]

小児科の平均収入は、内科や精神科、皮膚科など、入院診療収益のない診療科目の平均収入データの中で、最も高い数字です。また、小児科の平成29年度の平均収入は約2,946万円となっており、平成30年度にかけて数字が上向いています。以上は医療法人を含まない条件での平均値ですが、傾向を読み取ることはできるでしょう。

一方で、小児科医個人の平均収入は1,000万円前後といわれています。これは、日本小児科学会による「第2回全国小児科医師現状調査報告書」での収入アンケートの回答から概算した数字です。診療所の平均収入とは差があることから、勤務医では収入アップに限界があるといえます。より高い収入を得るには、開業がおすすめです。[注2]

[注1]厚生労働省:第22回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/22_houkoku.html
[注2]公益社団法人日本小児科学会:第2回全国小児科医師現状調査報告書
https://www.jpeds.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=16

小児科開業に適した物件

小児科は、他の診療科目より広いスペースが必要です。小児科の坪数平均は30〜40坪といわれています。子どもの患者には必ず親御さんが同伴することや、ベビーカーで来院するケースが多いことがスペースを必要とする理由です。また、感染防止のため隔離室の必要性が高いことも理由として挙げられます。

一方、詳細は後述しますが、小児科を開業する場所は駅前より住宅街のほうが向いている傾向にあります。高額な駅前テナントを借りずに済むため、物件によってはかなり費用を削減できるでしょう。じっくり比較検討できるよう、候補物件を多く持つサポート企業を選ぶのがポイントです。

小児科開業を成功させるためのポイント

<立地は子どもの多い住宅街がおすすめ>
開業立地は、駅前よりも子どもを持つファミリー層の多い住宅街がおすすめです。体調の良くない子どもを連れて公共交通機関を利用するのは労力がかかります。患者以外に小さな子どもがいれば、多くの場合その子も同伴する必要があるでしょう。そのため、親御さんは徒歩や自転車で行ける近場か、自家用車で来院できることを条件にクリニックを探す傾向があります。

物件を選定する際は、複数人で来院できる十分なスペースを確保した上、駐車場や駐輪場も確保できるかどうかがポイントです。住宅街での開業は、地元密着型の医院というイメージ戦略も展開できます。しかし、住宅街であればどこでもよいわけではありません。

競合となる小児科の存在や、現時点での見込み患者数を念頭に置いての検討が必要です。今後の見込み患者数は少子化の影響を受けることも考慮しましょう。また、周辺地域以外へもアピールできるよう、幹線道路沿いに広告を掲載するなど、人目につきやすいような工夫を行うことも重要です。

<ベビーカーでもスムーズに入れる建物を選ぶ>
テナントとして入居する場合は、ベビーカーの入りやすい1階か、2階以上になる場合は、広めのエレベーターのある物件を選びましょう。複数のベビーカーがエレベーターに乗る場合があります。また、単独の場合でも、内部が広ければエレベーター内でベビーカーの向きを変えることができ、後ろ向きに降りる労力を軽減できます。

戸建て・テナントを問わず、間口はできるだけ広く取り、院内をバリアフリーにすることも重要です。院内に大きな段差があるとベビーカーを畳まねばならず、来院への心理的抵抗が生まれます。入り口にスロープを作る、院内の段差をなくし廊下の幅を広く取る、ベビーカーのまま入れる場所をできるだけ増やすといった対策を講じるのがポイントです。

ベビーカーで院内のどこまで入れるのかを、ホームページなどに記載することも集患に有効といえます。可能であれば診察室まで入れるようにすると、親御さんはベビーカーから目を離さずに済むため安心です。

<口コミがカギ!効果的なWebマーケティングを>
患者が子どもということは、クリニックを実際に選ぶ親世代に若い人が多いということです。若い親世代はインターネットの情報を非常に重視します。そのため、ホームページの情報を充実させたり、クリニックのSNSでリアルタイムの情報発信をしたりといった積極的なWebマーケティングが集患において重要です。

さらに、インターネットでの露出を高めるには、検索結果ページに表示されるリスティング広告や、医院の情報が集まるポータルサイトへの登録が有効です。ポータルサイトの多くは、実際に来院した人の口コミを投稿できます。医師の対応や医院の雰囲気に対する感想など、親御さんがポータルサイトやSNSで発信した口コミは拡散されるため、非常に高い宣伝効果があります。

セミナーや動画配信も集患につながる方法です。子どもの症状への対応方法や、具体的な治療の流れなど、ホームページに掲載しきれない細かい情報を伝えることができ、他院と差別化できます。

<待ち時間を少なくする工夫をする>
親御さんは忙しいため、待ち時間と満足度には大きな関連性があります。また、子どもが長時間順番を待てないことや、院内感染を危惧する心理も待ち時間の短縮が求められる理由です。待ち時間短縮の代表的な方法は、診療を完全予約制にすることです。

しかし、会計時の対面予約や診療時間中の電話予約を受けると、業務が増えて受付スタッフの負担が大きくなります。完全予約制を採用するなら、ネット予約システムや順番管理システムの導入をおすすめします。こうしたシステムでは、診療受付だけでなく、患者が混雑状況や順番が近づいたことなどもオンラインで確認できるため、電話受付よりはるかに利便性が高くなります。

予約時にオンラインで問診票も記入できるとさらに効率的でしょう。待合室で問診記入が終わるのを医師が待つことで発生する時間ロスや、問診記入をスタッフがサポートする労力などを削減できます。

<子どもが喜ぶ院内デザインを心掛ける>
待ち時間を快適に過ごせるよう、待合室に子どもが喜ぶ工夫を施すこともポイントです。子どもがクリニックに行くのを嫌がると、親御さんには移動や診療の労力に加え、子どもを家から連れ出す労力もかかってしまいます。

親御さんの負担を軽減できるかは、集患に大きく関わる部分です。子どもがクリニックに対してポジティブなイメージを持てるよう、院内デザインや環境を工夫しましょう。

壁面を動物園や水族館風にデコレーションする、家具を丸みのあるポップなデザインにするなどが代表的な方法です。壁や家具の角にクッション材を付ける、ドアノブを高い位置に配置するなど、子どもの安全面にも配慮したデザインであるとベターといえます。

また、子どもの注意を引くようなコンテンツをデジタルサイネージで配信すると、親御さんが待ち時間に子どもをなだめる負担も軽減できます。さらに、絵本やおもちゃを置いて待ち時間を充実させる、カプセル入りのおもちゃなど診療後のご褒美を用意するなども有効な方法です。加えて、子どもがリラックスできる対応をスタッフに教育することも求められます。

<院内感染防止対策の徹底>
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、感染症への警戒意識が非常に高まっているため、院内感染防止対策をいっそう強化する必要があります。有効な方法の一つは、感染症が疑われる患者と、予防接種や乳幼児健診で来院する患者の動線を分けることです。

具体的には、入り口や待合室を2つ用意し両者が接触しないようにする、使用できるトイレを分ける、診療の時間帯を分けるなどの方法があります。

発熱のある患者のため、院内に隔離室を設けるのもおすすめです。医師の診療や会計まで隔離室で完結できるシステムを作って周知すると、熱のある子どもの親御さんは周りを気にせず来院でき、予防接種や乳幼児健診を目的とする方も安心です。

待合室が混み合う場合は一時的に車での待機を依頼するなど、密を避ける方法も事前に検討しましょう。子ども用のおもちゃや絵本は貸し出し方式にし、返却されたら都度消毒することも重要です。エレベーターのボタンや家具、受付カウンターなども定期的に消毒しましょう。

防接種や乳幼児健診への対応も

予防接種や乳幼児健診への積極的な対応姿勢もポイントです。例えば、赤ちゃんは生後2カ月頃から数種類の予防接種を受けるため、最初の予防接種で集患できれば継続して来院する可能性が高くなります。予防接種の種類と対応月齢を記載したスケジュール表を配布すると、来院促進に役立つでしょう。また、インフルエンザなど季節によって必要性が高まる予防接種は、ホームページやSNSで呼びかけるのも効果的です。

予防接種や乳幼児健診など、自治体の業務委託や費用助成を受けるには、多くの場合医師会への加入が必須となります。医師会への加入は、地域のクリニックとのコミュニケーションが取れる点もメリットです。情報共有がスムーズにでき、診療での連携にも役立つと思われます。

この記事をシェアする

  • facebookのアイコン
  • twitterのアイコン