医院開業コラム
クリニックを開業する場合、初期の集患対策として「内覧会」を行うと良いスタートダッシュを切りやすくなります。中長期的な経営にも良い影響を与えられるため、ぜひ検討したいところです。
その一方、内覧会の必要性や効果を高めるポイント、基本的な進め方など知りたい先生も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、内覧会のメリットを踏まえつつ、成功させるためのポイントや準備の流れ、内覧会当日の進め方や注意点について解説します。
- なぜ内覧会を行う必要があるのか?メリットを解説
- 内覧会を成功させるためのポイント
- 内覧会の準備
- 内覧会当日の進め方
- 開業後の内覧会が効果的なケースも
- 内覧会での注意点
- 日本調剤は開業前の内覧会もサポート
なぜ内覧会を行う必要があるのか?メリットを解説
クリニックの内覧会は行わなくても問題ありませんが、開業前に実施すると近隣住民にクリニックの存在を認知させることができます。
自院のPRは広告やSNSでも可能ですが、内覧会は来場者に対して診療内容や設備を直接アピールできる点が大きなメリットです。疑問点をその場で解消したり、院長やスタッフの顔・人柄を知ってもらったりすることで、より効果的な集患プロモーションを実現できます。
さらに、開催までの過程でクリニックの理念を共有しつつ、スタッフとの関係を強化できる点もメリットです。
また、来場者と直接コミュニケーションをとる機会も得られるので、将来的な患者さまの診療ニーズも把握できるようになります。
内覧会を成功させるためのポイント
リニックの内覧会を成功させるためには、以下のポイントが重要です。
- 必ず院長も参加する
- 目的を明確して医院全体で共有する
- 来場者とのコミュニケーションと関係構築
- 自院の専門性や強みをきちんと伝える
- プロの業者やコンサルタントに相談する
それぞれ詳細をまとめました。
2-1 必ず院長も参加する
内覧会を行う場合、スタッフや業者に全て任せっきりにすることはせず、必ず院長も現地まで足を運んで参加しましょう。最初から経営を安定させるためには、院長と来場者がしっかりコミュニケーションをとって、集患につなげることが大切です。
クリニックおよび診療の主体はあくまで院長であり、どんな先生なのか実際に会ってみたいと訪れる人も多いでしょう。その院長がいないと来場者は不安を抱く可能性もあるので、内覧会の開催意義が失われかねません。
開業前後は何かと忙しいかもしれませんが、内覧会優先でスケジュールを調整しましょう。
2-2 目的を明確にして医院全体で共有する
あらかじめ内覧会の目的を明確にしつつ、スタッフ全員に共有することも大切です。「患者さまに対して何を伝えるのか」「どのようにコミュニケーションをとるべきか」といった点をはっきり定義し、院長・スタッフ間で意識を統一しておくと、来場者により良い印象を与えられる可能性も高まります。
例えば、以下のように伝えたい内容を掲げて共有すれば、具体的に何をすべきか検討しやすくなるでしょう。
- 診療の質が高い・先進的な治療を行っている
- 院長・スタッフの人柄が良い
- 地域医療への貢献を目指している
また、内覧会での患者さま応対は、開業後における接遇のシミュレーションにもなります。接遇はクリニックの評価や満足度にも影響するため、開業前に良い機会になるでしょう。
2-3 来場者とのコミュニケーションと関係構築
先述の通り、内覧会の来場者の主な目的は院長に会うことです。そのため、ただ単に院内を見てもらうだけではなく、来場者と積極的にコミュニケーションをとる必要があります。
「診療目的ではないお客さまと何を話せばいいのか分からない」という先生もいるかもしれませんが、基本的にクリニック関連の話題で大丈夫です。例えば、院長自ら院内を案内しながら診療内容を説明したり、来場者の質問に答えたりするだけでも、良好な関係構築につながります。
2-4 自院の専門性や強みをきちんと伝える
内覧会の来場者は、将来的な患者さまになってくれる可能性が高いので、それも踏まえて自院の売りをしっかり伝えなければなりません。
例えば、以下のような専門性や強みをアピールすれば、他院との差別化や競合優位の獲得につながります。
- 他院にはない独自の診療を行っている
- 最新鋭の医療機器を導入している
- 待合室や診察室の快適性にこだわっている
アピール内容が思いつかない場合、院長が得意とする診療分野を分かりやすく伝えるだけでも十分です。
2-5 プロの業者やコンサルタントに相談する
内覧会は一種のプロモーションイベントであり、宣伝広告や備品の手配といった準備が必要です。当日の運営までやることが多くて手間もかかる上、成功させるためのノウハウも求められるので、院長・スタッフだけで準備を進めることは難しいかもしれません。
「スムーズに開催できるかどうか不安」「アピールの自信がない」という場合、前もってプロの業者やコンサルタントに相談することをおすすめします。準備に関するアドバイスやプランの提案といったサポートにより、成功確率を高めることが可能です。
ただし、依頼費用が発生する場合があるため費用対効果を踏まえて検討したいところです。
内覧会の準備
内覧会を成功させるために必要な準備には、以下のようなステップがあります。
- 日程調整
- 宣伝広告
- パンフレットやノベルティの準備
- スタッフの確保
各ステップの概要や注意点についても詳しく解説します。
3-1 日程調整
内覧会の開催が決まったら、まずは日程を調整しましょう。内覧会は来場者がいないと成立しないイベントなので、主なターゲットとなる近隣住民が多く訪れやすい日程にする必要があります。
一般的にクリニックの内覧会は「開業日直前の週末」に行われているため、迷ったら土日開催がおすすめです。人の集まりや活動時間を考慮すると、開催時間は10~16時くらいが理想的ですが、地域事情や患者層も踏まえて検討しましょう。
また、開業日直前の週末と祝日が続いて三連休以上になっている場合、在宅率が高い連休後半に開催することを推奨します。
3-2 宣伝広告
内覧会は来場者あってのイベントなので、あらかじめターゲットとなる近隣住民に向けて開催を告知する必要があります。
宣伝広告として使える媒体はさまざまですが、ホームページやチラシが代表的です。ただし、新聞折り込みやポスティングは院外広告として扱われるため、厚生労働省が定める「医療広告ガイドライン」に注意しなければなりません。
また、内覧会の日程やクリニックの情報を載せるだけではなく、人目を引くデザインの広告に仕上げることも大切です。
なお、宣伝広告には費用がかかるので、闇雲に告知すると負担も増大します。チラシの配布エリアを絞ったり、SNSを活用したりなど、費用対効果の高い施策を検討しましょう。
3-3 パンフレットやノベルティの準備
内覧会の最終的な目的は「クリニックの認知度拡大」と「来場者に良い印象を与える」の2点です。そのために、自院の情報をまとめたパンフレットやノベルティ(記念品・粗品)が効果的なので、内覧会当日に来場者へ渡せるよう準備しておきましょう。
チラシも含めてパンフレットやノベルティの作成を外注する場合、完成までに時間がかかるため、できるだけ早めに対応することが大切です。
また、ノベルティの内容は自由ですが、クリニックの名前を入れるとしても、1個につき100~500円程度の品物で十分といえます。クリニックのことを印象付けるためには「高価なもの」より「使ってもらえるもの」を選ぶべきなので、ボールペン・タオル・マスク・カレンダーなどが最適です。
3-4 スタッフの確保
内覧会を土日に開催する場合、診療日以外にスタッフに出勤してもらう可能性が高いため、早めに説明して人員を確保することも大切です。なるべく通常時と同じ運営体制で臨む必要があるので、人員配置や時間配分もきちんと調整しておきましょう。
さらに、内覧会当日は院内の案内だけではなく、呼び込みやノベルティの配布といった業務も発生するため、人手不足に注意したいところです。院長・スタッフだけだと人員が足りない場合、家族・友人や付き合いのある業者などに応援を要請することも検討しましょう。
また、内覧会の人員を確保するためにはスタッフとの信頼関係が欠かせないため、働き方や待遇など含めて不安を解消しておくことも重要です。
内覧会当日の進め方
内覧会当日の進め方は、以下の通りです。
- 来場者を迎える準備・清掃
- 近隣の人の呼び込み・チラシ配り
- 院内の案内や質問への対応
- 手土産として記念品・粗品をお渡し
4-1 来場者を迎える準備・清掃
内覧会当日は早めに集合した上で、当日の動きや各スタッフの役割を改めて確認しましょう。開始時間の1時間前までに集まっておけば、準備の抜け漏れや不測の事態(悪天候・電車の遅延など)にも対処しやすくなります。
当日に関する確認が終わったら、院内をきれいに清掃します。クリニックは衛生管理が重要なので、清潔感は好印象につながるポイントです。
また、清掃と併せてパンフレットやノベルティの準備、ポスターの貼り付けなども実施しましょう。
4-2 近隣の人の呼び込み・チラシ配り
上記の準備・清掃が終わったら、クリニック前や駅前などで近隣住民の呼び込みを行いましょう。内覧会に行くべきかどうか迷っている人は少なくないので、一声かけるだけで背中を後押しできる可能性もあります。
また、呼び込みの際にチラシを配布すれば、当日来場できない人にも自院の存在をアピールできるため、プロモーション効果は十分です。
なお、公道で呼び込みを実施する場合、事前に「道路使用許可」を得る必要があるので、その点は注意しましょう。
4-3 院内の案内や質問への対応
内覧会が始まったら、来場者を歓迎ムードで迎えましょう。受付での手続きが済んだら、院長もしくはスタッフが来場者に付き添って院内を案内しつつ、自院の診療内容や設備について説明します。
来場者から質問されることもありますが、スタッフが回答できない際は、必ず院長に確認するというルールを定めておきましょう。丁寧に対応すれば、来場者により良い印象を与えやすくなります。
また、案内中は言動や立ち振る舞い、他のスタッフへの態度にも注意が必要です。
4-4 手土産として記念品・粗品をお渡し
院内を一通り案内したら、来場者に手土産として記念品・粗品をプレゼントしましょう。来場に対する感謝の言葉も添えると、最後に改めて良い印象を与えられるので、集患につながりやすくなります。
また、記念品・粗品にクリニックの名前や連絡先を入れておけば、それを見ることで自院の存在を思い出してもらえることが期待できます。
もし記念品・粗品が余った場合、開業後に初診の患者さまにプレゼントするのもいいでしょう。
開業後の内覧会が効果的なケースも
基本的に内覧会はクリニックの開業前に行いますが、以下のようなケースに当てはまる場合、開業後でも効果を発揮することがあります。
- 承継開業を検討している
- 診療科や医療機器の追加にともない、リニューアルオープンを検討している
- 集患対策で思うような成果が出ず、ターゲットとなる患者さまが来ていない
- 他院と差別化できるポイントが明確に存在する
例えば、親族内承継もしくは第三者承継(M&A)で開業する場合、今まで通院していた患者さまを引き継ぐことも可能です。しかし、新しい院長や診療内容についてアピールすれば、より多くの集患につながる可能性もあります。
なお、成功のポイント・準備の流れ・内覧会当日の進め方については、開業前も開業後もほぼ同じです。
内覧会での注意点
リニックの内覧会では、以下のような注意点があります。
- 服装に注意
- 関係者向けのレセプションは別途行う
内覧会で失敗すると、その後の経営にも悪影響が生じかねないため、これらの注意点にも気を配りましょう。
6-1 服装に注意
内覧会が堅苦しい雰囲気にならないよう、友人や業者が応援に駆けつけてくれたり、お祝いの品を送ってくれたりするケースもあります。このような場合、格式ばったスーツよりカジュアルな服装がおすすめです。
スーツがNGというわけではありませんが、明るく和やかなムードで内覧会を行う際は、
カジュアルな服装の方が雰囲気に合っています。「気軽に来院できるクリニック」というイメージも与えられるため、外部のスタッフも含めて服装は合わせましょう。
6-2 関係者向けのレセプションは別途行う
内覧会は集患を目的とした、近隣住民へのプロモーションおよび関係構築のためのイベントです。一方、関係者向けのレセプションは医療関係者や取引先の業者がターゲットであり、そもそも目的が異なるので別途行うことをおすすめします。
内覧会と関係者向けのレセプションを同日に開催した場合、関係者の対応に追われて来場者とのコミュニケーションが減ったり、近隣住民が来場しづらくなったりするかもしれません。そのため、内覧会終了後など日を改めて開催した方が無難です。
日本調剤は開業前の内覧会もサポート
クリニック経営において良いスタートダッシュを切るためには、開業前の内覧会が欠かせません。自院の強みや院長・スタッフの人柄をうまく伝えることで、開業後すぐに患者さまを集めやすくなるので、安定した経営につながります。
内覧会を行う場合、さまざまな準備が必要になるため、成功のポイントや当日の進め方と併せて確認しておきましょう。
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