クリニック開業時の労務管理のポイントシリーズの第三回目は、『雇用契約書』について確認していきます。

 雇用契約書は、クリニックとスタッフが取り交わす労働契約の基本になるものです。スタッフには給与として、継続して年間数百万円単位で支払っていくわけですので、書面での取り交わしにより、双方が確認した形にしておくことが、今後長く続く雇用関係においては重要になります。

法的な側面も確認しますと、労働基準法では、第15条(労働条件明示)にて、「労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と定められており、ここで定められた項目(明示義務事項)を、雇用契約書(もしくは労働条件通知書)に記載することが求められてきます。

この「明示義務事項」は、下記の通りとなります。
(1)必ず明示しなければいけない項目
*労働契約の期間
*業務を行う場所、業務内容
*始業・終業の時刻、残業の有無、休憩時間・休日・休暇など
*賃金(退職金、賞与等を除く)の決定・計算・支払、昇給に関する事項など
*退職に関する事項

(2)制度が有る場合に明示しなければいけない項目、
*退職手当が有る場合は、適用される職員の範囲、計算方法
*賞与に関する事項
*負担させる食費や作業用品など
*安全及び衛生に関する事項
*職業訓練に関する事項
*災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
*表彰および制裁に関する事項
*休職に関する事項

パートタイム職員を雇用する場合は、パートタイム労働法により、昇給・賞与・退職金の有無については『書面』で明示することが義務付けられています。

上記で定められた明示事項の多くは、就業規則の必要記載事項にも含まれてきますので、就業規則を作成している場合は、雇用契約書(労働条件通知書)に必要最低限の事項を記載し、「就業規則第〇条による」という記載をすることで、要件を満たすことができます。
労働基準法で定められた、労働条件の明示を怠った場合は、30万円以下の罰金になることがあります。

上記の通り、雇用契約書(労働条件通知書)の法的な必要性も理解して頂き、各クリニックにあった内容でフォーマットを作成しておくことをおすすめしております。