クリニックの経営において、労務トラブルが表面化しやすいのは、職員の退職時になります。円満退職の場合は、クリニックで設定した、自己都合退職の申し出日『退職日の60日前』等に伝えてもらえ、新しい職員の採用・引継ぎまで行い、退職するという流れになります。

しかし、退職するタイミングというのは、職員が感情的な対応をしてくることもあり、
・退職日を2週間後などで退職届を出し、出勤しなくなる。
・明日から有給休暇を使って、終わったら退職。
といったことが起こることもあります。

上記のような、就業規則・雇用契約書で定めた自己都合退職のルールに沿わない場合は、院長から職員に対して、事務的に以下の手順で対応を進めてもらえればと思います。

・「当院の就業規則と雇用契約書のルールで、自己都合退職の場合は〇日前に申し出することとなっているので、それを踏まえて退職届を出してください」と伝える。
・上記の依頼に対し、民法の規定で「14日前に伝えれば良い」というのを持ち出し、クリニックのルールを守ろうとしない場合があります。
・この場合、民法で定められた規定が優先されるのですが、「退職は承知しました。新しい方を採用し引継ぎの期間もあるので、退職日は〇日後にしてくれませんか。改めて退職日を記載した退職届を出してください」

上記のように依頼しても、職員が14日後の退職を強行する場合は、非常に残念で、怒りの感情が出てくると思いますが、その14日後を退職日として受け取って頂きたいです。権利を全面に主張してくる職員に、院長が感情的であったり、高圧的な態度を取りますと、パワハラなどで訴えられるリスクも出てきますので、その点はご注意下さい。

職員退職時には、下記の点を確認してください。
●退職届(出してこない場合は、退職を申し出るメールの控え)の受領
●貸与物の返却(クリニックの鍵、制服など)
●保険証の返却
職員への退職時の送付物は以下の通りです。
・雇用保険 離職票(職員に必要かどうか有無確認で必要と言われた場合)
・源泉徴収票(最後の給与が支給された後。給与明細に同封)
・(社会保険に加入している場合)資格喪失連絡票(証明書)

※退職時に未払残業代請求や有給残日数の消化などの、金銭の伴うトラブルになる場合は、「退職合意書」の取得により、他に争うことが無いことを書面で確認することも必要です。

退職時には職員の対応に、院長に多くの負担がかかることもありますので、こういったひどい事例も事前に知っておいてもらいえればと思います。

退職時にトラブルが起きないように、就業規則等のルール徹底や職場風土改善を通じて良好な雇用関係を築いていってもらいたいと考えております。