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院内処方のメリット・デメリットと院外処方との比較

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院内処方のメリット・デメリットと院外処方との比較

クリニックの開業にあたり、薬の処方方法をどうすべきか迷っている先生も多いのではないでしょうか。現在、多くの医療機関は「院外処方」を採用しています。一方、状況によっては「院内処方」にもメリットはあるため、自院のターゲットや地域事情を踏まえて選択したいところです。

今回の記事では、院内処方と院外処方の違いを踏まえつつ、院外処方が主流になっている理由や院内処方のメリット・デメリットなどについて解説します。

目次

1.院内処方と院外処方の違い

服薬指導 イメージ

病院やクリニックで患者さまに薬を処方する方法には、「院内処方」と「院外処方」の2種類があります。

院内処方とは、診察を受けた病院やクリニックで薬を用意し、その場で患者さまにお渡しする方法です。一方、院外処方は診察を受けた病院やクリニックに処方箋を発行してもらい、それを院外の調剤薬局に渡してから薬を受け取る方法です。

以前は院内処方が主流でしたが、最近は院外処方を選択する医療機関が増加しています。

 

2.院外処方が主流になっている理由

院外処方が主流になっている理由としては、以下のような点が挙げられます。

  • 医薬分業による院外処方の普及
  • 院内処方におけるメリットが小さくなっている

それぞれ詳細を解説するので、きちんと押さえておきましょう。

2-1 医薬分業による院外処方の普及

医薬分業とは、医師と薬剤師がそれぞれ専門分野を担って「薬の処方と調剤を分離」することです。

日本の医薬分業は明治初期に始まっていましたが、1997年に厚生労働省(旧厚生省)が37のモデル国立病院へ完全分業(院外処方箋受け取り率70%以上)を指示したことで加速化しました。この医薬分業の推進がきっかけとなり、現在は多くの医療機関が院外処方を採用しています。

また、医薬分業を通じて以下の効果も期待されています。

  • 医療サービスの品質向上
  • 高齢化社会に向けた薬の安全性向上
  • 医療費の適正化

医療の発展という観点で考えても、医薬分業の重要性は高いといえるでしょう。

2-2 処方箋受け取り率の推移

日本薬剤師会が公表した「医薬分業進捗状況(保険調剤の動向)」によると、2022年時点での処方箋受け取り率(医薬分業率)は76.60%です。下表の通り、40年前は90%以上が院内処方だったのに対して、現在は院外処方を選択する医療機関が多くなっているのです。

 

年度 処方箋受け取り率
1986 9.7%
1990 12%
1995 20.3%
2000 39.5%
2005 54.1%
2010 63.1%
2011 65.1%
2012 66.1%
2013 67%
2014 68.7%
2015 70%
2016 71.7%
2017 72.8%
2018 74%
2019 74.9%
2020 75.7%
2021 75.3%
2022 76.6%

 

出典:日本薬剤師会「医薬分業進捗状況(保険調剤の動向)」

2-3 院内処方におけるメリットが小さくなっている

院内処方では、薬価(薬の売値)と薬剤仕入れ額の差額から生じる「薬剤差益」によって医療機関が利益を得られる可能性があります。しかし、近年は薬価の引き下げや安価なジェネリック医薬品の普及により、以前より薬価差益を得ることが難しくなっています。

さらに、先述した医薬分業も薬価差益に影響を与えている要因です。院内処方だと利益を最優先に考え、高価な薬や大量の薬を処方するケースも考えられるため、それを防ぐ目的で医薬分業が推進されている側面もあるのです。

また、薬局がアクセスしやすい場所にあれば、院外処方における利便性の問題もある程度解消されるので、相対的に院内処方のメリットは小さくなります。

 

3.院外処方のほうが病院やクリニックの経営で有利

服薬指導 イメージ

院内処方と院外処方を比較した場合、「薬の処方にかかる金額」と「保険点数」を考えると院外処方のほうが有利なので、病院やクリニックの経営にも良い影響が見込めます。

3-1 薬の処方にかかる金額

院内処方の場合、薬の処方にかかる金額は「処方料+医療機関での調剤技術料+薬価」です。処方料(医師が服薬方法を指示する料金)は基本的に一律ですが、一度に7種類以上の薬を処方する際は減額となります。

一方、院外処方の際にかかる金額は「処方箋料+調剤薬局での技術料・服薬指導料+薬価」です。

院内処方における「処方料」より院外処方での「処方箋料」のほうが点数は高いので、医療機関が最終的に得られる利益も大きくなります。

また、院外処方なら人件費や調剤関連機器の費用も抑えられるため、コスト削減による利益の増加が見込めるのです。

3-2 院内処方と院外処方の保険点数の比較【内科の例】

参考情報として、内科における院内処方と院外処方の保険点数をそれぞれまとめました。

 

風邪の患者さまに、内服薬2剤×4日分、頓服薬1剤を処方した場合
院内処方 院外処方
処方料 42 クリニック 処方箋料 68
調剤技術基本料 14
調剤料 11 調剤薬局 調剤技術基本料 32
薬剤情報提供料 10 薬剤調整料 69
調剤管理料 8
服薬管理指導料 59
計(薬剤料除く) 77 計(薬剤料除く) 236
患者さま負担額(3割) 231 患者さま負担額(3割) 708

 

4.院内処方のメリット

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主流ではなくなった院内処方ですが、医療機関によっては以下のようなメリットがあるので、開業にあたって検討の余地はあります。

  • 患者さまが薬局に行く手間が省ける
  • 患者さまの自己負担額が安い
  • 医師・看護師と薬剤師が連携を取りやすい

4-1 患者さまが薬局に行く手間が省ける

院内処方の場合、診察終了後は文字通り院内で薬を渡します。患者さまはわざわざ外の調剤薬局に行く必要がなくなるうえ、受付・会計もワンストップで完結できるため、薬を受け取るまでの手間を省けるのがメリットです。

院外処方の場合、病院やクリニックの場所にもよりますが、調剤薬局まで足を運ばなければならない関係上、どうしても患者さまに負担がかかります。また、医療機関と調剤薬局それぞれ手続きを踏まなければならない点もデメリットです。

4-2 患者さまの自己負担額が安い

一般的に院内処方のほうが保険点数の合計が低くなるので、患者さまの自己負担額も安くなります。経済的な負担を軽減できるため、患者さまにとっては嬉しいポイントです。

先述した手間が省けるメリットと併せて、結果的に患者満足度がアップする可能性もあります。

4-3 医師・看護師と薬剤師が連携を取りやすい

院内に薬剤師がいれば、医師・看護師とこまめにコミュニケーションをとることができるため、薬の処方にあたって連携しやすい点もメリットです。

例えば、薬の内容・数量を変更したり、処方日数を調整したりする必要が出てきた場合、院内処方ならその場でスタッフ同士が相談できるため、処方がスムーズに進みます。

5.院内処方のデメリット

調剤のイメージ

院内処方には、以下のようなデメリットもあります。

  • 薬剤師の人件費や調剤関連機器のコストがかかる
  • 調剤や薬剤保管のためのスペースが必要
  • 在庫リスクがある
  • 薬局によるチェック機能がない
  • 患者さまが薬剤師による服薬指導を十分に受けられない

それぞれ詳しく解説します。

5-1 薬剤師の人件費や調剤関連機器のコストがかかる

院内処方で薬剤師を雇う場合、当然ながら人件費がかかってきます。さらに、調剤関連機器の導入コストもかかってくるため、支出の増加は避けられません。

なお、調剤は薬剤師の独占業務であり、本来なら薬剤師以外が担当することは違法です。ただし、一定の条件を満たすと医師による処方が認められるので、薬剤師を常駐させずとも院内処方ができるようになります。また、条件次第では医師・薬剤師以外が薬剤をピックすることも可能です。

5-2 調剤や薬剤保管のためのスペースが必要

薬剤師・医師が調剤業務を行ったり、薬剤を保管したりするためには、相応のスペースが必要です。特に小規模なクリニックの場合、新たにスペースを確保することはなかなか難しいので、現実的に院内処方が難しいケースもあるでしょう。

施設の増改築やリフォームを実施すれば院内処方を採用できる可能性もありますが、コストや手間に見合う価値があるか慎重に検討が必要です。

5-3 在庫リスクがある

院内処方の場合、医療機関側で薬剤の発注および在庫管理を行うことになります。在庫にない薬は当然ながら処方できないため、こまめに在庫状況をチェックしつつ、適宜発注をかけることが大切です。

しかし、在庫が余ると余計なコストが生じるリスクもあるので、発注しすぎないよう注意しなければなりません。薬剤はそれぞれ使用期限が定められており、期限切れの薬剤は廃棄しなければならないので、結果的に赤字のリスクも高まってしまいます。

5-4 薬局によるチェック機能がない

院外処方の場合、医師・薬剤師のダブルチェックによって重複投薬や調剤ミスの防止、過去に他の医療機関から処方された薬や飲み合わせの確認を行うので、薬の安全性がしっかり担保されます。

しかし、薬の処方から受け渡しまで院内で完結する院内処方では、薬剤師がいない場合はこうしたプロセスが省略されてしまいます。もちろん、医師が入念にチェックしたうえで薬を処方しますが、薬局のチェックが入らない分、どうしても確認漏れやミスが発生する可能性は高まってしまいます。

5-5 患者さまが薬剤師による服薬指導を十分に受けられない

院内に薬剤師がいない場合、患者さまに十分な服薬指導ができない可能性もあります。特定の条件下なら医師が薬を処方することも可能ですが、医師は薬剤師ほど薬に精通しているわけではないため、患者さまによっては不安を感じるケースもあるかもしれません。

また、調剤に関する専門スタッフがいない場合、薬剤の準備や受け渡しといった業務が負担になってしまう可能性もあります。

院外処方なら調剤業務がないため、医師は診療業務に集中できるでしょう。

6.院内処方と院外処方どちらを選択すべきか?

ここまで院内処方と院外処方について解説してきましたが、医療業界の現状やそれぞれのメリット・デメリットを踏まえると、基本的に院外処方を選択すべきケースが大半です。

特に近年は薬剤差益を得ることが難しいので、院内処方を選んでも経営面のメリットはほとんどありません。さらに、人件費や調剤関連機器のコスト、赤字につながる在庫リスクなどを踏まえても、院外処方を採用したほうが得策といえるでしょう。

ただし、高齢者が多い地域や調剤薬局へのアクセスが悪い地域、多忙なビジネスマンが多い地域などで開業する場合、患者さまの利便性を重視して院内処方を採用するのも一案です。

6-1 院内処方と院外処方の併用は可能か?

同じ患者に対して、同一診療日に院内処方と院外処方を併用することは原則として認められていません。例えば、クリニックで薬剤の一部を処方し、残りを院外処方にした場合、処方料と処方箋料を二重算定してしまうのでNGです。

万が一の緊急事態であれば、併用が認められるケースもありますが、その際は保険点数の算定において制約が生じます。また、例外的に併用した場合、日付と理由をレセプトの「摘要」欄に記載しなければなりません。

なお、院内処方と院外処方の併用はあくまで「同一診療日」がNGなので、同じ患者でも同日でなければ問題なく併用可能です。

 

7.開業時には薬の処方方法や薬局との連携を考える

クリニックを開業する場合、開業場所や内装設備のことだけではなく、薬の処方方法もきちんと検討しましょう。

院内処方を採用するなら、薬剤師の常駐や調剤・保管スペースを考慮する必要があります。それに伴って人件費や設備費のことも考えなければなりませんが、先述したように院内処方は経営面のメリットが小さいため、コストに見合う結果を出せるか見極めることが大切です。

院外処方を採用するなら、信頼できる薬局とスムーズに連携できるような立地を選ぶ必要があります。例えば、敷地内に調剤薬局がある医療モールで開業すれば、薬剤師とのやり取りがスピーディーに進みやすいのはもちろん、患者さまにとっても利便性が高いため、双方がメリットを享受できる選択肢です。

 

8.日本調剤の開業サポート

院内処方と院外処方はそれぞれメリット・デメリットがありますが、現状は院外処方のほうが有益なので、調剤薬局との連携を考慮しながらクリニックの開業を計画することが大切です。

日本調剤では、集患しやすい好立地に企画した医療モールをはじめ、調剤薬局との連携がしやすく医療機関と患者さまの双方にとってメリットの大きい優良物件を多数ご紹介できます。

さらに、クリニックの開業を成功に導くため、手厚いサポートを無料でご提供。診療圏調査・金融機関の紹介・内装設備の提案・スタッフ採用の支援など、開業準備前から開業後まで徹底したサポートを行っています。

もし開業を検討されているなら、ぜひ一度お問い合わせください。

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