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分院とは?本院との違いや開設のメリット・デメリット、必要な手続きを解説

分院とは?本院との違いや開設のメリット・デメリット、必要な手続きを解説

事業規模の拡大や本院の混雑緩和、新たな地域への進出を目的として、分院の開設を検討する医師や医療法人もいるでしょう。一方で、「分院は本院と何が違うのか」「個人開業医でも分院を開設できるのか」「どのような手続きが必要なのか」と疑問を持つ方も少なくありません。

分院は、医療法上「分院」という独立した医療機関の類型があるわけではありませんが、本院とは別の医療機関として扱われます。そのため、原則として分院ごとに管理者を置き、医療法人の定款変更や診療所の開設手続き、保険医療機関の指定などを行う必要があります。また、分院長やスタッフの確保、初期投資、多拠点の管理体制にも注意が必要です。

本記事では、分院の意味や本院との違い、開設するメリット・デメリット、必要な要件と手続きを解説します。併せて、分院開設を成功させるための事業計画や診療圏調査、物件選びのポイントも紹介します。

目次

分院とは?本院との違い

「分院」とは、同じ医療法人などが本院とは別の場所に開設する医療機関を指す一般的な呼称です。医療法上、「本院」「分院」という独立した医療機関の類型が定められているわけではありません。

分院は本院の一部として扱われるのではなく、別の病院・診療所として管理や手続きを行います。医療法人による分院の設置は既存の病院・診療所の拡張ではなく、別の医療機関を新たに開設するものとされています。

分院は本院とは別に開設・運営する医療機関

分院を開設する場合は、新たな医療機関として管理者を配置し、開設に必要な許可や届出を行います。

医療法人が分院を開設する場合は、原則として分院の名称や開設場所などを定款または寄附行為に追加し、都道府県知事による変更認可を受ける必要があります。例えば東京都では、診療所の新規開設に伴う定款変更について、事前に変更認可を受け、法人登記を済ませたうえで開設手続きを進めるよう案内しています。

参考

東京都「医療法人運営の手引(令和8年4月版)」

その後、診療科目や人員、構造設備などについて、分院を開設する地域を管轄する保健所などで必要な手続きを行います。

本院と分院では役割や管理体制が異なる

基本的には、本院は最初に開設した施設や法人運営の中心となる施設を指し、その後に別の地域などへ開設した施設を分院と呼びます。ただし、法的に本院が分院を管理するという上下関係が定められているわけではありません。

本院と分院には、それぞれ管理者を置くことが原則です。また、医療法人は開設するすべての病院・診療所の管理者を原則として理事に加えることが医療法で定められています。複数施設を開設する医療法人では、都道府県知事の認可を受けた場合に一部の管理者を理事に加えないことができます。

本院と分院の主な違いを整理すると、次のとおりです。

項目 本院 分院
開設時期・役割 最初に開設した施設や、法人運営の中心となることが多い 事業拡大などを目的に、後から開設することが多い
管理者 本院の管理者を配置する 原則として、分院にも別の管理者を配置する
行政手続き 開設時に必要な許可・届出を行う 新たな医療機関として必要な許可・届出を行う
保険診療 本院について、保険医療機関の指定や必要な届出を行う 分院についても、必要な指定・届出を行う
診療圏 本院周辺の診療圏を対象とする 分院周辺について、改めて診療圏を検討する
収支管理 法人全体の経営の中心となることが多い 分院単独の採算性も確認することが重要

医療法人としての会計は法人全体で行いますが、分院の採算性を把握するためには、本院と分院の売上や経費を施設ごとに把握しておくことが重要です。

個人開業医が分院を開設するには制約がある

個人で診療所を開設している医師・歯科医師が分院展開を検討する場合は、管理者に関する規定に注意が必要です。

医療法では、診療所の開設者が管理者になる場合、原則として自らその診療所を管理しなければならず、他の医師・歯科医師に管理させるには都道府県知事の許可が必要です。また、一人の医師・歯科医師が複数の医療機関の管理者を兼務することも原則として制限され、一定の場合に限り許可を受けて認められます。

例えば千葉市では、管理者の兼務について、へき地の診療所や社会福祉施設内の診療所、事業所内診療所、休日・夜間診療所など一定のケースを示しており、要件に該当しても必ず許可されるわけではないため事前相談を求めています。

参考

診療所2か所(以上)管理許可申請について

そのため、一般的な診療所を継続的に複数展開する場合は、医療法人化も選択肢の一つとなります。実際に分院を開設できるかは開設形態や管理体制によって異なるため、計画段階から所轄の都道府県や保健所へ相談しておきましょう。

分院を開設するメリット


分院を開設すると、本院とは異なる地域に診療拠点を設けられるため、診療圏や患者さまの受入体制を広げられます。また、本院で培った人材育成や業務運営のノウハウを活用できれば、効率的な事業拡大につなげられる可能性があります。

ここでは、分院を開設する主なメリットを解説します。

診療圏を広げて新たな患者さまのニーズに対応できる

分院を開設することで、本院とは異なる地域に住む患者さまへ診療を提供できるようになります。

例えば、本院の患者数が増えて予約を取りにくくなっている場合、分院で一部の患者さまを受け入れることで、混雑を緩和できる可能性があります。また、本院と分院で診療機能を分担することも可能です。

地域によって、人口構成や患者さまのニーズ、競合医院の状況は異なります。高齢者が多い地域、子育て世帯が多い地域、オフィスワーカーが多い地域など、それぞれの特徴に合わせて診療内容や診療時間を検討することで、新たな需要を取り込める可能性があります。

ただし、本院で成功した診療体制をそのまま分院へ導入すればよいとは限りません。分院開設前には診療圏調査を行い、地域の人口構成や競合状況、患者さまの生活動線などを確認することが重要です。

診療機会を増やし、収益拡大につながる可能性がある

分院を開設すると診療拠点が増えるため、法人全体で受け入れられる患者数も増やせます。新たな地域で患者さまを獲得できれば、法人全体の売上や収益を伸ばせる可能性があります。

また、複数の地域へ診療拠点を展開することで、特定の診療圏だけに依存するリスクを抑えられる場合もあります。

一方で、分院を開設すれば必ず収益が増えるわけではありません。本院と分院の診療圏が重なっていると、新規の患者さまが増えるのではなく、本院の患者さまが分院へ移動するだけになる可能性もあります。

さらに、分院では賃料や人件費、医療機器のリース料などの固定費も新たに発生します。そのため、分院単独で想定患者数や売上、固定費を試算し、損益分岐点や必要な運転資金を確認したうえで開設を判断することが大切です。

本院で蓄積した人材・運営ノウハウを活用できる

すでに本院を運営している場合、そこで蓄積した経営や診療のノウハウを分院でも活用できます。

例えば、スタッフの採用基準や研修方法、診療方針、接遇、業務手順などを標準化しておけば、分院でも一定の診療品質を維持しやすくなります。

また、経理や労務、広報、予約管理、レセプト業務などを法人内で共通化することで、施設ごとにすべての業務体制を一から構築する負担を抑えられる場合があります。医薬品や診療材料の調達、医療機器やシステムの選定についても、本院での経験を活かせるでしょう。

本院に一定の認知度があれば、その実績やブランドを分院の周知に活用できる可能性もあります。ただし、地域によって患者さまのニーズや競合環境は異なるため、本院と同じ運営方法にこだわらず、分院を開設する地域に適した診療体制を整えることが重要です。

分院を開設するデメリット・リスク

分院の開設は事業拡大につながる可能性がある一方で、人材の確保や初期投資、多拠点管理など、本院だけを運営する場合にはない負担が生じます。

分院単独の運営だけでなく、本院や法人全体への影響も考慮したうえで、開設を判断することが重要です。

分院長とスタッフの確保が必要になる

分院を開設する場合は、原則として分院ごとに管理者となる医師・歯科医師を配置する必要があります。本院の管理者が分院の管理者を兼務することは原則として制限されているため、分院長となる人材の確保が重要です。

分院長には診療能力だけでなく、医療安全やスタッフ管理、診療報酬請求など、医院運営を管理する能力も求められます。分院長へどこまで権限を委ねるのか、本院や法人へどのように報告するのかといった管理体制も事前に決めておきましょう。

また、分院長が退職した場合、後任を確保できなければ診療体制の維持が難しくなる可能性があります。待遇や権限を明確にするとともに、退職・交代時の代替体制についても検討しておくことが大切です。

看護師や医療事務などのスタッフについても新たに採用する必要があります。開院直前になって人材不足に陥らないよう、採用活動や研修に必要な期間を見込んで準備を進めましょう。

初期投資と固定費が増加する

分院の開設には、物件取得費や内装工事費、医療機器、システム導入費、採用費、広告宣伝費などの初期費用がかかります。

開設後も、賃料や人件費、社会保険料、医療機器のリース料などの固定費が継続的に発生します。そのため、患者数や売上が計画どおりに伸びなかった場合、分院の収支が悪化する可能性があります。

事業計画を作成する際は、順調に患者数が増えるケースだけでなく、集患に時間がかかる場合や工事費が増加する場合、開設時期が遅れる場合なども想定して、複数の条件で収支や資金繰りを試算しておきましょう。

分院単独の採算性だけでなく、赤字が続いた場合に本院や法人全体の資金繰りへどの程度影響するのかも確認しておく必要があります。

多拠点管理が複雑になり、本院の運営にも影響する

分院を開設すると、労務や経理、医療安全、診療報酬請求、在庫管理など、管理する対象が増えます。施設ごとに管理方法が異なると業務が複雑になるため、本院と分院で共通化できる業務手順やルールを整えておくことが重要です。

また、本院のスタッフを分院へ異動させる場合は、本院の診療体制が弱くならないよう注意が必要です。分院の開設によって本院の待ち時間が増えたり、サービスの質が低下したりしては、法人全体の経営に悪影響を及ぼす可能性があります。

施設間で診療品質や患者さまへの対応に差が生じないよう、診療方針や業務手順、研修、報告体制などを整備しておきましょう。

さらに、本院と分院の診療圏が重なる場合は、新規患者の獲得ではなく、本院の患者さまが分院へ移動するだけになる可能性もあります。分院単独の患者数だけを見るのではなく、本院を含めた法人全体の患者数や売上がどのように変化するかを予測したうえで、開設を検討することが大切です。

分院開設に必要な要件と手続き

分院は本院とは別の医療機関として扱われるため、管理者の配置や定款変更、診療所の開設手続きなどが必要です。主な要件・手続きは以下のとおりです。

  • 分院ごとに管理者を置く

各診療所に管理者となる医師または歯科医師を配置します。複数の医療機関の管理者を兼務することは原則として制限されており、例外的に兼務する場合は都道府県知事の許可が必要です。医療法人では各施設の管理者を原則として理事に加えるため、役員変更や登記の要否も確認しましょう。

  • 医療法人の定款変更認可を受ける

医療法人が分院を開設する場合は、分院の名称や所在地などを定款または寄附行為に追加し、所轄庁の認可を受けます。必要な決議を行い、事業計画書や予算書、議事録、物件・管理者に関する書類などを準備します。認可に数カ月かかる場合もあるため、開設予定日から逆算して進めることが重要です。

  • 診療所の開設許可・開設届を提出する

医療法人が診療所を開設する場合は、開設前に管轄の保健所などへ開設許可を申請します。図面や設備計画も事前に確認し、開設後は原則として10日以内に開設届を提出します。エックス線装置を設置する場合は、別途届出が必要になります。

  • 保険医療機関の指定などを申請する

分院で保険診療を行う場合は、地方厚生局へ保険医療機関の指定を申請します。本院の指定や施設基準は分院へ自動的に引き継がれないため、施設ごとに必要な手続きを行います。外来医師過多区域で無床診療所を新設する場合の事前届出や、公費負担医療、税務、社会保険、労働保険などの手続きも確認しましょう。

必要書類や申請期限、手続きの順序は自治体などによって異なるため、分院開設を検討する段階から所轄庁や保健所へ相談しておくことが大切です。

参考

東京都「医療法人運営の手引(令和8年4月版)」

分院開設を成功させるポイント

分院開設では、本院の成功パターンをそのまま当てはめるのではなく、開設する目的や地域の特性に合わせて計画を立てることが重要です。また、本院の経営や人員体制が分院展開に耐えられる状態かどうかも確認する必要があります。

主に、以下の点を確認しましょう。

ポイント 確認する内容
開設目的と本院との役割を明確にする 収益拡大、本院の混雑緩和、新たな地域への進出など、分院を開設する目的を整理します。あわせて、本院と分院の診療科や診療時間、対象となる患者さまなどの役割分担を決めましょう。
分院長の権限と管理体制を整える 採用やシフト、設備購入など、分院長に任せる範囲と責任を明確にします。本院への報告方法や、診療・医療安全・患者さま対応などの共通ルールも整えておきましょう。
分院単独の事業計画を作成する 分院単独の患者数、売上、経費、利益を試算します。患者数の伸び悩みや工事費の増加なども想定し、必要な運転資金を確保しましょう。
分院を開設するタイミングを見極める 本院の患者数や収益が安定しているか、分院長候補やスタッフを確保できるか、開設後の運転資金に余裕があるかを確認します。本院の運営に課題を抱えたまま分院を開設すると、人員や資金が分散し、両院の経営に影響する可能性があります。
診療圏調査と現地調査を行う 人口構成や受診ニーズ、競合状況、交通手段、生活動線などを確認します。複数の候補地域について、推計患者数と収支を比較することも重要です。
診療内容に適した物件を選ぶ 賃料、視認性、アクセス、駐車場、必要面積、設備条件などを確認します。スタッフの採用・通勤のしやすさや、将来の設備増設にも対応できるか検討しましょう。

分院開設を検討する際は、単に本院の患者数が増えたことだけを判断材料にしないことも重要です。本院の業務手順や人材育成の仕組みが整い、院長が常に現場へ入らなくても一定の診療品質を維持できる体制があるかを確認しましょう。また、分院の立ち上がりが想定より遅れた場合でも、本院や法人全体の資金繰りに大きな影響が生じないかを検討したうえで、開設時期を判断することが大切です。

なかでも、診療圏と物件選びは分院開設後の患者数や収支に大きく影響します。推計患者数だけで判断せず、賃料や工事費、人件費なども含めて複数の候補地・物件を比較し、長期的に運営しやすい場所を選ぶことが重要です。

分院開設は管理体制と地域に合った物件選びが重要


分院は、同じ医療法人などが本院とは別に開設する医療機関です。医療法上、「分院」という独立した医療機関の類型があるわけではありませんが、本院とは別の医療機関として扱われるため、原則として分院ごとに管理者を置き、定款変更認可や診療所の開設手続き、保険医療機関の指定などを行う必要があります。

分院を開設することで、診療圏や患者さまの受入体制を広げ、本院で培った人材育成や運営ノウハウを活かして事業を拡大できる可能性があります。一方で、分院長やスタッフの確保、初期投資・固定費の増加、多拠点管理の複雑化といったリスクもあります。分院単独の採算性だけでなく、人員配置や資金繰りを含め、本院や法人全体への影響まで検討することが重要です。

分院開設を成功させるには、まず開設する目的と本院との役割分担を明確にしましょう。そのうえで、候補地域ごとに診療圏調査や現地調査を行い、人口構成や競合状況、生活動線などを確認します。推計患者数だけで判断せず、賃料や工事費、人件費、必要な設備なども含めて収支を比較し、診療内容や患者層に適した物件を選ぶことが大切です。

日本調剤では、物件紹介や診療圏調査、資金計画の策定をはじめ、設計、医療機器の選定、集患施策など、クリニック開業に必要な準備を幅広く支援しています。将来的な分院展開を見据えて開業する先生や、新たな分院の開設を検討している医療法人の方は、候補地域や物件を決める前の段階からぜひ一度ご相談ください。

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