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医院開業コラム

これからのクリニック経営

(1)経営に苦労する院長先生たち(お金のマネジメント編)

クリニック経営講座・基礎コース

(1)経営に苦労する院長先生たち(お金のマネジメント編)

株式会社ドクター総合支援センターの近藤隆二です。

私は開業医の先生方を医業経営とライフプランの両面から長期的にサポートする「病医院の院外経営幹部」という立場で仕事をしています。

なぜ、このような仕事をしているのか。

それは、多くのご相談をいただく中で

「もっと経営を学び、経営にきちんと取り組んでいればこんなに苦労されることはなかったのに・・・」

という院長先生があまりにも多く、少しでも良い経営ができる環境づくりのお手伝いをする必要があると痛感しているからです。

経営に苦労する原因は様々ですが、お金とスタッフ(チーム)のマネジメントができていないことがほとんどです。

今回はお金のマネジメントの失敗事例をいくつかご紹介しましょう。

1)多額の借金で過大な設備投資を行いお金が不足している

特に開院時や分院開設、移転時によく見られます。
その最大の原因はしっかりとした事業計画を作らないまま設備投資やスタッフ採用を行っていることにあります。
しっかりとした事業計画とは銀行に提出するためのものではなく、本音でリアルな事業計画のことです。
自分はどのような医療を行うのか、そのためにはどれだけの広さの場所、医療機器が必要で、どのようなスタッフを何人採用するのかなどを具体的に考え、リアルな診療日数、診療単価、受診者数などを明らかにして作るものです。
その上で、自分の生活を賄うための出費を考慮しても手元にお金が残るのかどうかをチェックします。
お金が不足するようであれば、実現する方法を考え、計画そのものを見直す必要があるのですが、このプロセスを踏まずに業者さんに言われるまま設備投資をしていることがあまりにも多いのです。
具体的には多額の借り入れをして土地とクリニック併用自宅を購入したり、必要な面積以上の広さの土地建物を購入したり、利益に貢献しない高額な医療機器を購入して苦労している方が多いようです。
特に借り入れで土地・建物を購入した場合には、一生を借金返済に費やしてしまった、下手をすると自己破産も考えなければならない…などということもあり得ますので要注意です。

2)お金を使うタイミングを間違えてお金が不足している

クリニック開院時のみではなく、開院後何年経ってもよく見られます。
クリニックを開院する時に開業資金を潤沢に蓄えられるケースはあまりありません。開業資金の大部分は借り入れに頼らざるをえないのが現状です。借り入れの金額は診療科目などによって違いますが数千万円から億円単位になることがほとんどです。開院前や開院直後には様々な業者さんが様々なモノやサービスを売り込みに来ます。その結果、開院直後に高級車を購入し、多額の生命保険料を払い始めるなどでお金を圧迫していることがよくあります。
クリニックを開院して経営が順調に進んでいるときにも同じようなことが起こっています。
お子さんが私立医学部を目指していて、多額な塾代や学費がかかるときに高額の住宅ローンを組んで自宅を購入したり、今考える必要もない何十年もの先の相続対策のための賃貸マンションを購入して損をしたりしてお金に苦労していることがあります。
こういったこと自体は問題ではありません。収入と支出を把握して、お金を使うタイミングを間違わないように気をつける必要があるということです。

3)医療法人の運用方法を間違えてお金が不足している

クリニックに利益が出始めると、医療法人を設立することがあります。
その目的の一つとして節税がありますが、運用を間違えるとかえって税金を多く払うことにもなってしまいます。
こんなケースがありました。
60歳代の理事長先生から医療法人を設立してから5年間大幅な赤字が続いているのでなんとかしたいというご相談をいただいたことがあります。
実際に決算書を拝見すると、年間約1000万円の赤字が5年間続いており債務超過に陥っていました。
その原因は、理事長と奥様(理事)で年間6000万円もの理事報酬を受け取っていることでした。実際に必要な報酬はご夫婦合わせて1500万円程度でしたので、過大な理事報酬を支払い、多額の税金を支払い、医療法人が赤字でお金が不足するので理事長からお金を借りているというなんともおかしな状況になっていました。
この結果、医療法人にも個人にもお金が残らず、老後の資金を貯めることもできていませんでした。
こんなおかしなことがあるのかと思うかもしれませんが、同じような事例をこれまで数多く見てきました。

このようなことのないよう、お金の基礎知識を持ち、適切なマネジメントをしていきましょう。

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