(6)開業時、こんなはずではなかったと後悔しないための注意点

ジョインハンズ株式会社

輿石 光希氏

開業を決意し、開業地選び、資金計画、建築、人員確保、申請、広告など、多くの準備が必要のうえ、初めての事が多いので本当に大変だと思います。
その中でも、看護師採用に関してのお悩みを多く聞きます。例えば、「どうやって看護師採用をすればよいのか？」「希望の看護師が集まらないし、採用してもすぐ辞める」など、看護師募集・採用・教育など多くの難題が立ち
はだかります。
そこで、開業してから「こんなはずではなかった」と後悔しないための注意点についてお話していきたいと思います。

開業準備の際に、それまでの職場で一緒に働いている看護師をヘッドハンティングすることがあると思います。看護部の組織の中で働いているときはとてもよく働き、コミュニケーションもよく図れ、看護師としての技術的能力も高く、この人なら一緒に頑張ってくれると思い誘うことがあると思います。
病院で働いているときの印象はそうなのです。
ところが、いざ開業準備から開業し一緒に働くようになってから、「あれ？こんな感じだったっけ？今までと違うぞ」と違和感をかんじることがあるかもしれません。実際に開業した先生からこのような話をよく伺います。なぜそのようなことが起きるのでしょうか？

先生に声をかけられたときの看護師の心境としては、
（１）「私をスカウトしてくれたの？嬉しい。私を認めてくれてた。」
（２）「今の病院勤めではストレスも多い。」
（３）「自分の能力を試したい」
（４）「この先生とだったらうまくやっていけそう」といったものだと思います。
その後今の状況と天秤にかけます。働き甲斐、給料、ストレス、今後の展望、自分の時間の使い方などです。判断基準はその人の思考になるのでここではっきりしたことは言えませんが、色々天秤にかけ判断します。
気をつけないといけないのが、声をかけた看護師が同僚の看護師に相談したときです。相談された看護師は「えー辞めたほうがいいんじゃない、うまくいかないかもしれないし、開業って大変よ。いろいろ仕事させられて今よりもっと大変になるんじゃない？」などネガティブワードを連発する可能性があります。これは看護師独特の思考なのですが、まず、マイナス要因しかピックアップしません。その後に、辞めたほうがいいんじゃないと持論を言います。その裏には、本当に心配する気持ちもあるかもしれませんが、羨ましいというやきもちやその人が辞めたら自分が大変になるという気持ちです。スカウトを辞退した場合、同僚の影響が大きいかもしれません。でも、辞退されたときは「縁がなかった」と思い、次の候補の人に声をかけることです。看護師が転職を決めるときはいろいろなやっかみが起きます。
ご縁が繋がり看護師をヘッドハンティングできたら一安心ですが、ここからまた試練がやってきます。開業準備をはじめ、色々な相談や役割分担など行っていきますが、看護業務以外では力不足なことが多いかもしれません。特に管理者を経験したことがない人は難しいと思います。開業後も、他の看護師や事務の方に対し、自分の思う通りにならないと不満が出てくるかもしれません。
しまいには給与に対しての不満を言い出してくる可能性もあります。対策としては、ヘッドハンティングするときは、管理職経験者など組織を知っていて、コミュニケーションが取れる人、または、人間性がよく柔軟に対応してくれる人が良いです。話ができる看護師から、ヘッドハンティングしようとしている人の話を聞くのも有効な情報になります。次に、役割認識を持ってもらうことが大事です。どのような役割をお願いしたいのか、どのように活躍してもらいたいのかということです。その看護師さんのやりたい事に焦点を当てながら話を進めると良いと思います。ネガティブなこともはっきりと話をしてください。
そうでないと、そんなことは聞いていなかったなどと問題になるからです。
ネガティブなことも話し、それをどのように乗り越えていくのかなども話をするとイメージも付きやすく、決断に有効に働きます。

開業後は、よく話をしてください。コミュニケーションを積極的に取り、先生の想いや伝えたい事をしっかり伝え、看護師の話もしっかり聴き、問題があるとしたら一緒に考える姿勢を持ってもらえると信頼感が増していきます。忙しい業務の中でコミュニケーションを図っていくのは大変かもしれませんが、日々の積み重ねが働きやすい環境構築に繋がって行きます。あとは、公平平等に評価すること、教育カリキュラムがある事は強みになります。
ヘッドハンティングしない場合は、ハローワークや看護協会へ求人を出してください。両方とも無料です。お金をかけても看護師は集まりません。ハローワーク、あなどるなかれ、開業する周囲の看護師が働き先を探しに来るので有効な宣伝になります。また、クリニックの宣伝にもなるという一石二鳥です。看護師に届く文言でクリニックをアピールしてください。
よい看護師に巡り合えることを願っています。