医院開業コラム
クリニックを開業する場合、物件選びや資金調達といった準備作業と並行しつつ、さまざまな備品を用意しなければなりません。とにかく数が多いため、早めにリスト化や購入手続きを進めることが大切です。
しかし、備品を用意するに当たり、何をどこで購入すべきか迷っている先生も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、クリニックの備品に関する基礎知識を踏まえつつ、必要な備品リストや備品を購入する際の注意点、主な購入先について解説します。
- 1.クリニックで用意すべき備品
- 2.備品と消耗品の違い
- 3.クリニック開業で必要な備品リスト
- 4.クリニック開業における備品選びのポイントと注意点
- 5.クリニックに必要な備品はどこで購入できる?
- 6.クリニック開業の流れと備品を準備するタイミング
- 7.日本調剤がスムーズな開業をサポート
1.クリニックで用意すべき備品
クリニックで用意すべき備品は、大きく3つのカテゴリに分類されます。
- 医療機器・医療器具
- 什器・電化製品
- 事務用品や医療衛生材料、ユニフォームなど
1-1.医療機器・医療器具
医療機器・医療器具とは、診療に用いる道具や設備の総称です。体温計・ハサミ・メスといった小型器具、人工呼吸器・血圧計・体重計といった中型機器、X線CT・MRI・医療用レーザーといった大型機器などがあります。
クリニックは医療サービスを提供する場所なので、当然ながら医療機器・医療器具がないと機能しません。診療科や治療内容によって使用するものは変わりますが、中型・大型の医療機器は納入に時間がかかりやすいため、早めに手配したいところです。
1-2.什器・電化製品
クリニックは患者さまや付き添いの人も過ごす場所なので、待合室やトイレの整備も欠かせません。ソファやマガジンラックといった什器、テレビや空気清浄機といった電化製品も用意する必要があります。
また、医師・スタッフ用の什器・電化製品も必要です。バックヤードやオフィススペースでの業務に欠かせない机と椅子、受付で用いる会計機器やパソコンなどを用意しましょう。
これらの備品はホームセンターや家電量販店など、一般消費者向けの店舗でも購入可能です。
1-3.事務用品や医療衛生材料、ユニフォームなど
クリニックにおける事務用品は、文房具・コピー用紙・クリアファイルの他、紙カルテや診察券なども該当します。
医療衛生材料とは、診療で用いる包帯やガーゼなどの消耗品、および医師・スタッフが着用する白衣やユニフォームのことです。
事務用品や消耗品はそもそも使用頻度が高い上、使い捨てのものもあります。納入自体はスピーディーですが、いざという時に困らないよう、常に十分なストックを確保しておくことが大切です。
2.備品と消耗品の違い
備品と消耗品はよく混同されがちですが、実際は税務上の定義において以下の違いがあります。
- 備品:金額が10万円以上かつ使用可能期間が1年以上の備品
- 消耗品:金額が10万円未満あるいは使用可能期間が1年未満の備品
カレンダーやトイレットペーパーなど、使用するにつれて本来の機能を失ってしまうものは消耗品、そうではないものは備品に該当すると覚えておきましょう。
なお、この記事中では消耗品も「備品」と一括りにして説明します。
3.クリニック開業で必要な備品リスト
クリニックは部屋によって目的が異なるので、用意すべき備品も変わってきます。
そこで、玄関・待合室・診察室などスペースごとに必要な備品リストをまとめました。
3-1 玄関に必要な備品リスト
クリニックの玄関には、以下のような備品が必要です。
- 玄関マット
- 下駄箱
- スリッパ
- スリッパラック
- 傘立て
- 靴ベラ
- 手指消毒スタンド
玄関はクリニックの印象を左右する「顔」なので、見た目の雰囲気や清潔感にこだわることも大切です。靴に付着した泥やホコリがなるべく院内に入らないように、玄関マットはできるだけ高品質なものを選ぶべきでしょう。観葉植物や絵画なども併せて設置すれば、患者さまに好印象を与えやすくなります。
なお、院内を土足禁止にする場合は、下駄箱・スリッパ・スリッパラック・靴ベラが必要になります。
3-2 受付に必要な備品リスト
受付は患者さま・スタッフ双方のニーズを考慮しつつ、以下のような備品を用意しましょう。
- 診察券入れ
- 手荷物台
- 杖ストッパー
- 老眼鏡
- 筆記用具
- カレンダー
- デジタル時計
- ゴミ箱
- レジスター
- 釣り銭トレー
- パソコン・周辺機器
- プリンター
- コピー用紙
- シュレッダー
- カルテラック
- 非接触式体温計
- 飛沫防止パネル
非接触式体温計は「スタンドタイプ(床置き式)」と「小型タイプ(手持ち式)」があるので、予算や業務量を踏まえて選びましょう。
最近では業務効率化と患者さまの利便性向上のため、クリニック向けの自動精算機やセルフレジを設置する医院もあります。
3-3 待合室に必要な備品リスト
待合室は患者さまが待ち時間を快適に過ごせるかどうかが肝なので、以下のような備品を用意しましょう。
- ソファ
- テレビ
- 雑誌・新聞
- マガジンラック・本棚
- 壁掛け時計
- ゴミ箱
- 空気清浄機・加湿器
- ウォーターサーバー
小児科や子どもが来院しやすい診療科の場合、キッズスペースを設ける必要があるため、危険性の少ないおもちゃやクッションマットも用意したいところです。子どもが待ち時間に退屈しない環境をつくれば、付き添いの人も安心して過ごせるようになります。
また、玄関と同じく観葉植物や絵画があると、待合室の雰囲気も良くなります。
3-4 診察室に必要な備品リスト
診察室は患者さまの診療を行う部屋なので、診療科や治療内容に合わせて備品を揃える必要があります。一般的なクリニックの診察室であれば、以下の通りです。
- 診察ベッド
- 診察机
- 椅子(医師用・患者さま用)
- 聴診器
- 診察用ライト
- 注射台
- 消毒器具
- 医療衛生材料(包帯やガーゼなど)
- 感染予防用品(マスクやゴム手袋など)
- 血圧計
- 体重計
- 身長計
- 血圧計
- パルスオキシメーター
- パソコン・周辺機器
- 電子カルテ
- タイマー
- 備品棚
- 患者さま用の荷物入れ
診察室は医師がクリニック内で最も長い時間を過ごす部屋でもあるので、先生ご自身の快適性も重要です。
3-5 トイレに必要な備品リスト
トイレも患者さまの満足度に対する影響が大きいので、きちんと環境を整備しなければなりません。清潔かつ快適な空間をつくるためには、以下のような備品が必要不可欠です。
- トイレットペーパー
- トイレ用スリッパ
- 消臭剤
- ハンドソープ
- ペーパータオル(ハンドドライヤーでも可)
- ゴミ箱
- トイレ掃除用具
- おむつの交換台
産婦人科や婦人科の場合、女性の患者さまがターゲットになるので、生理用品やサニタリーボックスも用意する必要があります。また、美容クリニックやレディースクリニックであれば、メイク直し用の綿棒やコットンも備品に加えたいところです。小児科であれば、おむつの交換台も設置しましょう。
3-6 スタッフルーム、バックヤードに必要な備品リスト
スタッフルームは医師・スタッフが出退勤時に着替えたり、昼休憩の時間を過ごしたりする部屋なので、その目的に沿って以下のような備品を用意しましょう。
- ロッカー
- 名札ラック
- 白衣・ユニフォーム
- 冷蔵庫
- 電子レンジ
- 食器類(コップ・スプーンなど)
- テーブル
- 椅子
一方、バックヤードの主な目的は備品保管や業務の準備です。そのため、以下のような備品を揃える必要があります。
- 消耗品のストック
- 予備の白衣・ユニフォーム
- 掃除機
- 掃除用具
- 工具
- 防災備蓄品(水・非常食・毛布など)
治療内容やスタッフの要望を踏まえて、その他の備品も選定しましょう。
4.クリニック開業における備品選びのポイントと注意点
備品を購入する際の注意点は、以下の通りです。
- 医院のコンセプトに沿って検討する
- 院内のスペースを考慮する
- 販売価格だけでなく保証やサポートも確認する
- 適正コストを意識する(リースやレンタルも検討)
- 電気工事の要否も確認する
4-1 医院のコンセプトに沿って検討する
クリニックに必要な備品は、診療コンセプトや経営方針によっても変わります。そのため、備品を選定するに当たり、まずは診療コンセプトや経営方針を明確にしなければなりません。
例えば、高齢者向けのクリニックとして開業する場合、足腰の弱い患者さまのために立ち座りがしやすい椅子を用意しておけば、安全性や満足度を高めることができます。また、院内の全面バリアフリー化や送迎サービスの提供など、備品以外のプランも検討しやすくなるでしょう。
4-2 院内のスペースを考慮する
クリニックの規模や敷地面積はそれぞれ異なりますが、いずれにしろ院内のスペースには限界があります。無計画に備品を用意するとスペースが不足しかねないため、患者さまの利便性やスタッフの作業動線を考慮することも大切です。
例えば、診察室の机やベッドは患者さま・スタッフの移動を妨げないよう、余裕を持って配置できる程度のサイズを選ぶ必要があります。スペースを節約したい場合、壁掛けモニターや折り畳み式の注射台を導入するのも一案です。
4-3 販売価格だけでなく保証やサポートも確認する
人工呼吸器やX線CTなどの医療機器は長期間使用するため、販売価格や性能だけではなく、保証やサポートの有無もきちんと確認したいところです。保証期間内の交換・修理やアフターフォローの体制が不十分だと、機器トラブル発生時に余計な時間・コストがかかってしまう可能性もあります。
また、製品やメーカーによって保証期間・保障対象・サポート内容などは異なるため、備品購入前にその辺りの違いを把握しておくことも大切です。
4-4 適正コストを意識する(リースやレンタルも検討)
備品選びで失敗しないためには、も重要です。適正コストの範囲内で備品を揃えなければ、開業後の経営にも悪影響が生じかねません。
医療機器やセルフレジに関しては、リース・レンタル・サブスクなど購入以外の選択肢も用意されています。契約料やレンタル料といったランニングコストがかかりますが、初期費用を大幅にカットできるため、検討価値は高いといえるでしょう。
4-5 電気工事の要否も確認する
クリニックの開業形態はさまざまですが、物件によっては医療機器に必要な電気容量が不足しているケースもあります。医療機器を使用できない場合、当然ながら診療業務にも支障が出てしまうため、あらかじめ電気工事の要否を確認しておくことも大切です。
5.クリニックに必要な備品はどこで購入できる?
クリニックの備品を購入する場合、実店舗より以下の通販サイトを利用した方がスムーズです。
- アスクル
- カウネット
- 医療の王様
各通販サイトの特徴や強みも併せて紹介するので、ぜひ参考にしてみて下さい。
5-1 アスクル
アスクルは事務用品・現場用品・オフィス家具・電化製品など、幅広い製品を取り扱っている通販サイトです。医療衛生材料や白衣のようなクリニック向けの備品も数多く販売しているので、このサイトだけで大半のものを揃えることができます。
また、医療機関向けのカタログを無料で提供している点も要チェックです。フォーム入力やアカウント発行など簡単な手続きを済ませるだけで、クリニック開業前の段階でもカタログを受け取ることができます。
5-2 カウネット
カウネットは事務用品・オフィス家具から医療用品まで、クリニックに必要な備品を網羅している通販サイトです。使いやすさを追求したオリジナル商品も販売しているので、他では手に入らない備品を購入できます。
商品によりますが、購入後365日以内なら「返品無料サービス」を利用できる点も特徴です。「注文内容を間違えた」「想像していた商品と違う」といった際の損失を抑えることができます。
また、税込2,500円以上の注文で送料無料という点も魅力です。
5-3 医療の王様
医療の王様はその名の通り、日本最大級の医療用品通販サイトです。包帯やガーゼといった消耗品はもちろん、聴診器・剪刀・医療用カート・ストレッチャーなど、30,000点以上の医療用品が揃っています。
また、受付・事務業務で役立つ発券機やカルテラック、待合室に置くロビーチェアやスリッパなども取り扱っているため、一通りの備品を購入することが可能です。
無料見積もりや相談対応も受け付けているので、大量購入や高額商品への不安を解消できます。
6.クリニック開業の流れと備品を準備するタイミング
クリニックを開業する場合、以下のような流れで準備や手続きを進めます。
- 事業計画や診療コンセプトの策定(24~19ヶ月前)
- 開業用の物件探しや資金調達(18~7ヶ月前)
- クリニックの内装工事・備品の選定(6~4ヶ月前)
- スタッフ採用や医師会へのあいさつ(6~3ヶ月前)
- ホームページやチラシの制作(3~1ヶ月前)
- 開業手続き・備品の納入・スタッフ研修(1ヶ月前)
開業6ヶ月前くらいにやるべきことが一気に増えますが、そのタイミングで備品の選定にも取り掛かる必要があります。備品によっては購入・納入までに時間がかかる可能性もあるため、スケジュールに余裕を持たせた上で、できるだけ早めに動きたいところです。
7.日本調剤がスムーズな開業をサポート
クリニックの備品と一口にいっても、さまざまな種類があります。部屋によっても用意すべき備品は異なるため、診療コンセプトや院内のスペースに配慮しつつ、必要なものを必要な分だけ購入しましょう。
日本調剤では、クリニックの集患に適した優良物件の紹介から開業の無料サポートまで、充実のサービスを提供しています。電子カルテやX線CTといった医療機器の選定もサポートしているため、ぜひ一度お問い合わせ下さい。
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