医院開業コラム
リニックをスムーズに運営するためには、診察までの「待ち時間」をできるだけ短くしなければなりません。患者さまを長時間待たせると、院長やスタッフ(看護師・受付など)に対するクレームが発生しやすいためです。
待ち時間の長さはクリニックの売り上げにも影響するので、頭を悩ませている先生も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、待ち時間が長くなる原因やクレーム対応のポイント、待ち時間によるクレームを防ぐための対策を解説します。
- 患者さまの診察までの待ち時間を意識すべき理由
- 医院での待ち時間が長くなる原因
- トラブルにならないように!患者さまのクレームに対応するポイント
- 待ち時間によるクレームを防ぐための対策
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1-1 病院やクリニックの平均的な待ち時間
厚生労働省が公表している「令和2(2020)年受療行動調査(確定数)の概況」をもとに、一般的な病院における外来患者の診察までの待ち時間を表でまとめました。
15分未満 | 15分~30分未満 | 30分~1時間未満 | 1時間~1時間30分未満 | 1時間30分~2時間未満 | 2時間~3時間未満 | 3時間以上 | |
総数 | 28.0% | 25.7% | 20.9% | 10.1% | 6.4% | 3.7% | 1.8% |
特定機能病院 | 24.1% | 23.1% | 22.1% | 11.5% | 8.0% | 5.5% | 2.4% |
大病院 | 26.8% | 24.4% | 21.0% | 11.1% | 7.0% | 4.6% | 2.1% |
中病院 | 26.1% | 24.8% | 22.0% | 10.7% | 7.0% | 4.0% | 1.9% |
小病院 | 28.8% | 28.4% | 21.9% | 8.8% | 5.0% | 2.1% | 1.1% |
療養病床を有する病院 | 33.0% | 27.9% | 18.1% | 8.6% | 5.2% | 2.5% | 1.3% |
出典:令和2(2020)年受療行動調査(確定数)の概況 (2)診察等までの待ち時間|厚生労働省を基に作成
このように病院の種類によって待ち時間は変動しますが、患者さまの多くが「15分未満」「15分~30分未満」「30分~1時間未満」と回答しています。
医院での待ち時間が長くなる原因
病院やクリニックでの待ち時間が長い場合、以下のような原因が考えられます。
- 患者さま一人当たりの診療時間が長い
- スタッフが電話や問い合わせ対応に追われてしまっている
- 予約患者数が多い
- 窓口での受付や会計業務に時間がかかる
- 薬の処方と受け渡しに時間がかかる
2-1 患者さま一人当たりの診療時間が長い
患者さまとしっかり向き合いつつ、症状や兆候を正確に見極めるためには、日頃から丁寧な診察を心がけることが大切です。しかし、丁寧さを追い求めるあまり、一人当たりの診療時間が長くなってしまうと、当然ながら後の患者さまの待ち時間も長くなってしまいます。
特に高齢者の患者さまが多い場合、診察でのコミュニケーションが長引くケースも多いため、結果的に待ち時間も長くなりがちです。
このような状況は、医療の現場におけるジレンマと言えるでしょう。
2-2 スタッフが電話や問い合わせ対応に追われてしまっている
感染症(インフルエンザなど)や花粉症が流行する季節になると、患者さまから予約や確認の電話がかかってきたり、個別の問い合わせ対応が発生したりする機会も増加します。スタッフがこれらの業務に追われてしまうと、診療がスムーズに進まず待ち時間の増加につながりかねません。
待ち時間が原因でクレームが発生した場合、クレーム対応もこなさなければならないので、スタッフの業務量がさらに増えて悪循環に陥ってしまう可能性もあります。
2-3 予約患者数が多い
予約制にしている場合、当然ながら予約優先で診療することになります。既に予約済みの患者さまでいっぱいの状況だと、予約せずに来院した患者さまの待ち時間が長くなることは避けられません。
また、前の患者さまの診療内容やスタッフの状況によっては、予約していても多少の遅れが生じる可能性もあります。その旨も含めて患者さまに予約システムの概要を説明しないと、思わぬクレームが発生するかもしれません。
2-4 窓口での受付や会計業務に時間がかかる
オンラインサービスやITツールが普及している現在、医療機関における業務も自動化が進んでいます。しかし、従来のアナログな方法で予約受付・会計・カルテ管理といった業務を行っている場合、患者さまが多くなると手間がかかってしまうため、待ち時間も長くなりやすいでしょう。
待ち時間を意識したスタッフが焦って対応すれば、入力ミスや確認漏れが起こる可能性も高まるので、余計な業務が増えてしまうかもしれません。
2-5 薬の処方と受け渡しに時間がかかる
院内処方を採用している場合、スタッフは会計と併せて薬剤の処方・受け渡しを行う必要があります。どうしても手間がかかってしまうため、待ち時間の増加というデメリットはある程度許容しなければなりません。
一方、院外処方を採用している場合でも、調剤薬局がクリニックの近くにないと、移動の問題から患者さまが困ってしまうケースもあります。また、別々の窓口で手続きしなければならないため、患者さまの手間が増えてしまう点もデメリットです。
トラブルにならないように!患者さまのクレームに対応するポイント
クレーム対応でトラブルを避けるためには、以下のようなポイントが重要です。
- まずは相手の話に耳を傾けて丁寧に謝罪する
- 事実関係を確認した上で問題の解決策や対処法を提案
- ご意見を頂いたことへの感謝の気持ちを持つ
- クレームには院長含め医院全体で真摯に対応する
- 医師法における応召義務をきちんと理解した上で苦情に対応する
- 弁護士への相談も検討する
- クレーム対応研修への参加や院内勉強会の開催
各ポイントを詳しく解説します。
3-1 まずは相手の話に耳を傾けて丁寧に謝罪する
原則としてクレーム対応に臨む場合、まずは傾聴の姿勢を示すことが大切です。患者さまの話を遮らず最後まできちんと聞いたら、クレームの内容は一旦置いておき、不快な思いをさせてしまったことに対して謝罪しましょう。
途中で話を遮ったり、謝罪より先にクリニック側の言い分を伝えたりすると、余計に患者さまを怒らせてしまう可能性があります。待ち時間が長くなった時点で、クリニック側に多かれ少なかれ責任が生じるため、最初は謝罪から入るべきです。
3-2 事実関係を確認した上で問題の解決策や対処法を提案
患者さまからのクレームが発生したら、早急かつ客観的に事実関係を確認しなければなりません。原因や状況がわからないまま全面謝罪したり、院長・スタッフと患者さまの認識に差異が生じていたりすると、新たなクレームやトラブルに発展する可能性もあります。
また、事実関係の確認が済んだら、その上で解決策や対処法を提案することも重要です。クリニック側に非がなくても言い返すことはせず、患者さまとの信頼関係回復に努めましょう。
3-3 ご意見を頂いたことへの感謝の気持ちを持つ
待ち時間が長くなる原因はさまざまですが、クレームの内容がどのようなものであっても、患者さまから貴重なご意見をいただいたことについて感謝の気持ちを伝えましょう。クレームに基づいて再発防止策を講じることで、患者満足度のさらなる向上が見込めるようになります。
また、患者さまのミスや誤解が原因だとしても、それを誘発したことに対する謝罪の言葉、およびご意見に対する感謝の言葉を伝えると、好印象につながります。
3-4 クレームには院長含め医院全体で真摯に対応する
クレームの内容によっては対応が難しく、一スタッフの手に余るケースもあります。もし話がこじれてしまった場合、担当者や環境を変えることも検討すべきです。
例えば、院長自らクレームを聞きに行くことで、患者さまが納得のいく答えを直接伝えたり、より大きな裁量を持って解決策を提案したりできる可能性も出てきます。また、場所・時間を変えて対応すると、患者さまの気分が落ち着きやすくなるので効果的です。
3-5 医師法における応召義務をきちんと理解した上で苦情に対応する
患者さまのクレームには真摯に対応すべきですが、いわゆるモンスターペイシェントに対しては毅然とした態度で対応に臨むことが大切です。
医療機関で働く医師は、医師法に基づく「応召義務」を負っているので、正当な事由がない限り診療を拒否することはできません。しかし、モンスターペイシェントから不当な要求を突き付けられたり、業務妨害に遭ったりするなど、診療に必要な信頼関係を築けない場合、診療を拒む正当な事由に該当すると裁判でも認められています。
3-6 弁護士への相談も検討する
患者さまに謝罪を受け入れてもらえなかったり、理不尽なクレームをつけられたりした場合、より大きなトラブルに発展してしまう可能性もあります。そうなると経営面に大ダメージを与えかねないため、クリニックとしてクレーム対応方針を事前に決めた上で、必要に応じて弁護士をはじめとする専門家に相談できる状況を整えておくことも検討しましょう。
弁護士に依頼すれば、法的な観点からクレーム対応に向けたアドバイスをもらうことができます。
3-7 クレーム対応研修への参加や院内勉強会の開催
院長やスタッフが適切なクレーム対応について学びたい場合、プロが教える外部研修や外部セミナーに参加したり、院内勉強会を開いたりするのも一案です。このような機会を別途設けると、クレーム対応に対する理解度やスタッフの意識を高めることができます。
院内勉強会を開催する場合、実際に起こったクレームをピックアップし、対応の流れも交えてエピソード形式で紹介すると効果的です。これといったクレームがない場合、他院の事例も参考にしましょう。
待ち時間によるクレームを防ぐための対策
待ち時間によるクレームを防ぎたい場合、対策には大きく以下のようなアプローチがあります。
- 待ち時間を短縮する
- 待ち時間による患者さまのイライラを軽減する
これらの対策に取り組むことは、クリニック・患者さまの双方にとって有益です。
4-1 待ち時間を短縮する
根本的な原因である待ち時間を短縮すれば、必然的にクレームも減少します。待ち時間を短縮するためには、診療をスムーズに進めるために十分な人員を確保しつつ、業務効率化を図ることが大切です。
また、以下のようなツールを導入するのも効果的ですが、患者さまの年齢層次第では使い方のフォローまでセットで実施した方が良いでしょう。
- 予約システム
- 問診システム
- 電子カルテ
- 自動精算機
4-1-1 予約システムの導入
診療予約システムを導入すれば、患者さまはスマートフォンやパソコンから予約できるようになります。わざわざ受付時間内に電話する必要がなくなるため、患者さんの負担を軽減できるだけではなく、クリニック側が予約電話の対応数を削減できることもメリットです。
また、曜日別・時間帯別の予約状況をまとめて表示できるシステムなら、患者さまは空き時間に合わせてスケジュール調整がしやすくなるので、待ち時間の短縮やリピート率の増加につながります。
4-1-2 問診システムの導入
問診システムを導入することで、来院前にスマートフォンやパソコンから必要事項を入力してもらえるので、院内で問診する必要がなくなります。その結果、患者さまが問診票に記入する時間をカットできるため、待ち時間を減らすことが可能です。
また、後述の電子カルテと連携すれば、問診システムの入力内容をカルテにすぐ反映できるので、クリニックの業務効率化につながります。業務がスムーズに進むことで、待ち時間をさらに短縮できるでしょう。
4-1-3 電子カルテの導入
電子カルテを導入すれば、従来のように紙カルテを探す手間がなくなります。各システムと連携しておけば、相互に情報を共有できるようになるため、受付・検査・診察・会計といった業務の効率をまとめて上げることが可能です。先述の通り、業務効率化は待ち時間の短縮につながります。
また、紙カルテのように保管スペースを確保する必要がない、患者さまの情報をリアルタイムで確認できるといった点も電子カルテのメリットです。
4-1-4 自動精算機の導入
診療報酬の計算方法は複雑なので、会計にも時間がかかりがちです。しかし、自動精算機を導入すれば、会計処理のスピードが大幅にアップする上、患者さまが都合の良いタイミングで自ら手続きできるようになるため、待ち時間の短縮を図ることが可能です。
その他、お金の受け渡しにおけるミスを削減できる、会計担当のスタッフの負担を軽減できるといったメリットもあるので、クリニックでも大いに役立ちます。
4-2 待ち時間による患者さまのイライラを軽減する
医療機関は患者さまの健康・生命に多大な影響力を持っているため、特にミスが許されない職場です。それゆえに上記の対策を全て実施しても、待ち時間の短縮が難しい可能性もあります。
待ち時間そのものを削減できない場合、患者さまがイライラしないように院内の環境を変えることが大切です。例えば、以下のような対策を講じることで、待ち時間をストレスなく過ごしやすくなります。
- Wi-Fi設備の導入
- 快適な待合室の設計
- キッズスペースの設置
- ウォーターサーバー・コーヒーサーバーの設置
- 雑誌や新聞の設置
- テレビの設置・放映
- デジタルサイネージの設置
ターゲットとなる患者層によって対策の必要性・優先度は変わってくるため、それも踏まえて環境整備に取り組みましょう。
日本調剤の開業サポートにご相談下さい
リニックの待ち時間は、患者さまの不満を生み出す主要な原因です。待ち時間の短縮や患者さまのストレス軽減を図るためには、業務フローやクレーム対応だけではなく、クリニックを取り巻く環境や人事も含めて見直す必要があります。
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